血塗られた誓い 4
高速道路を走る車が、何台も何台も通り過ぎる。
仲宗根は高速道路の高架下で、ある人物を待っていた。
目線を右に向けたとき、グレー色の軽自動車がこちらに向かってきた。
仲宗根の目の前に止まる。
「すみません、ちょっと渋滞で…」
情報屋が手を合わせた。
抗争を仕掛けてきたのが銃丸という組織だと判明したので、すぐに情報屋に連絡し、銃丸のことを調べさせた。
仲宗根は胸ポケットから封筒を取り出し、渡した。
「どうも」
封筒を覗き込む情報屋。
「ちょっと多すぎないですか?」
「あぁ、お前も命がけで調べたんだろ。それじゃ、教えてくれ」
封筒をポケットに入れ、銃丸のことを話し始めた。
「あいつらは東京の半グレ集団です。総勢400人の構成員を引き連れている。歌舞伎町、新宿、秋葉原、全てこの集団が裏で仕切っている」
「東京?」
思わず聞き返した。
「なんで東京の奴らが沖縄に?」
仲宗根は訊いた。
「あいつらは、武器の密売をしていて。台湾のマフィアと取引して銃を買い、日本で売る。で、東京から台湾は遠いでしょ。だから、都道府県の中で台湾に一番近いこの沖縄に拠点を作ろうとしているんですよ」
「それで、俺たちがその拠点作りに邪魔だから消そうとしているわけか」
そんな理由で親父を殺ったのか…いい度胸してるな。
自分たちのシノギのため、勅使河原会のシマに来て、邪魔になる我々が殺されるってわけか。
俺たちも舐められたもんだな。
「こいつが銃丸のトップ、鴻巣昴という20代の男です」
写真を渡された。
「20代か。ずいぶん若いな」
金髪で紫色のジャンパーを着ており、顔に傷がある。
ナイフで切られたのだろう。耳に何個かピアスを開けている。
体を鍛えているのか、体格がいい。
20代でよく400人も引き連れたな。
「奴は、ちょっとでも気に食わない奴がいたらすぐ殺すみたいです」
「こいつがよく出入りしている場所とか、知らないか?」
「こいつらは、あまり外を出歩かないもんで…」
「そして、こいつが後藤誠一。トップの鴻巣の右腕です」と写真を渡した。
顔に蜘蛛の巣のようなタトゥーが彫ってあり、青色のジャンパーを着ている。
「トップの鴻巣と後藤の絆は深い」
「そして№3の﨑真司、№4の宇野山幸喜、№5の峯岸智也」
3人が写った写真を渡す。
﨑真司の写真を見た。
さっきの奴らと見た目が全く異なっている。黒髪で眼鏡をかけ
たオタクみたいだ。
「№3の﨑はこんな見た目だけど、こいつが一番頭が狂っています」
宇野山の写真に目をやった。仲宗根はこの顔に見覚えがあった。
「あ!」と声を出した。
この幹部の宇野山は、仲宗根を襲ったフード男だった。体格も口の周りの髭も、あの時の襲撃犯とまったく同じだ。まさか、最高幹部だったとは。
そして、峯岸の写真に目線を移した。
髪はグレーに染めており、鴻巣と比べて体は細い。鼻にはピアスを開けている。
「峯岸はサイコパスで、快楽殺人を好みます」
「ろくなもんじゃねーな。こいつらのアジトの場所は?」仲宗根が情報屋に訊いた。
「それが、あいつらアジトを転々とするため、アジトの場所まではちょっと…」
「あっ」と何かを思い出したように情報屋が口を開いた。
「この銃丸、№5峯岸の行きつけの店なら知ってます。読谷村にある「あんこ」っていう喫茶店です。いつも木曜日に姿を見せています」
「木曜日に読谷の「あんこ」っていう店に行くんだな」
「わかった、ありがとう」
その情報を持って本家に向かう。
車を降り、会議室まで歩いた。
階段を上り、高級な絵が飾られている廊下を通り過ぎる。
会議室の扉を開けると幹部全員が椅子に座っていた。
正面にはホワイトボードが置かれている。
「情報は?」
待ちくたびれたような感じで大城が言った。
「銃丸のトップと幹部の情報を入手しました」
ホワイトボードの方に向かい、説明を始めた。
「こいつらは東京の半グレ集団です」
三人は驚いた顔を見せた。
「東京、ナイチャー(沖縄県外出身)ってことか?」大城が言った。
「えぇ、こいつらは台湾マフィアと銃の取引を行い、それを日本で密売しています。そして、東京から台湾は距離があるため、台湾から一番近いこの沖縄で拠点を作ろうとしています」
「じゃあ、その拠点造りの邪魔になる俺たちを消そうとしているのか、親父をそんな理由で殺したのか。勝手に来ておいて俺たちに喧嘩売ったんだなこいつら…」
比嘉の貧乏ゆすりが激しくなった。
「まず、こいつが鴻巣昴、銃丸のトップです。とても凶暴な奴です」
ホワイトボードに写真を貼った。
三人はホワイトボードに目を向ける。
「そしてこいつが№2の後藤誠一、トップの鴻巣の右腕です。そして№3の﨑真司と№4の宇野山幸喜、そして№5の峯岸智也です」
「あっ!」
比嘉と喜屋武が何かを思い出したかのように声を出した。
「こいつ、俺の若いもん殺った奴だ」
比嘉は銃丸№3の写真を指差した。
「間違いねぇ。襲撃から生き残った奴が言っていた奴と同じだ。眼鏡をかけた男がいきなり撃ってきたってな」
「№5のあいつ、俺の倉庫を燃やした野郎です」
喜屋武が大声で叫んだ。
手下に任せるのではなく、各幹部が手を出している。
沖縄最大のヤクザの幹部を自ら始末して名を残したいんだろう。
じゃあ、親父を殺した奴はトップの鴻巣か。
「こいつらが親父を殺した奴らか…」
大城が口を開いた。
「えぇ、あとこの組織はアジトを転々とするので、俺が使っている情報屋も場所がわからないようです」
10秒沈黙の後、大城が口を開いた。
「確実に殺す…」
彼の声は怒りに満ちていた。
「あ…あと、この№5の峯岸は毎週木曜日に読谷村にある喫茶店「あんこ」という店に行くらしいです」
「おい、今日何曜日だ?」
大城が仲宗根に訊いた。
ポケットから携帯を取り出し、画面を開いた。
「水曜日です」
「じゃあ、明日だな。お前と喜屋武は明日、その喫茶店に行け。あと、この№5の野郎は殺すなよ。わかったな?頭を撃って、ハイ、さよなら、じゃあ、あっさり過ぎるだろ。じっくりと拷問してやろう」
「それと、トップの金髪には手を出すなよ。親父の仇は俺が取るからな…」




