ストーカーとスカートとカーストと
おっす、おら三澄。
ちょっと前まで35歳だった筈がいつの間にか半分近くの17歳になってたちょっとストーカーがいるけど普通の高校生っ!きらん。
そんなおらの最近の悩みは試験勉強!なんかストーカーに後をつけられてるけど、そんな事より今日は世界史の勉強を頑張るぞっ!
そう、俺は今!ごく普通の高校生!
ストーカーはいるけど勉強に、友情に、青春に全力の高校生!
試験終わって落ち着いたら部活とかもしてみようかしらん。
ストーカーいるけど。
どうでもいいけど音感ない人を音痴って言って運動神経悪い人運痴っていうのなんだろ。
ほんとクソ、運痴だけに。
文化系なら文芸部とかかなぁ。
現世では漫画研究会に入ってたけどなんであんなうるさいのかしらん……。
カースト上位カップルが我が物顔で使ってたからだわ……。
あれは一回行ったらもう良いやってなったー。
あ、ストーカーいるな。
とりあえず他にどう言う部活があるのか見てみようかな。
ストーカーとかいたら嫌だなぁ。
ははは、無い無い、俺やぞw
「いい加減そろそろツッコんでいいですかね!?」
「まぁ!朝から突っ込むだなんてお下品な。」
「悠太さん、ちょっと表に出てもらって良いですか。」
わぁ、そんなの初めて言われた。
告白かな、え?違う?知ってた。
今俺はリオと二人で廊下を歩いている。
さっきの宏美との話や、頬のガーゼの話なんかをする為に休憩時間を利用してどこか人気のない場所に移動しようと話したからだ。
「それより!ストーカー!」
「スカート?そうだな。
ショートパンツも捨て難いがロングスカートも良いな。」
「喧嘩売ってるんですかね……?買いますよ……?」
ひーん怖いよう……。
「……あぁ、なんか朝からいるぞ?」
「いや反応うっす!?
なんでそんな平気な顔してるんですか!?」
ってもストーカーて、なんだ志麻か。
あれ、志麻じゃない…………いや志麻も居るな。
件のストーカーのその更に数センチ後ろに。
あ、なんかむっちゃストーカー睨んでる……。
「なんだロリオ、お前ストーカーなんか居たのか。」
「勝手にフランスの女流ピアニストに見せかけた変なニックネームで呼ばないでください。」
「いや、そんなの知らないし普通に悪口だが?
」
「なおタチ悪いわ!?」
それにしてもストーカーかぁ。
あ、カーストも並び替えたらストーカーになるのか。
「そろそろ真面目に考えてもらえませんかね!?」
「ははは、だって俺やぞw無い無いw」
「実際いるじゃないですか……そこに。」
呆れ顔でリオが指差すと、ストーカーは顔を引っ込めた。
ちなみに志麻は顔を……引っ込めない!
むしろ得意げな顔をしている。
いや、別に勝ち負けとかじゃないからね……?
「あの人に見覚えとかないんですか?」
「あぁあるぞ、毎日100件はメッセージして来るしな。」
「志麻さんの事じゃないですよ!?」
あー……やっぱそれだけで分かっちゃうかー……。てかほんと100とか200とかなんなの、、まぁ通知切ってるし良いや←
それにしても……だ。
実はもう一人のストーカーにも見覚えはある。
しかもあり過ぎるほどに。
よーし、ここは一つ。
ダルマさんが……気にして無いように一歩、二歩と歩き出し、ストーカーがまた顔を出したタイミングで、
「転んだッ!」
「ひゃぁっ!?」
勢いよく振り返る。
ストーカーは思いっきりビビって、尻餅をつく。
「あいたたた……。
わっ……!?」
「何してんの?」
そのまま近付くとそいつは慌てて立ち上がって逃げようとするが、腰が抜けたのかすぐに動けないようである。
「はい、たまちゃんが次鬼ね。」
「全然似てないしキモイです。」
俺のどこぞのおかっぱ小学生声真似はリオ判定不合格でした。
だからってそんなストレートに言う必要なくない?くすん。
それはそれとして俺がストーカーをたまちゃんと呼んだのにはちゃんと訳がある。
「何やってんだよ、玉井。」
元幼馴染さん、玉井絵美。
お下げ髪の陰キャ女子と言った彼女は、俺がそう詰め寄ると、気まずそうに目を逸らす。
まさか元カノさんだけじゃなく元幼馴染さん達までいるなんてほんとなんなのかしらん……。
「お前に付け回される覚えとかないんだけど。」
そう、中学で再会した玉井絵美は川崎同様俺に対する態度が激変していた。
話しかけようとしても無視されたし、近付く事さえ拒まれていた。
そんな彼女がストーカー?
何かの冗談だろ。
「べ、別にわ、私はた、ただ通りすがった、だけ……。」
「通りすがっただけのやつが物陰に隠れるのかよ。」
「それは……。」
「やっぱり知り合いなんですね。」
「まぁな、一応元!幼馴染だし。 」
「っ……!」
なんでそんな辛そうな表情するんだよ……。
今のこの関係を望んだのはお前らだろうが……。
そう思って睨むと、睨み返された。
「誰のせいで元になったと思って……!」
そう言う声にはありありと怒りが浮かんでいた。
「ストーカーしといてそんな怒られても……。」
「違っ……!そんなんじゃない!
ただその……声を……かけようとして……タイミング見計らってて……なんか気まずくて……ずっと迷ってたら……その。」
「うんうん分かった。 」
ニッコリと笑いながら、俺は絵美の肩にそっと手を置く。
「ひゃっ!?ちょっ!?悠太!?」
「一緒に警察行こうか。」
「嫌だけど!?」
うーんダメかぁ……。
いい感じにまとめられたと思ったのに……。
「まとめられるどころか最悪ですよ……悠太さん……。」
リオにも呆れられた。
「っ……なんで……その……会いに来てくれなかったの!」
「なっ……!」
「ずっと……待ってたのに!
私も……直也も……。」
そう言い捨て、走り去る玉井。
でも俺は追いかけられない。
「悠太さん……。」
「良いんだよ。」
やっぱり俺のせい……なんだよな。
玉井は本当に待っていたのだろう。
小さい頃から家族ぐるみで、本当の兄妹みたいにいつも一緒で。
おままごとに付き合わされたり、あの頃は全く意識なんかしてなかったが、お風呂に一緒に入ったりもした。
マセたクソガキみたいに結婚の約束だってした。
でも小学生が別になると驚く程会わなくなって。
あんな約束、嘘だったんじゃないかって思えるように、俺たちは遠く離れてしまった。
「悠太さん!」
これで良いのか……?
本当に……?
いいわけないだろ...!
俺は駆け出す。
この世界ではやりたい事を全部やるって決めたじゃないか!
「絵美!」
思っていたより遠くにはいっていなかったようで、すぐに追いつく事が出来た。
「今からじゃ駄目か?」
「っ……!?」
「いや、今更なのは分かってる。
でもさ、俺もその、後悔してたから。」
「……今更遅いし。」
「だからその…… 」
「おいおい、ふざけんなよ?」
うわぁ……またかよ……。
俺と玉井が話しているのを見た川崎が声をかけてくる。
そして胸倉を掴んでくる。
「調子のいい事言って絵美を誑かそうとしてんじゃねぇぞ……。」
その目は本当に怒っている目だった。
いつも俺を殴っていた時は、苛立ちの中に何処かそれが解消できて気分が良くなったような物があった。
でもこれはそうじゃない。
ガチなやつだ。
「そうじゃないって。」
「ならなんだってんだよ!?」
また殴られる。
「ちょっ……川崎!」
「絵美は黙ってろ!」
「っ……!」
ビクリと肩を震わせ、玉井は黙る。
「ほらな……言った通りだ。
すぐ手を出す。」
「っ……てめぇ!一体何だってんだよ!?」
「殴りたいなら幾らでも殴れよ。
それで気が済むなら好きなだけやれ。」
「っ……!頭おかしいんじゃねぇの!? 」
また殴られ、そしてまた殴られる。
「も、もうやめて!」
耐えきれなくなったのか玉井が叫ぶ。
「もう……やめてよ……こんなの……見てられない。」
今にも泣きそうな顔で絵美は川崎を睨む。
「っ……!?」
それを見た川崎が辛そうに口ごもる。
「なんでだよ……お前だって……。」
「そりゃ……私だって悠太には怒ってた!
でもだからって……こんなの違う!私がしたかったのはこんな事じゃ……。」
「後に引けなくなったんだろ。
一回手を出して。
俺が抵抗しなかったから気分が良くなったんだよな。」
「っ……!」
「良いよな、やるだけってのは気分が良くてよ。」
「っ……誰のせいだと思って!」
「いやお前だろ……。」
「お前が会いに来なくなって……こいつがどんな思いしてたのか考えた事あったのかよ!?
毎日寂しそうで……俺じゃ力になれなくて……!
なのにお前は!」
「あぁ、何もしなかった。」
「だから!」
「何も言われなかったからな!」
頭突きする。
「殴る蹴るばかりで!そんな話一度だってしようともしなかっただろうが!
気付いてくれなきゃヤダッてか?かまってちゃんかよ!」
お返しとばかりのボディブロー。
「ぐぅっ!?
な...なら言えば何かしてたのかよ!?」
「知るかそんなの。
実際にそうならなかったのにもしもの話なんかしたってしょうがないだろ!」
「だったら!」
「そんなあったかどうかも分からない未来とか過去は変えられないけどよ!
でも!今なら幾らでもどうにか出来んだろうが!」
今だから出来る事がある。
今しか出来ない事もある。
現世の世界では明らかに遅すぎていた。
いつからか全く絡んで来なくなった川崎とは当然疎遠になって会う事は無かったし、玉井とだって一言も口を聞かず疎遠になった。
でも、今は……今なら違うだろ!
「悠太……。」
「え、絵美こんな奴の話なんて……」
「分かった。
私、悠太を信じるよ。 」
「なっ...絵美!?」
「私、暴力振る人嫌い……。」
軽蔑した目で川崎を見る絵美。
「っ……それは……だから……。」
「私の為だって?そんな事頼んでない。」
急に強気になった絵美にタジタジの川崎。
「だから……そのちゃんと仲直りして。」
「っ……それは……!」
言い淀む川崎。
睨む絵美。
「その、悠太。」
言われて仕方なくと言った感じで川崎は俺に目を向ける。
「悠太さんだろ?「悠太?」はいっ!調子に乗りました!」
思いっきり絵美に睨まれた、、
「んっ。」
仕方なく俺が川崎に手を差し出すと躊躇いがちに……叩いてきやがった!
「てめぇ!?」
「やっぱり無理だ!こんなヤツと仲良くなんて!」
「こっちだって願い下げだ!」
そんな俺達を見て絵美が肩を竦める。
「まっ、今は良いか。
悠太!また宜しくね!」
そう言って腕にしがみついてくる絵美。
元幼馴染、参戦!!
あれ、なんか聞いた事あるテロップがでた気が する。
「ねぇ悠太……?私居るの忘れてないかな?かな? 」
おもちゃの剣を引きずりながら志麻が聞いてくる。
え、おもちゃだよね?
鉈じゃないだけマシか……?
「志麻、ストーカーは自分から存在を主張しないんだぞ……?」
「だって悠太が全然気付いてくれないんだもん……。」
「気付いてましたけどね?」
「気付いてたの!?
それって放置プレーって事!?」
「違いますけどね!?」
「悠太……?この人は?」
「知らないのか?お前の先輩だぞ?」
「え?同学年だよね?」
そう言う事じゃないんだよなぁ……。
まぁ言わんとこ……。




