表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悲しき仮面  作者: 碧野 颯
17/46

血塗られた誓い 3

仲宗根は大通りを渡り、事務所近くのコンビニまで歩いた。

店内にある万引き防止の鏡を見ながら、カゴに栄養ドリンクやスナックを入れ、会計を済ませる。


事務所にはすぐ帰らず、暗い裏路地に入った。

エナジードリンクを飲みながら路地を進む。


道の端に駐車してある何台かの車を通り過ぎ、黒い軽自動車の横を通り過ぎた瞬間、その車から誰かが降りた気配がした。

後ろを振り向かず、そのまま歩き続けた。

背後の足音が徐々に近づいてきていることに気がつく。


とっさに振り返り銃を向けると、黒づくめの男が突進してきた。

引き金を引くと、発射された弾丸が男の太ももを貫通した。


「あああああ!」


痛みと恐怖が交じり合った、生々しい叫び声が響く。

足を抑えながら崩れ落ち、男の手から銃が落ちた。

黒い車がものすごいスピードで路地に入ってくる。

そして、仲宗根の真横に止まった。


「おい、お前ら、早く乗せろ」

運転席の村井が組員に指示を出した。


「組長、大丈夫ですか?」

「あぁ、タイミングバッチリだったぜ」


 仲宗根は事務所を出る前に、村井に指示を出していた。


「俺が事務所を出たら、舎弟二人連れて、車で路地裏の入口で待機しておけ」

「どうしてですか?」

「あいつらは間違いなくまた俺を襲ってくるはずだ。俺が人気のない路地を歩いておびき出す。そして襲撃犯の致命傷にならない場所を撃って、制御不能にする。銃声が鳴ったら路地に入ってこい。そいつを拉致する」

「ですが、危険ですよ」

「大丈夫だ」


仲宗根は襲撃犯を囮にして、拉致するためにこの暗い路地を歩いたのだ。


仲宗根組の組員二人が、うずくまっている襲撃犯を持ち上げ、トランクに放り込んだ。


「組長、早く乗ってください。」

仲宗根は後部座席に乗り込み、路地を後にした。



気絶している男の頬を平手で叩いた。


「起きろ!」

男は目を開け、周囲を見渡した。


自分の手と足が縛られていることに気づき、襲撃犯は血の気が引いた顔で、体を小刻みに震わせていた。

前回、仲宗根を襲った奴とは違う奴だ。


「よし、じゃあ、訊きたいことがある」

「…」

「おい、聞いてるのか!」


男の髪を引っ張り、無理やり顔を上げる。

目はひどく充血していた。


「…それに答えたら…俺を逃がしてくれますか…」

震える声で口を開いた。

「あんたの質問に答えたら…俺を逃がしてくれますか…」

仲宗根はゆっくりとうなずいた。


仲宗根は奥に置いてあるパイプ椅子を引きずりながら持ってきて、男と向かい合うように座り、質問をした。


「じゃあ、お前らの組織の名前と親分の名前は?」

男は体をビクつかせ、目線を下に向けた。

「組織とボスのことは、俺ら下っ端じゃ何もわからない」


ボスって呼んでいるのか、極道ではないな。


「何もわからないなら、死ぬしかないな」

銃口を男の頭に突きつけた。

「殺すんならさっさと殺せよ…」

涙を流して目を閉じた。


その時、倉庫のドアが思いっきり開く音が響き、後ろを振り返った。

黒いフードをかぶった五人組が入ってきた。


「なんだてめえら!」


仲宗根は男から銃口を外し、五人に向けて発射しようとしたが、奴らの方が早かった。

奴らが撃った弾が仲宗根の胸に命中した。

激しい痛みが走り、膝から崩れ落ちた。


「遅かったじゃないか!これをほどいてくれ!」

フードをかぶった男が、拉致された男の頭部に銃を向けた。


「しゃべったな?」

「え…いや!」

「俺たちのこと、しゃべったな?」

「い…いや、しゃべってない!」

「本当か?」

「あぁ…ボスのことも言ってないし!銃丸のことも言ってない!神に誓って本当に言ってない!」

男は、必死に裏切っていないことを主張した。


「銃丸?」

フードをかぶった男が聞き直した。


「銃丸って名前みたいですよ。組長」

拉致された男は、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。


仲宗根はゆっくり立ち上がり

「ご苦労さん、よくやった」

と、男たちに言った。


乱入した男はフードを外した。

拉致された仲間に扮していたのは、仲宗根組若頭の村井とその組員たちだった。


「見事な演技だった、村井」

「…」

男は理解した。

「残念だったな、もうちょっと頭を使わないと」

と、仲宗根は自分の頭を人差し指でちょんちょんと触った。


「お前ら、銃丸に手を出したらただじゃ済まないぞ」

「ご心配をどうも。だが、俺たちも引き下がれないんでな」

「あの人たちは手を出した人間には容赦しない。どんな手を使ってでも必ずお前らを殺す、生きたままバラバラにされるだろうよ」

男は奇妙な笑みを浮かべた。


「組長、どうしますか?こいつ。」

村井が訊いた。


「逃がしてやれ」

「え?殺らなくていいんですか?」

「こんな三下殺しても、こいつの組織には何も影響しねぇだろ」

「確かにそうですね」


村井はドスを取り出し、男の手と足のロープを切った。

男は猛ダッシュで、倉庫から出て行った。


「あいつ、追いかけさせますか?」

「どうせあいつは銃丸に殺されるだろう」

「そうですね。まあ、とりあえずこれで喧嘩を吹っ掛けた奴らがわかりましたね」


銃丸か…俺たちに手を出したことを後悔させてやる。


勅使河原会と銃丸との抗争が幕を開けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ