女心は複雑怪奇!
「お兄ちゃん!今日は私に付き合ってね!」
宏美との偶然の会合の翌日。
日奈美と二人で朝食を食べていると、日奈美がそう言って誘ってくる。
「勿論!一日どころか1週間だって1ヶ月だって付き合っちゃうぞ!」
「そこまでは別に付き合ってくれなくても良いけど...。」
少し引いたような表情の日奈美……。
「ぴえん...。」
いかんいかん……。
妹が好き過ぎてつい志麻みたいになってしまった。
志麻だけに。
「悠太!呼んだ!?」
「呼んでないから一瞬で出てくるんじゃありません怖いから。」
さて、そんな訳で今日は日奈美と買い物である。
繰り返す!妹とこの夏では二度目!二人きりのショッピングデート!!なのである!!!
……なんて思っていた時期も僕にはありました。
「ゆ...悠君も来たんじゃね...。」
目的地であるショッピングモールの最寄り駅に辿り着いた俺と日奈美は、その最寄り駅の改札前で人を待っている様子の美江と出くわした。
「「ひーちゃん?(ひなちゃん?)」」
2人して日奈美に目を向けると、日奈美は苦笑いを浮かべる。
どうやら最初からそのつもりだったらしい。
それにしても...。
今日の美江のコーデは無地のピンクシャツに赤いチェック柄のロングスカートだ。
付き合ってた時にデートでよく着ていたコーデだ。
それにどこか懐かしさを感じるくらいには、俺達の関係はもう過去の物になってしまったんだなと思う。
「だって2人がまたせっかく仲良くなろうとしてるみたいだから私嬉しくて。」
その表情は本当に嬉しそうに見える。
実際日奈美には随分心配をかけたなと思う。
美江と別れた時は彼女の事を紹介した人が多かった分ちょっとした騒ぎになったものの、あの時俺の次にそれを悲しんだのは日奈美だったんじゃないだろうか。
でもそれでどちらかを責めたりせず変わらずどちらとも仲良くしていた日奈美にとって、今の状況は本当に喜ばしい事なのだろう。
「ひなちゃんがそう言うんなら...えぇけど...。」
遠慮がちに呟く美江。
美江もまた同じ様な事を考えているのだろうか。
最初こそ騙されたと言う感じの表情だったが、今ではどこか優しい視線を日奈美に向けている気がした。
「と、言う訳で。
今日はお兄ちゃんに私達の水着を選んでもらおうと思います。」
「ほへ?」
さて、そんな風に感傷に浸っている中、日奈美からの急な申し出に思わず俺は間抜けな返しをしてしまった。
「み、水着...?」
同じく今日の予定を全く聞かされていなかったのであろう美江も戸惑いながら聞き返す。
「そう!夏合宿先は海が近い別荘みたいだから泳ぐ事もあるかもだし。
この機会に可愛いのを選びたいなって。」
楽しそうにそんな事を言う日奈美。
「それは別に俺居なくても...。」
「駄目だよ!お兄ちゃんに選んでもらった水着を着たいんだから!
ね、美江ちゃん!」
「えぇ...!?わ、私に振られても...。」
急に話を振られたからかビクりと肩を震わせる美江。
か細い声でなんとかそう返す。
分かる!急に振られたらビビるし辛いよね!え、振られ違い?知ってた。
あれ、涙出て来たわ...。
「お兄ちゃん!?どうしたの!?」
「いや、ノリツッコミって辛いんだなって痛感してさ……。」
「なんの話!?」
さて、そんなやり取りがあったものの、俺達は無事に?ショッピングモールにたどり着いた。
俺は昨日も来た訳だが、まさかこんな短期間に元カノとここに来る事になるなんて思わないじゃん?
まぁ今日はひーちゃんもいるけどな!(最重要)
「このシスコン……。」
と、そう言って美江が顔を顰める。
「まだ何も言ってないのに!?」
「い、言いそうな顔しとったけぇ……。」
いや言いそうな顔て……。
「ほらほら、二人とも早く行こっ!」
先頭を歩く日奈美がそう言って声をかけてくる。
「で、でもちょっと水着は恥ずかしい...かも。
あんまり沢山の人に見せるんは....。」
水着売り場に向かってる道すがら、美江が不安そうに呟く。
まぁ、美江の場合は男性不信もあるしなおのことなのだろう。
それこそその場で出会ったナンパ野郎に絡まれでもしたら更にトラウマになりかねない。
「それは私も気になるけど...。」
日奈美の水着姿に関しては俺だって沢山の人に見せたくない!
「大丈夫だひーちゃん。
ひーちゃんをナンパするようなやつは海に突き落として難破させてやる!
ナンパだけになっ!キリッ!」
「し、シスコンキモイ...。」
「おうふ...。」
美江から再びストレートな罵声が飛んできた。
でも悔いはない、、
まぁ……そもそも今回はそんな心配はない訳だが……。
「コホン、そもそもそう言う心配なら不要だ。
モテまくってる会長も不特定多数に水着姿を晒すつもりはないらしいからって今回の合宿に使う別荘はプライベートビーチ付きの物にしたらしい。」
本当聞けば聞くほど漫画みたいなキャラ設定だよなぁ...。
会長様々である。
ははぁ!(敬礼)
「そ、それなら大丈夫...かな...。」
少し安心した様子の美江。
まぁ秋名たんとか暴走しそうだがアイツは殴って黙らせるとして...智成は誠実だし問題無い。
さて、と言う訳で俺が連れてこられたのは水着専門店。
男性物の水着もあるだけに店には男性客もいる。
それだけに少し安心感もある。
流石に女性用の専門店とかだと気まずいからな...。
「ね!お兄ちゃん!
これとかどうかな?」
まず日奈美が持って来たのは夏らしい水色のフリルスカート付き水着だった。
「日本一可愛いよ。」
「え、じゃ、じゃぁこれは?」
次にピンクの水玉模様のお腹まで隠れるタイプの水着。
「世界一可愛い。」
「こ、これは?」
次は同じくお腹まで隠れるタイプのピンクフリル付き水着。
「宇宙一...「真面目に聞いてる...?」はい...。」
え?このやり取り前にもやっただろって?
仕方ないじゃん日奈美が可愛い過ぎて何着ても似合うんだもの...。
「シスコンキモイ...。」
おうふ...。
本日3回目のシスコンキモイ頂きました。
「あ、これとか美江ちゃんに似合うんじゃない?」
そう言って日奈美が差し出したのはフリルのスカート付き水着だ。
色は白で、花柄模様がとても可愛いらしい
「え、そ、そうかね...。
でもやっぱりお腹が出ちゃうんは恥ずかしいし...。」
「え、じゃぁこれとかは?」
次に日奈美が差し出したのは、ピンク地に花柄のワンピースタイプの水着だ。
スカートも着いているし露出は少ない。
「あ...そ、それなら...えぇかも...。」
どうやら美江の好みは決まったらしい。
「私達試着してくるから、お兄ちゃんはちゃんと私達に合うやつを真面目に選んでね!」
「はいはい。」
ってもなぁ...。
ついさっきまでは二人が居たからこそ出来たのであって、1人になった今女性用水着をジロジロ見てたらただの事案である。
これは学生に戻った今でもだ。
良い子は真似しちゃダメだぜ?
と、言うわけで俺は手頃でいい感じの自分用男性水着を選ぶ事にする。
まぁ女子と違って男の水着選びなんてそう時間を要するものでもない。
適当に決め、ちゃっちゃと会計を済ませていると、不意にメッセージが届く。
よく見るとグループだ。
メンバーは俺と日奈美と美江の三人。
送られてきたのは2枚の画像だった。
「どうかな?似合う?」
なんと試着室で撮られた水着姿の日奈美と美江それぞれの写真だった。
「控えめに言って最高過ぎる。」
即レスである。
神様ありがとう!今僕は幸せですっ!
「シスコンキモイ...。」
4回目頂きました!
「それで...?」
「ん?」
4回目のシスコンの後、続けて送られて来るメッセージ。
「その...」
言い淀...書き淀んでいるのか歯切れが悪い。
「なんだ?どうしたんだ?」
そう返すと、日奈美からやれやれみたいなスタンプが送られてくる。
本当なんなんだってばよ...。
「わ、私は...?」
言われてやっとその歯切れの悪さの意味に気付く。
「その、」
「うん...。」
「よく、に、似合ってると思う。」
そう送るとなんだか照れくさくなる。
日奈美にはなんの気なし言えるのに...な。
なんだか顔の辺りが熱くなってきたところで、
「キモイ。」
と短文で返された。
「えぇ...。」
ちゃんと褒めたつもりだったのに...。
女心難し過ぎませんかね...?
でもその後に合流した美江はなんだか機嫌が良さそうで。
買った水着が入った袋を抱える姿はどこか誇らしげだった。
本当女心はよく分からないしこれからもわかる気がしないわ、、、
でも本人がなんか嬉しそうだしいいかぁ...。
そんな事を思いながら、引き続き二人との買い物を楽しむのであった。




