戦の始まり 1
「ちょっと急ぐぞ」
強面の四人組が飲み屋街の路地に走っていった。
2006年、沖縄。
酔っ払いが集まるこの平和通り。
国際通り商店街の横にある平和通りは、国際通りのように現代的な建物は少なく、店も建物もすべてが古く、まるで昭和に戻ったかのようだ。
そんなディープな雰囲気がまたいい。
最近は観光客も増え、店も商売繁盛だろう。
強面の四人組は沖縄の暴力団、勅使河原会の組員で、地元で営業しているクラブのママから「客が暴れている」と連絡がきた。
このクラブは勅使河原会に守料を払っているので、彼らにも店を守る義務がある。
「ここです」
四人は中に入った。
「ママ! 大丈夫?」
カウンターから赤いワンピースを着た、三十代のママが出てきた。
髪が乱れ、ワンピースも若干破れている。
「もう、めちゃくちゃよ…」
と、涙声になりながら話した。
「暴れている奴は?」
「奥の部屋よ!」
ママが、通路を指さした。
四人はその指さすほうへ走る。
「ちょっとやめて!」
女性の叫び声が聞こえてきた部屋のドアを、思い切り開ける。
「おい! コラ! 何してんだ!」
金髪の男が乱暴に女の子の服を脱がそうとしていた。
顔を上げた男は金髪で、顔面に傷が入っている。
「やっとお出ましか、遅いじゃないか」
顔に大きなタトゥーが入った男が立っていた。
「おい! 何してるんだ、この野郎!」
「でけぇ声出すな、耳が痛いだろう」
タトゥーの男が耳を抑え、煽るような口調で言った。
「なんだと、コラ! 表出ろ!」
勅使河原会の組員の男が怒鳴り声をあげた。
金髪の男が立ち上がり、兄貴分の男の前に立ち、何かを振り下ろした……。ぐちゃっとグロテスクな音が響き、兄貴分の男が血を出しながら崩れ落ちた。
金髪の男の手には血まみれのナタが握られている。
「キャー!」
女の子の悲鳴が響く。
何が起こったのかわからず、組員たちは立ち尽くしていた。その組員たちを、金髪の男は、次々とナタを振り下ろしていく。
部屋はあっという間に血の海になった。
「やりましたね、ボス」
と、タトゥーの男が笑いながら言った。
「あぁ、これから戦争になるなぁ。あぁ、なんか気分がいいぜ、テンションが上がってきたぁ。ははははは」
金髪男の気味の悪い笑い声が店内に響き渡った。




