大事だからこそしまい込む
「あ!こんな所に居た!」
「おぉ、天使!」
水着に着替え終えた日奈美が、俺の姿を見付けて駆け寄ってくる。
ピンクのフリル付き水着。
購入した日も試着室で着てる写真を見せてもらったが、間近で見ると全然破壊力が違う。
神様ありがとう!僕は今幸せです!
「シスコンキモっ。」
横で聞いていた宏美がそう言って顔を顰めるが知った事ではない。
これは当然の反応なのだ、異論は認めない。
「悠太さんがシスコンなのは今に始まった事ではありませんが...。
本当の天使の私を差し置いて水着姿の妹を天使と呼ぶなんてもはや重症ですね。」
「おぉ、ロリ天使お前も来た...なん、だと...?」
次に姿を見せたリオはまさかのスク水姿だった。
「なんですか?何か変ですか?」
「変か変じゃないかで言うと変だな。
ぶっちゃけ変。」
「そんなストレートに!?しかも2回も言った!」
ラブコメでこう言う海とかプールに行く話になると大体1人は居るスク水キャラ。
まさかコイツがそのポジションだとは...。
まぁ...でも...。
「な、なんですか?私の大人っぽい水着姿に興奮して……「あ、それは無い。」まさかの即答!?」
だって見た目はまんまスク水着てる小学生である。
大人のおの字も無い。
「大体なんでスク水なんだよ?」
「それは...私海で泳ぐなんて初めてで...。
こう言う時どう言う格好するのかよく分からなくて...。
で、手元にあったのがたまたまこれだったんですから。」
ならなんで手元にあったのか、と続く訳だが...やめとこう...その辺は何らかの裏事情でもあるのだろう...。
と、メタな事を考えていると俺の視線の先にもっと奇抜な格好をしてる奴がいた。
しかも猛スピードで接近してくる...だと?
「悠太の水着姿!写真撮って良い?良いよね!?」
接近してすぐにスマホを構えて来たのは志麻だ。
そしてそんな志麻はどう言う訳か中が見えない緑のレインコートを着ている。
フードがデフォルメされたカエルさんの顔になってる子供向けの可愛いらしいやつ。
まぁサイズは大きめだから子供用ではなさそうだが...。
まさか...な。
このパターン...見覚えがあるぞ...?
いや、流石にこのレインコートに見覚えはないが...。
「なぁ、志麻。
そのレインコート...。」
「気になる!?」
「あ...いや別に...「気になるよね!?」あー...はいはい気になる気になる。
名前も知らない木ですから...。」
「お兄ちゃんそれCM...。」
良かった、ちゃんと通じた...。
「気持ちがこもってないー!」
ようするにあれだ、こないだのデートの時の海仕様って事だろう。
「どうせあれだろ?
水着姿を1番に見せたいから、とかだろ。」
「ブー。
不正解です!」
「あれ、違うのか。」
意外っちゃ意外だが、当たらずとも遠からずな気がするんだが...。
「正解は...。」
「ちょ、近い!」
急接近の志麻。
「わ!ちょっとお兄ちゃんから離れて!」
そんな日奈美の静止も聞かずに俺に近づいてきた志麻は俺の耳元に顔を寄せて...。
「私の水着姿。
見せるのは悠太だけだよ?」
「っ...!?」
そう耳元で囁いてきた。
「あーあ、お熱い事で。
イチャつくなら他でやってくんない?」
宏美がシッシッと手を振ってくる。
「悠太、行こ!
このレインコートは悠太に脱がせてほしいなぁ。」
なんて言いながらしがみついてくる志麻。
「ちょっと!お兄ちゃんは私と泳ぐんだから!」
日奈美が反対側の腕を引っ張る!
愛の牛裂き刑再び!
「悠にぃはまりと遊ぶんだよ!」
そう言って背中に抱きついて来たのは茉里愛だ。
水玉模様のフリルスカート付き水着。
あどけない感じのまりちゃんによく似合っている。
そしてそんな姿で背中から抱きつかれると、自分が上半身裸なのもあってかダイレクトに彼女の柔らかい身体の感触が伝わってくる。
志麻も負けじとしがみつく腕に力を込めてくる
こっちはこっちでレインコート越しとは言え元々のスタイルが良いから大変宜しくない。
「そ、それならわ、私だって!」
あぁ!日奈美まで!
助けて助けてロリ天使!
と思ったがリオはこっちを見ておらず、さっき
からつまらなそうにそっぽを向く宏美に目を向けていた...んだよな?
単純に自分じゃどうにも出来ないから目を逸らした先に宏美が居たってだけじゃないよね...。
「それもありますけど...。」
あるんかい...。
でもそう言うリオの表情は真剣そのものだった。
「どうしたんだよ?」
「いえ...。」
口ごもるリオ。
なんだ...?
と、そこで。
「あらぁ、悠さん、ここに居らしたんですか?」
はっ!?
全てを振り払っての高速ガン見。
千鶴さんの水着姿だぞ!?
そんなの一番に見たいに決まってんだろ!
青の花柄ビキニ姿の千鶴さんはもはや芸術だった。
豊満なバスト、そして一切無駄のない腰までのラインと細く長いおみ足まで...。
全てが洗練され、完璧な1つの作品として仕上がっていた。
「なんて事だ...。
この世界に女神が居たなんて...。
そうか、彼女が神様だったのか...。」
「なーに馬鹿言ってんだか...。
あーあ、私先に戻るから。」
「あ、宏美さん!」
そう言ってさっさと別荘の方に歩いていく宏美。
それを引き留めようと伸ばしたリオの手は、彼女に届く事無く虚空を撫でる。
「長旅で疲れたのかもしれませんねぇ。
休ませてあげましょう。」
と千鶴さん。
「そう、だよな。」
「あっちで他の皆さんがビーチバレーをするみたいですよぉ?」
「あぁ、はい。」
そう返しながら思う。
気のせい、だよな...。
去り際のアイツの顔泣いてた気がする。
「まさか...な。」




