働かざる者食うべからず
普通の人間であるならまず間違いなく一度はぶち当たるであろう大きな悩みを知っているだろうか?
急に何言ってんだって?まぁ聞け。
今まさに俺もその悩みに直面しているのだ。
置かれている状況は異端その物な俺だがこれでも今は普通の男子高校生なのである。
つまりご多弁に漏れない!
もう本当そこはご多弁に漏れてほしかったっ!
「……まどろっこしい言い方してないでさっさと結論を言ったらどうですか……。」
「んなっ!?ロリ天使!?」
なんだ!?何処かから声が聞こえた。
「どっこいせっと。」
言いながらまた学習机の引き出しの中から顔を出し、そのまま出てくるロリ天使。
「だから、誰がロリですか。」
床に足を着くと、やれやれとばかりに肩を竦めるリオ……もといロリ天使。
「なんでわざわざ言い直したんですか……。」
「いや、一応新シリーズだから名前の説明があった方がいいだろ!
親切設計だ。」
「いや意味が分からないし最初から名前で呼べばいいじゃないですか……。」
「そ、それよりお前なんでまたここから出てきたんだ!?」
「なーんか体良く話を逸らされた気がするなぁ……。
まぁ良いです。
言ってなかったでしたっけ?
あなたのサポートする為に最初に来た日の前日辺りからここに住んでるんですよ、私。」
「は?」
言われて学習机の引き出しを開く。
するとそこにあったのは……!そこにあったのは!
「なんで二回言ったんですか……。
ただの机の中そのままでしょ?」
「こう言うのは前置きがあった方が盛り上がるだろうが。
と言うかただの机じゃねぇか。」
「そりゃそうですよ。
ただの机なんですから」
「そんなの見れば分かるわ...。」
だって某青狸の世界では引き出しがずっとタイムマシーンの置き場所になってたし……。
するとリオはちっちっち、と舌を鳴らす
「そんな事したら持ち主が困るじゃないですか。」
なん、だと。
持ち主のプライベートが筒抜けなのも充分困るんだがと言うツッコミはあるものの……。
一度タイムマシーンが居座れば引き出しとしては全く機能しなくなるあの世界とは違い、リオが居座ったからって引き出しが使えなくなる訳じゃないらしい。
「プライバシーに関しても問題無いですよー。
最初に言った通り私が出入りする時以外はただの引き出しですから」
「なるほど、それなら安心……いや!いきなり出られたらやっぱりプライバシー無いじゃないか!?」
しかも普段は大丈夫とか言いつつめちゃくちゃ見計らったかのようなタイミングだったろw
「えー……めんどくさいなぁ。」
露骨に顔を顰められた。
「ははぁん?
あれか、まさかお前も志麻みたいに俺のストーカーを「は?」あ、嘘ですごめんなさい。」
「そんな事よりさっきは何を言ってたんですか?」
まぁ確かに今俺が直面してる問題の事を思えばそんな事なのかもしれないが……。
「そうでしょう?
それで?何を悩んでるんですか?
まさか遂に恋愛をしようと!?」
「あ、それはない。」
「ちっ。」
あ、今舌打ちしやがったよ……この天使。
「まぁ、聞け。
ここ最近イベントが目白押しだったろう。」
「まぁ、そうですね。
逆にそれでなんで恋愛したいってならないのか不思議なくらいです。」
「そんな事よりだ。」
「そんな事より!?」
「人が充実した時間を過ごす為に必要な物ってなんだと思う?」
「え、そりゃ気の合う仲間とか優しさとか。」
「甘いっ!!」
「えー!」
「答えは至ってシンプル!
そう!今俺は!金がない!
The金欠!」
「えー……。」
めっちゃ呆れ顔された。
そもそも俺は学生だ。
学生は勉強する事が仕事なんて言葉もあるが、なら勉強したらお金が入るのかっていうとせいぜいテストで良い点をとった時に貰えるお小遣いくらいだ。
ちなみに前世の俺は毎月の小遣いなんて物は無かった。
せいぜい買い物に行った際にゲーセンで遊ぶだけのお金を貰ったり、お祭りの時に食事代を貰ったりするぐらいだ。
この世界では一応月々の小遣いを貰っているらしい。
大人になった今ではそれがどんなに有難い事なのかよく分かる。
でもまぁ当然夏休み中自由に出来る程の額じゃないし、転生して入れ替わる前の俺は貯金なんかしておらず……。
「気が付けば財布はほぼ空。
本当大人から子供に転生したら金銭感覚バグるよな、、。」
「そんな事例がそもそも異例なので普通の人なら言われても共感は出来ませんね、、。」
「だよなぁ...。
とりあえずこのままじゃまずいのは確かだ。
と、言う訳でだ!!ロリ天使、いやリオ!
お前に頼みがある。」
「な、なんですか。
急に呼び方まで変えて……。」
「お金を出せるアイテ……「ありませんよ、そんなの。」ちっ...。」
「舌打ちした!?」
「だってお前、某青狸は主人公が困ってたらなんだかんだ最初は渋りながらも便利な道具を出して助けてくれるだろう。」
「いや……私は別に青狸では……。」
えー……なんかそれっぽい道具とか持ってたジャマイカ……。
「なら俺に金をくれ!」
「いやいや、だから……「しょうがない、貸すだけでも良いから!多分返さないけど!」頼む気ありますかね...?」
「……ケチ天使。」
「相変わらず清々しいまでに手の平返しが凄いですね!?
コホン、わざわざ私にたからないでも普通に働けばいいじゃないですか。
ちょうど夏休みで時間もある訳ですし。」
「嫌だ!働きたくない!せっかくの長期休みなのに!」
「いや、あなた前世では大人だったんですから働く事の重要さは分かるんじゃないですか?」
「そんな事分かってるっての。」
「じゃあ……。」
「だからサボりたいんじゃないか。」
「うわぁ……ダメだこの人……。」
呆れられてしまった。
「大体そんな道具作ったら普通に厳罰案件だし、そんな物が普通にあって使えるなら私だって働きませんって。」
「まぁ、そうなぁ……。」
「そしたらあんな目刺し生活だって……。」
呟き目のハイライトを消すリオ。
あ、これ地雷踏んだっぽい……。
「いや、悪かった……。
なんかすまん……。」
「はははーワカレバイインデスヨー。」
返しが完璧に棒読みジャマイカ、、どんだけトラウマになってんだよ、
今度またパフェでも奢ってやるか……あ、今金ないんだった、、
「バイトするしかないかぁ……。」
「その結論に至るまでに随分遠回りしましたね……。」
結局の所、働かざる者食うべからずなのである……。
学生になってまでその現実に直面するなんて世の中はなんと世知辛い……。
「いや……そんな大袈裟な……。」
「っってもバイト……バイトかぁ...。」
生徒会って給料とか出んのかな……ある訳ないって?知ってた……。
うーん……。
「お兄ちゃん!
お客さんだよー。」
「おや、こんな時間に誰か来たようだ。」
「なんでわざわざ死亡フラグみたいな言い方するんですか……。
こんな時間って言う程の時間でもないし……。」
「やっほ!悠太。 」
リオのツッコミを軽く聞き流しながら玄関に向かうと、玄関先に居たのは絵美だった。
隣には蘭ちゃんも居る。
「やっほ、悠。」
Tシャツにショートパンツと言うボーイッシュな出で立ちの蘭ちゃん。
対して絵美は涼し気な水色のワンピース姿である。
「あれ?リオちゃん来てたの?」
俺を呼びに来てからそのまま付いてきた日奈美が聞く。
まぁ当然の反応だよなぁ……。
「二人ともどうし……は!?まさか生徒会に強制連行!?」
最近生徒会の仕事を全然手伝えてなかったから遂に家にまで!?
何それこっわ!立てこもりを所望します!
「違うよー。
もしそうなら会長が来てるし。」
「いや、会長が手が離せなくてとかかもだろ……?」
は!?もしそうなら黒スーツのヤーサンとかが来たり!?
そうなったら部屋まで怒鳴り込んで来る可能性ががが……。
「うーん……会長なら自分で来ると思うけどなぁ。」
そんな俺の物騒な想像を知ってか知らずか、絵美が少し考え込む仕草をしながらそう返す。
まぁ確かに勧誘には自分で来てたっけ……。
「それよりも今日はね、悠太とお散歩がしたくて!
蘭ちゃんに言ったら私も行くって言うから一緒に来たんだー。」
「そ、そうやな……。
普段のやり取り見とるからなんか裏ありそうな気ぃするし……。」
「ははは!公園を二人で駆け回るか。
どっちが先に着くか競争するか?」
「なんか悠も最近普通にノリ気やし!?」
ははは、蘭ちゃんも心配症だなぁ。
「悠太さん、それより今は……。」
「え?ごめん何か用事があったの?」
申し訳無さそうに絵美が言う。
「あぁいや……実は……。」
とりあえずさっきまでリオとしていた話を二人にも説明する。
「ふむふむ、なるほど。
悠はバイトを探しとるんやな。」
「悠太はそんな事しなくて良いよ!」
それを聞いて納得した様子の蘭ちゃん。
対して絵美は納得していないようで……。
「そんな事しなくても私がいつでも面倒見てあげるから!」
「絵美!?」
あー面倒見てくれるのか〜。
見られちゃぅのか〜……。
でも働かずに面倒見てもらえるなら案外悪く……
「ちゃんとビーフジャーキーとサラダチキン毎日用意するから! 」
うん、全然快適じゃなかったわ、、
絵美は絵美だった……。
「絵美……確かにサラダチキンの方がって言うたけど流石に毎日はあかんて……。」
「そっかー……。
たまにはツナ缶とかササミとかも出した方が良いのかな?」
「そもそもその発想から離れよ!?」
絵美は絵美だった……。(2回目)
「あ、悠、あれならウチの知り合いの店紹介しよか?」
「え、良いのか?」
「勿論!てか悠も多分知り合いやしな。」
「おぉん……。」
うーん……確かに全く知らない人ばかりの場所で働くのには少し抵抗があるが……。
でも誰だろ……。
川崎みたいに仲悪い知り合いだったら嫌だなぁ……。
とは言え他に案も出ない訳で、渋々ではあるが話を聞いて早速案内してもらう事になるのだった。
ちなみに今日のサラダチキンは美味しく頂きました。
「早速餌付けされとる!?」
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メルティ豪田さん作成のフラれろう、タイトルロゴが出来ました!
こちらを現在制作中の表紙絵にも入れる予定です✨お楽しみに!




