止まぬ血の雨 2
仲宗根は本家に向かっていた。
今日は銃丸の№5峯岸が吐いた情報を報告するためだ。
やっと台風が通り過ぎた天気は曇り。
雨は降っていないが、風が吹いており、気温は22℃と肌寒い。
本部の門が見えてきた。門の横では若い組員が門番をしており、寒そうに腕を組んでいる。
エントランスには数名の組員が立っていた。
彼らは、仲宗根が乗る車の後部座席のドアを開けた。
仲宗根は車を降り、組員たちの「おすっ」というお辞儀に軽く頷きながら本部の中に入った。
奥から一人の組員が近づいてきた。
「仲宗根の組長、お疲れ様です。まだ皆さん揃っておりませんので、待合室でお待ちください」
仲宗根は階段を上がり、待合室のドアを開けた。
真ん中の椅子に腰を下ろし、待つこと10分。
足音が近づき、ドアが開いた。
「仲宗根の兄貴!」
「おう、隆二」
入ってきたのは喜屋武だった。
いつもは黒いビジネスシャツに白いパンツ姿だが、今日は白いジャケットに赤いシャツ、黒いパンツという派手な服装をしている。
「なんだその服?」
仲宗根が目を細めて言った。
「あぁ、今日は白で決めました」
「中のシャツだよ」
「あっ、いつもの服に飽きたんで、ちょっと気分転換です」
仲宗根は喜屋武の美的感覚が理解できない様子でため息をついた。
喜屋武は笑いながら、仲宗根の隣の椅子に腰を下ろした。
「仲宗根の兄貴、処理ありがとうございます。俺、なんも手伝わなくて」
「いいんだよ。お前はアジトの場所を聞き出せたんだから。それより隆二、これだ」
仲宗根は、アジトの場所が書いてある紙を手渡した。
「あっ、そうだった」
喜屋武は紙を受け取った。
「お前、説明するのに忘れていくかね」
「すっかり忘れてました」
その時、ドアが開いた。
その方向を見ると、比嘉が立っていた。
「兄貴、お疲れ様です」
仲宗根と喜屋武は立ち上がり、お辞儀をした。
「今日は寒いな。ところで、銃丸の№5の男を殺ったんだな?」
「えぇ、隆二が」
「あと、拷問でアジトと武器を密売している場所も聞けました」
「さすがだな、隆二」
「ありがとうございます」
「で、遺体はどうしたんだ?」
「うちがいつも使っている廃棄処理場で処理しました」
比嘉は満足げに頷いた。
「そうか、これで銃丸を追い詰めていけるな」
バン! バン!
突然、銃声が仲宗根たちの耳に響いた。
「なんだ今の?銃声か?」
「下に降りましょう!」
3人は待合室から飛び出し、正面玄関まで走った。
「銃撃だ!銃撃!」
「大城の頭!頭が車に!」
外に出ると、バイクに乗った男が若頭の大城が乗る車に向けて発砲していた。
比嘉は懐から素早く銃を抜き、バイクの男に発砲した。
男はバイクから崩れ落ちる。
その直後、大城の車はクラクションを鳴らしながらコンクリートに激突した。
ボンネットから煙が上がる。
「頭!頭、大丈夫ですか!」
仲宗根は慌てて後部座席のドアを思いっきり開けた。
シートの上には、大城が倒れ込んでいる。
やられた……噓だろ……。
しかし、大城のかすれた声が聞こえてきた。
「あぁ……大丈夫だ……」
仲宗根は安堵のあまり、体の力が一気に抜けた。
大城は体を起こし、車から出た。
肩からはガラスの破片が落ちる。
「死ぬかと思ったぜ」
「お怪我はありませんか?」
「あぁ、何ともない」
その時、比嘉と喜屋武が走り寄ってきた。
「頭!大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫だ。でも、俺のドライバーが……」
運転席を見ると、運転手が頭から血を流して息絶えていた。
「銃丸の野郎です」
近くにいた組員が言った。
銃丸め……会長の命を奪った挙句、今度は頭を狙いやがって……許せねぇ……。
「おい、死体の処理をしろ!」
比嘉が組員に命じる。
「はい」
組員たちは男の死体を引きずり、車に乗せて走り去った。
「お前ら、ちゃんと警護してたのか!コラ!」
喜屋武は組員を蹴り飛ばした。
「す、すみませんでした!」
「気を抜くんじゃねぇ!バカ野郎!」
大城は心臓を押さえ、息を切らしていた。
「頭、中に入りましょう」
仲宗根が肩に手を置いて言った。
「ああ……」
三人は大城を中に入れ、会議室の椅子に座らせた。
「頭、座っててください。水を持ってきますから」
喜屋武が会議室を出て行った。
「まさか、こんなことになるなんてな……」
大城は小さな声でつぶやいた。
喜屋武が持ってきた水を一気に飲み干すと、大城は気を取り直したように言った。
「じゃあ、始めるか」
「大丈夫なんですか?」
仲宗根が確認する。
「ああ」
大城は力強く頷いた。
喜屋武がホワイトボードの前に立ち、銃丸の№5峯岸から聞き出した情報を一通り説明した。
説明が終わると、大城は席から立ち上がり言った。
「こういう事態になったので、今日は解散だ。お前らも気をつけろよ」
「頭も用心してください」
「ああ、頼むぞ」
そう言って、大城は会議室を出て行った。




