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第28話 お前は何もするな 


 マシューの実家、グレイヴ家は自然豊かな森林に囲まれている。

 馬、弓の訓練場だけでなく、アスレチックコースなどもあり、よく出入りするライオスからすれば、貸し切りの遊び場だった。


(今日はルルイエ達がいるからアスレチックで遊べないけどね)


 しかし、シシリーとエスメラルダは、ロープ登り用の背の高い壁を見て幼子のように大興奮していた。


 残念ながら、運動できる姿ではないので今は我慢してもらう。


 今、リチャード達は馬の訓練場にいる。リチャードも嗜み程度には馬が乗れるので、少し慣らしてから訓練コースへ向かうようだ。


(仲良くなったと聞いてはいたが、本当に仲が良さそうだ)


 遠くから二人の様子を眺めていたライオスは、普段よりも親し気にしているのを見て小さく頷いた。

 エスメラルダとシシリーもリチャード達の様子を眺めているが、何か悪巧みを企んでいるわけではなさそうだ。

 むしろ、仲良くしている二人がもどかしいのか、ヤキモキしているのが分かる。


(兄上の言う通り、私は何もしなくて良さそう……ん?)


 二人の所へ、カレンが近づき何かを話しかけている。カレンは至って上機嫌な様子だが、エスメラルダの感情に黒い靄のようなもの浮かんだのが分かった。


 シシリーからも焦りや驚き、それから微かな怒りの感情が伝わってくる。


(おや……これは?)


 ライオスはマシューに頼んで、とあるメイドを呼び寄せてもらった。

 彼女は護衛だけでなく、影の教育も受けている者だ。


「ねぇ、君。今、リグレー伯爵令嬢がとても仲良さげにエスメラルダ王女に話しかけていたみたいなんだが、なんて言っていたのだろうか?」

「はい。リグレー伯爵令嬢は、リチャード殿下とフロイス公爵令嬢はとてもお似合いだと仰り、エスメラルダ王女に同意を求めているようでした」


 読唇術で二人の唇の動きを読んだメイドがそう言うと、ライオスはにっこり笑う。



「そう。それで、エスメラルダ王女はなんて?」

「『私には分かりませんわ』と」

(ふ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ん?)



 おそらく、カレンは外堀を埋めるつもりでエスメラルダ王女に声をかけたのだろう。


 エスメラルダ王女の密入国の理由は、昨日知ったばかりでまだカレンとは共有していない。むしろ、先日のヴィオと遭遇した時のように、共有したら暴走する懸念があったのだ。


(気を利かせたつもりで火に油を注いだか……)

「殿下」


 事情をよく知るマシューがこちらを向き、ライオスは頷いた。


「ああ、分かっている」

「はい、そのまま何もなさらないでください」

(あれぇぇええ?)


 マシューはライオスにルルイエをあてがうと、そのまま彼女の侍女テレサと一緒にライオス達を裏庭へ押し込めたのだった。



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