連絡先交換は計画的に
「なんだ、あいつ。」
目を覚ましたら隣に可愛い女の子が寝ててそれを見た天使にひっぱたかれました。
あ、なんかまたラノベのタイトル……っぽくないな...どんなストーリーだよ。
あの後、志麻に甲斐甲斐しく(?)お見舞い……と言うよりは介護だなあれは。
された後、気が付いたら昼まで寝ていたらしい。
え、まさかあのうどんに睡眠薬入ってたとかないよね?
え?無いよね?
「おい、起きろ志麻。」
「もう……何?悠太……大胆なんだから……。」
「なんの夢見てんだよ...。
兎に角起きろ!」
ヨダレを垂らしながら気持ち良さそうに眠る志麻にチョップする。
「痛いっ!?ぴえん……。
悠太に乱暴されたー……初めてだったのに...私傷物になっちゃったー。」
「何言ってんだこいつ……。」
マジトーンである。
「でも私悠太なら良いよ……?」
でもその返しに怯まず、はたまた寝ぼけて何を言われてるかもよく分かってないのか頬を染めながらそんな事を言う志麻。
「バカ言ってないで起きろ。」
もう一度チョップする。
「うぅ……旦那がDVだぁ……。
でも好きぃ……。」
「誰が旦那だ誰が……。
てかお前なんか盛っただろ……?」
「だって悠太病人なのに全然寝ようとしないんだもん。」
「……本音は?」
「悠太が寝たら一緒に寝れる!ひゃっほ……痛いっ!?」
有無を言わさずのチョップ。
「全く油断も隙もない……。」
「でも大好きだよ?」
「でもじゃありません...。」
全く……迂闊に気を許したらこれである。
「つーかお前いつまで居るつもりだよ……。 」
「今日から一緒に暮らしても良い?」
「帰れ……。」
「ぴえん……。」
まぁでもお世話になったのは事実だ。
一応志麻にはお礼を言って昼からは学校に行かせた。
「なんか、どっと疲れたな……。」
そのまままた眠りに付く。
なんだかんだ愛されてる……か。
確かに今はそうだし、現世でだってそれなりに恵まれていた方だと思う。
でも、だ。
そんな恵まれた環境がいつまで続くのかなんて誰にも分からない。
もしかしたらこれからも続くかもしれない。
でも明日急に終わるかもしれない。
幸せであればあるほど、それを失うのが怖くなる。
だから依存するのが怖い癖に、また結局依存してしまう。
そしてまた勝手に傷付いて。
そんな馬鹿みたいな事を何度も繰り返して。
俺も大概拗らせてんな……。
疲れてんのかも…。
思いながら目を閉じる。
「お兄ちゃん?」
「んっ……日奈美か。」
目を覚ますと窓から夕日が差し込んでいた。
ベッド横にはしゃがみ込んで俺の顔を心配そうに覗き込む日奈美の姿が。
「よく寝れた?体調はどう?」
「ま、朝よりは全然平気だよ。
心配かけたな。」
「本当だよ。
最近のお兄ちゃん、無理し過ぎなんだから。」
少し拗ねた表情の日奈美。
「ごめんごめん、ちょっとは頼れるお兄ちゃんになりたかったんだけどな。」
そう言って頭を撫でてやると、日奈美は気持ち良さそうに目を細める。
「お兄ちゃんは無理して立派になろうとしなくても良いんだよ。
私にとってはそのままで充分大好きで大切なたった一人のお兄ちゃんなんだから。」
なんて満面の笑顔で言う日奈美。
あれ、俺もしかしてプロポーズされた?もう妹ルートでゴールでいいよね?駄目?駄目かぁ……。
と、そこで電話が鳴る。
相手は瑞穂だ。
珍しいな……。
と言うかまだ俺の番号知ってたのか...。
「あ、やっほ、悠太。
サボりたいからって仮病使ってんのー?」
電話口から聞こえてくる声は相変わらず活発で軽い感じだった。
「アホか、普通に風邪だし熱もあったわ。」
「え、そうなんだ。
だってさ、ハルたん。」
「誰がハルたんよ、馴れ馴れしい。
コホン、三澄悠太君、体調はどう?
ごめんね、無理をさせちゃったかしら……。」
そう言って電話を引き継いだのは生徒会長だ。
「あー、いやいや普通に俺が徹夜ばっかしてたからだし今はだいぶ体調も回復したよ。」
「それなら良かった。
それでね、良かったらその……連絡先を教えてもらっても良いかしら?」
「え?連絡先?あんまり見ないけどパソコンのメアドで良い?あんまり見ないけど。」
「遠回しに断ってない!?
それになんでそこ二回言ったのかな!?」
古来より生徒会の人間、風紀委員の人間、並びに教師陣と関わるとロクな事が無いと言う話をよく聞くし……。(2回目)
「だ……だってほら、手伝ってもらう条件は私があなたの勉強を見るって事だったじゃない。」
「あー、言われてみればそんな話をした気がする。」
「これ絶対忘れてたわよね!?」
「あはは忘れてなんかないですよー。
ちょっと脳内からフェイドアウトしてただけですってば。」
「それを忘れてたって言うのよ!?」
「まぁまぁ悠太、教えてあげなよ。
今日もずっと心配過ぎて手が付かないみたいだからこうやって代わりにあたしが電話した感じだし。」
「べ、別に仕事が手に付かないって程じゃ……。
まぁその……心配はしてたけど……。」
「あ、じゃあさ!ハルたんおねだりして見たら?
ねぇ……教えてくれなきゃヤダヤダ〜……。
って。」
なんだこのASMR!クソ……こいつは絶対おふざけで言ってんのに元が美少女で声も可愛いから不覚にもドキドキしてしまったっ……!
「お……教えてくれないの……?」
いや、やるんかい!?
だぁぁぁ!そんな切なげに直接情に訴えてくるような声で言われたら断れる訳ないだろう!?
「教えるから!教えるから! 」
「良いの!?良かった。」
こうして俺のスマホに生徒会長の連絡先が追加される事となった。
「あ、あと良かったら……勿論、体調が回復したら……だけど今度の日曜日勉強会しない?」
「え?あぁ生徒会メンバーとですか?良いですけど。」
美少女に誘われても勘違いしない男、それがこの俺三澄悠太である。
実際一人でやる勉強には限度があるし、生徒会メンバーとの勉強会は願ってもないチャンスである。
「え、いや……その二人で、なんだけど。」
ほ?
「ま、また連絡するから!」
「わぁお、ハルたんってば大胆。
ま、悠太考えといたげて。
そいじゃお大事に〜。」
「お兄ちゃん?」
「ほ?」
「お兄ちゃん……?」
ほぉぉぉ!?
と、言う訳で急遽生徒会長との二人だけの勉強会が決まったのだった。
ちなみに……。
日奈美が皆から差し入れを預かって来たらしく……。
まず宏美からは今日の分のノート。
これは普通に助かる。
美江からはのど飴。
袋には無理せんでね、お大事にとマジックで書かれていた。
これも普通に嬉しいな。
で、千鶴さんからはエナジードリンクが箱で……。
「これ持って帰る為に千鶴先生がタクシー代出すって言ってくれたんだけど...流石にそこまでしてもらうのは申し訳ないから断ったよ...。」
うん...あの人ならやりかねない。
それはそれとして一緒にムチも入ってたけど入れ間違えだよね……。
茉里愛からはスポーツドリンク。
これも助かる。
絵美と蘭ちゃんからは……サラダチキン……?
え、何これ……。
お見舞いにサラダチキン……?
※本当にチュールを買おうとした絵美を引き止めてサラダチキンで妥協させた蘭の陰ながらの苦労と努力を悠太は当然ながら知らない……。
瑞穂からは……首輪?いやこれチョーカーだよね……?
秋名たんは大手フライドチキンチェーンのサンダッキーのフライドチキンを直接持って来た。
こんな脂っこい物病人には無理だっつの……。
一緒に来た智成からはパック雑炊。
流石智君出来る男である。
それだけでもイケメンなのに千鶴さんのお見舞い品も自分から進んで持って家まで運んでくれるあたり本当感謝しかない。
ちなみにリオからは何も無かった。
あいつまだ怒ってんのかな……?




