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彼女にフラれた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう  作者: 遊。


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トラウマになる覚悟。

「ゆ、悠君!」


「え、美江?」


廊下を出た所で、美江が呼び止めてくる。


「悪い、俺急いでて……「さっきの人ならあっちに走っていった!」え?」


「だから、早く!」


「お、おう。


ありが「お礼は後で良いけぇ早く!」お、おう!」


やっぱり今度ジュース奢ってやろ。


そんな事を考えながら、また走る、そして走る。


「宏美!」


「み、三澄君……な、なんで!」


宏美に追いついて肩を掴むと、彼女はまだ泣いていた。


「離してっ!」


「待てって、どうしたんだよ?」


「別に……なんでもない!」


「なんでもないならなんで泣いてんだよ?」


「これは……その、目にゴミが入っただけだから!」


「涙出た時定番の言い訳じゃないか。


それで泣いてる奴がそんなグズり声で喋るのかよ。」


「だ、だからそれは……!」


「それにお前、今日は朝から全然絡んで来なかっただろ。」


「良いじゃんそんな日があっても。


私は元カノなんだから。


普段鬱陶しそうにしてる癖に...こういう時だけ絡んでこないでよ!」


「うっ……。」


一応正論だ。


「で、でも今日のお前ずっとそっぽ向いてたよな?


普段なら周りが騒がしかったら文句の一つくらい言ってくるだろ。」


「何……?文句言われたいの?三澄君ってドMだっけ?」


「違うけど!?」


なんかどこからともなく舌打ちが聞こえた気がするが断じて違う!


「じゃあ何?」


「いや、そのいつもと違うとなんか調子が狂うって言うか……。」


「元カノなのに……?」


「ま、まぁそうだけど……。


で、でも一応その隣の席だし……一応友達……だし? 」


「他の子と随分扱いが違うけどね。」


「そりゃお前……別れてすぐでその……気まずいだろ...。 」


「そう……だね……。 」


「え、ちょっ……!」


また泣き出してしまう宏美。


「ごめんね……ごめんね……。」


そう言う声は本当に弱々しくて、俺は言葉を失う。


「私は別に……ゆ、悠君を傷付けたかった訳じゃないの……。


別れたけど嫌いになった訳でもないし、今でも幸せになってほしいって思ってる!」


「っ……!」


久しぶりに彼女の口からその呼び名を聞いた気がする。


いや、期間自体はそう長くない。


でも俺の中で随分遠いもののように思えていた。


「私のせいだよね……?恋愛をしたくないって思ったの。」


「そ、それは……。」


「昨日聞いちゃったんだ。


生徒会長と話してるの。


その時はよく聞き取れなかったしもしかしたら聞き間違いかもって割り切れた。


でもずっとモヤモヤしてた。」


「だからそっぽ向いてたのか……。」


「うん、でも今日直接聞いて……頭真っ白になって……。


最近はさ、今日みたいに色んな人に囲まれてたしすぐに新しい人を見つけるだろうって思ってた。


まぁ幸せになって欲しいしちょっと口出ししたりもしたけどさ……。」


「あぁ……志麻と瑞穂な。」


「うん……誰を選ぶかなんて悠君が決める事なのにね。


元カノの私にそんな権限なんて無いのに。


馬鹿だね、私。


幸せになって欲しいなんてどんなに思っても願ってみても...結局私はあなたのトラウマにしかなれないのに。」


「っ……! ?」


実際そうだ。


俺がこうなった理由の一端が彼女にあるのは確かで、それを否定するなんて出来ない。


「私が……最初からあんな思わせぶりな事言わなかったら……最初から今までずっと友達のままだったら良かったのにね。」


こんなにも弱々しい彼女の姿を見るのは、正直初めてだった。


いつだって自由気ままで、散々俺を振り回して。


でもなんだかんだメッセージではちょっと申し訳なさげにしてみたり何処か憎めない奴だった彼女。


俺の前では泣いてる姿なんて一度も見せなかった彼女だが、見てないところではこうして傷付いたり泣いたりしてたのだろうか。


結局俺はそれに気付いてやれなかった。


誰よりも大事にしてるようで、実際には必要な時に手を差し伸べる事さえ出来なかった。


きっとその地点で俺達の関係は破綻していた。


「ごめんね……ごめんなさい。 」


「ばーか。」


どちらにしろ今更謝られた所で何も変わらない。


俺達の関係はもうそんな所まで来てしまった。


なら。


「確かにお前のせいって言っちまえばそうかもな。」


「っ……! 」


辛そうな顔をする宏美。


「でもな、俺はなんだかんだ今の生活にも満足してんだよ。


前に聞いたよな?今幸せかって。


あぁ、今の俺は幸せだよ。


恋愛なんて無くてもな。」


「そ、そんな事……」


「俺のトラウマにしかなれないだ?


でもお前はそれを分かった上でその決断をしたんだろ?


自分なりに考えて考えて、その上でこうするって決めたんだろ?


なら後悔なんかしてんじゃねぇよ。」


「で、でも……。」


「でもじゃねぇ。


生憎俺はトラウマの引き出しには定評があるんだ。


今更一つや二つ増えた所で大した事ねぇっての。」


「い、いやいやその話は聞いた事あるしだからトラウマになりたくなかったと言うか……。」


「ばーか。


肝に銘じとけ、別れるって決めた地点で相手のトラウマになるのは確定なんだよ。」


「そ、それはそうだけど……。」


「その、俺だってお前には幸せになってほしいんだよ。」


「っ……! ?」


「だからいつまでもつまんねぇ事考えてないで幸せになりやがれ。


俺も勝手に幸せになるからさ。」


「そっか……そうだね……。」


彼女の目は未だに暗い。


「あ、あとそのちょっとずつだか慣れるからさ。


その……改めて友達になってくれるか……?」


「っ……!?」


俺の言葉に彼女は一度驚いた表情を見せた後。


「仕方ないなぁ……。」


涙を拭って、そうイタズラっぽく笑うのだった。


そんな笑顔は、あの日自由気ままに俺を振り回した彼女と被って見えた。






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