胸騒ぎは重なって。
「お兄ちゃん……大丈夫かなぁ...。」
悠太が川崎とトランプをしてるなんて夢にも思わない他の部屋のメンバーはと言うと。
「悠君……何かあったん?」
日奈美の呟きに同じ部屋の美江が反応する。
美江は悠太と川崎の関係を知らないのだろう。
「えっと……実は……。 」
簡潔に悠太と川崎の関係を美江に説明すると、美江は目を見開く。
「えっ……!?そ、そんな人と同じ部屋なの……?」
流石の美江もバツが悪そうに俯く。
「うん……。
前にも大喧嘩してボロボロで帰ってたし……。」
「そ、そう言えば悠君がほっぺたにガーゼ貼ってたの見たかも...。」
言われて改めて思った。
やっぱり部屋に行った方が……!
でも...自分が行った所で何が出来る訳でもないのではないか。
お兄ちゃんが喧嘩で勝てない相手に非力な私が勝てる訳が無い。
なら私が代わりに殴られる?
それがお兄ちゃんを助ける事になる?
いや、ならない。
お兄ちゃんはそんなの喜ばない。
きっとなんでそんな事したのかと怒るかもしれない。
踏み出そうとした足が止まる。
いや、駄目だ!
もうそんな風に負い目を感じて何も出来ないままなんて嫌だ。
お兄ちゃんはいつも私の味方でいてくれたのに……!
自分を大事にしてくれた兄の為に私は何も出来なかった。
でも兄はそんな私を全く責めもせず変わらず優しくしてくれた。
そんな優しい兄が傷付くのをただ近くで見てるだけなんてもう、嫌だ。
お兄ちゃんは私の事を良い妹だと言ってくれる。
でも私はそんな風に何も出来ずに守られてばかりの自分が嫌いだ。
そしてこれ以上自分を嫌いになりたくなんかない。
「美江ちゃん、ごめん。
私ちょっと様子を見に……「待って。」
え?」
「私も行く……。」
「うん。」
何だかんだ美江も心配なようである。
場所を変えてその頃。
「悠太が心配!直ぐに様子を見に行かなきゃ!」
部屋に入るなりすぐに部屋を飛び出そうとする志麻。
「本音は?」
「個室なら悠太に夜這い、いや昼這いかけ放題!ヒャッホー!」
茉里愛は思った。
相変わらず正直だなぁ...。
これ程までに純粋に誰かを愛し、本音をストレートに伝えられるのはある意味尊敬出来なくもない...事もないか...。
普通に鬱陶しがられそうだし...。
でもまぁ心配なのは確かである。
慣れた手つきで志麻をロープでグルグル巻きに
しながら思う。
まりだって気持ちなら負けてないもん...。
「あぁ!ご無体な!?」
そのまま志麻虫を引きずりながら部屋を出る。
「まりと同伴なら許可する。」
「本当!?じゃあ昼這いも!?」
「...それはダメ。」
「ぴえん...。」
ほんと昼這いってなんだろう...?
更にその頃。
「あっ...!ちょ...し、舌入って、、そ...それらめぇ...!」
「ねぇ、確か悠太君と川崎直也って犬猿の仲なんじゃなかった?
同じ部屋にして良かったのかしら...。」
「そ...そう...はぁ...だね...はぁ...いや、あたしとハルたんが同じ部屋...はぁ...なのもどうかと...はぁ...思うけど...。」
「何か言った?」
そう返しながら舌なめずりするハルたん。
「いえ!何も!?」
全く...酷い目にあった...。
※ ただ耳を容赦なく責められただけです。
「じゃあ善は急げよ!悠太君の様子を見に行きましょ!」
「えぇ!?ちょっと待って!まだ準備が...(主に下半身的な)」
「そんなの気にしてる場合じゃないでしょ!こうしてる間に悠太君が酷い目にあってるかもしれないんだから。
生徒会長としてすぐに行かなきゃ。」
「い、いやせ、せめてちょっと御手洗に...!」
「何、延長戦希望?」
「喜んでお共させていただきます!」
後に瑞穂は生徒会副会長になる訳だが...それを決めた経緯を聞かれた際彼女はこう語ったのだった...。
生徒会長は怒らせたら怖い...と。
「なぁなぁ、着く時間まで暇だし悠ちゃんも誘ってトランプでもしようぜー。」
「お、良いね。」
秋名たんの提案に智成は快諾する。
そんな風に心配とは無縁のノリで気軽に遊びに行く二人もいたり...。
「これは直接確認しなきゃ.!
ウチ的には悠兄が責めで川崎先輩が受けだと思うんだけど!」
だらしなくヨダレを垂らしながら美紀が言う。
「立場逆転パターンか!それアリだな!」
サムズアップする宮戸。
とまぁ心配...いや、私欲の為に覗きに行く二人もいたり...。
「千鶴先生、悠さん大丈夫ですかね?」
「気になりますか?」
「こないだも凄く目立ってましたからね……。
流石に仲の良いクラスメイトがあんな状態になってたら気になりますよ。」
「では様子を見に行きましょう。
アナたん、出番ですよ。」
「サー!イエッサー!」
返事を返したアナたんはケージから腕と足だけ出して四足歩行になる。
「ささ、はいねさんも乗ってください。」
「えぇ...。」
等と別にしたくもない初体験をする羽目になるはいね。
そしてそれを手懐ける千鶴さんとドMが一匹いたり……。
「匹呼びふーっ!」
「怒るどころか喜んでる!?」
更に他の部屋では。
「蘭ちゃん、様子見に行ってみない?」
「あぁ、悠の?」
「二人が遊んでたら私も混ざりたいし!」
「いやいやそんな訳ないやろ、、」
「大丈夫だって、次悠太に手を出したら絶縁だから。」
「おぉう...。」
川崎やっけ...なんか不憫な奴やなぁ...。
と、渋々ついて行く蘭。
そしてその頃宏美、リオはと言うと。
リオは気付いていた。
部屋に入ってから宏美がずっとソワソワしている事に。
「宏美さん。」
「あ...え、何?」
完全に虚をつかれた様子の宏美。
「悠太さんの事、気になるんですか?」
「べ、別にそんな事...。」
嘘だ。
彼女がなんだかんだ彼を心配して気にかけてると言う事ぐらい見ていたらすぐ分かる。
「私、宏美さんにずっと聞きたかった事があるんですけど。」
「な、何?」
「単刀直入に聞きます。
宏美さん、あなた本当はまだ彼の事が好きなんじゃないですか?」
「っ...!?」
「あくまで私の推測ですけど。
本当は好きだけど何らかの理由で彼から身を引いた。
違いますか?」
「...仮に...もし万が一にもそうだったとしてなんだって言うの?」
「あなたはそれで良いんですか?」
「良いも何も私が自分で決めた事だから。」
「そうですか...。」
「それに友達の心配くらいするでしょ?
あんなのでも一応友達なんだから。」
「あんなのって...。」
推測と言う言葉を使いはしたが、リオはほぼ確信を持っていた。
おそらく彼女にはそれでも身を引かなければならないと思ってしまった原因があるのだ。
その辺をどうにか探れたらと思ったが、これは一筋縄ではいかなそうである。
「とりあえず様子を見に行きましょうか。
一緒に来ますよね?」
「まぁ、一応気になるし。」
そう言って宏美もついてくる。
そんな感じで全員が悠太の部屋に来た訳だが。
「ん?どうした?みんな揃って。」
「クソ、またババかよ!」
中にはハラハラドキドキな空気感で駆け付けた者達もいた訳だが...。
そんな空気感をぶち壊すような和やかな雰囲気で、ババ抜きをする悠太と直也。
本来三人以上でのプレイが推奨されるババ抜きだが、そのせいで二人の手札の数がえげつない事になっている。
「何やってんですか..?」
おそらくその場に居た悠太と直也以外全員の総意をリオが問う。
「え、ババ抜き知らない?」
「いやババ抜きは知ってますけど!?」
「トランプするってなったは良いけどお互いババ抜きしか知らなくてさー。
参ったよな。
手札多すぎて全然決着つかねぇの。」
「いや悠ちゃん流石に二人でババ抜きはつまらねぇだろ!俺達も混ぜてくれよ!」
「おう、入れ入れ。」
「私も入れて!」
絵美も嬉しそうに入ってくる。
一方で完全に拍子抜けを食らった面々。
何も無かった上に意外と打ち解けている事に安心した反面...。
「お兄ちゃん?」
「ひ、ひーちゃん?目が怖いよ?」
「心配かけておいて実は仲良く遊んでました、なんていいご身分ね?悠太君。」
「ひぃ!?は、ハルたん会長まで!?」
「ほら!ウチらの妄想通りじゃない!?
これは滾るわw」
「ハッチー?何がその通りなのかは知らないけど絶対ロクでもない話だよね!?」
そこはツッコませてもらう!
その鼻血が何よりの証拠だもん!
「あたしもちょーっと誰かさんのせいで虫の居所が悪いんだけどなぁ。」
「み、瑞穂まで!?」
「悠太!私は信じてたよ!」
言いながらぴょんぴょん跳ねる志麻虫。
ミノムシって跳ねるのかしらん...。
まぁ志麻虫だし良いか...。
「ありがとう、いつも重いな。」
「それ気に入ってるの!?」
「って痛い痛い!?」
また美江につねられる。
「なんだよ!?」
「うるさい...! 」
ムスッとした顔で更につねってくる美江。
「覚悟は出来てるよね?悠太。」
にじり寄ってくる瑞穂。
「出来てないです!」
「問答無用!」
質問の意味w
この後めっちゃ怒られたけどその後は皆でトランプして過ごした。
今回はお知らせが二つあります!
一つ目!現在はなろう様だけですが、今作の設定資料集(設定資料集でもフラれろう)を公開しました!
各キャラ事のプロフィールを一挙に公開です!
コイツ誰だっけ...って時には是非ご活用頂けたらなと思います!
そして二つ目!
なんと!フラれろうの表紙絵を描いてもらえる事になりました!
どんな感じになるかはまだ未定なので作者もこれから楽しみです!
さて誰が表紙絵を飾るのか、ご期待ください!




