元カノVS元カノ
一時間ほど保健室で休ませてもらったものの、なんだか余計に疲れた気がするのは気のせいかしらん、、。
「悠太さんって勉強出来るんですか?」
自分の席に戻り、そんな事を思いながらため息を吐いていると、リオがそう声をかけてくる。
「自慢じゃないが今まで100位より上に行った記憶はないぞ。」
「本当に自慢じゃないですよ!?」
「大体勉強なんて大人になったら大抵役に立たないからな。
海外に行かないなら英語なんていらないし、数学なんて足し算引き算掛け算割り算が分かってれば充分だろ。」
「うわ、出た。
勉強嫌いの言い訳。」
事実としてそう思ってはいるものの、あの頃もっと頑張っていたら色々変わってたのかもなぁとも思わなくもない。
「でも、良いんですか?
来週期末試験じゃないですか。」
「は?」
き……まつ……し……けん?
「期末試験!?」
「もぉー悠太さん朝のホームルームちゃんと聞いてなかったんですか?」
正直全然記憶にない、、
「そりゃ、今は学校に通ってんだから期末試験くらい普通にありますよ。」
全然考えてなかった……。
「ってもなぁ...。」
現役の時だって成績が良かった訳でもないし、まして必要にならない知識なんて他の知識にもみ消されてしまう。
と、言う訳で……だ。
今の俺はほぼ知識も経験も無しに高校で二年目と言う扱いになっていると言う現状なのだ。
「……ちなみにリオって勉強出来るのか……?」
「私はまぁ……天使として幼い頃から教育を受けているのでそれなりには出来ますよ。」
「幼い頃、ね……。」
「何が言いたいんですかね?」
ひぃ……!?笑顔が怖い!?
そもそも予備知識が無い俺には今の授業についていくのさえままならない。
「コホン、それに、もし赤点だったら夏休みは補習らしいですよ。」
「っ……!?」
「あちゃー……それも聞いてなかったんですか。」
「期末試験……。
これは過去最大級のピンチだ……!」
「ちょっと大袈裟過ぎませんか……?」
「いや……待てよ?」
期待を込めてノートを開く。
が……。
「ほぼ落書きじゃねぇか!」
マトモにノートなんか取ってなかった。
思わずそのノートを地面に投げ付ける。
この馬鹿野郎……!
あ、俺だったわ……。
「これに関しては私も力になれそうにないですね……。」
申し訳なさそうにリオが言う。
と、なると……。
シスターズはそもそも学年が違う。
秋名たんは……「ん?ノート?」
秋名たんにノートを見せてもらった、もらったのだが!
字が汚くて読めないっ!
うーんなら…智成ならどうだろう。
「僕ので良ければ全然貸すよ!」
そして受け取ったノートはきちんとまとめられている。
「流石智くん!よっ!イケメン!」
「いやぁ……ははは。」
照れ臭そうに顔を赤くする智くん。
見た目はカッコイイワイルド系イケメンなのに照れ屋で小動物的な可愛さまであるなんて本当智くんは智くんである。
「ねぇねぇ悠太!私のは!?」
いつの間にか俺の教室に来ていた志麻が、ノートを突き付けてくる。
「いや、良い。」
即答である。
コンマ一秒とか自分でも驚くほどの即答である。
「なんで!?」
って言うか……これそもそも授業ノートじゃないし……。
表紙にカラフルな蛍光ペンで【悠太への愛情ノート】と名付けられたそれは、禍々しい(俺にはそう見える)オーラを放っていた。
【好き 大好き ずっと一緒にいたい 早く声が聞きたい 電話したい しても良いよね? 今何してるの? 会いたい 迎えに来て】
強引に突き付けられたので渋々開こうとして……。
そんな言葉がびっしりと端から端まで書かれているのがチラッと見えるとすぐにノートを閉じた。
「えへへ、見られちゃった。
ちょっと恥ずかしいけど悠太になら見られても良いよ?」
いや、これは本当に恥ずかしがってもらえませんかね!?
出来れば見たくなかったよ!?
「あー……ごめん悠さん。」
と、そこで智成が謝ってくる。
「え?どうしたんだよ?」
「さっきまでの話を聞いてたクラスメイトの子に私にも貸してって言われて断れなくて……。」
智成の目線の先を見ると、さっき智成が見せてくれたノートを黄色い歓声を上げながら見ている数名の女子達の姿が。
流石のイケメンぶりである……。
しかし困った。
他に頼れる奴がいただろうか。
もう最初から担任の綱岡先生に相談するか……?
いや、それは最終手段にしよう……。
ほぼ何も分かりませんとか言ったら何言われるか分かったもんじゃない……。
いや、言われるだけならまだ良いがされる可能性も捨てきれない……!何をとは言わない、怖いから……。
と、そこで。
「ねぇ、人の机の近くで騒がれたら迷惑なんだけど?」
さっきまでそっぽを向いていた宏美が文句を言ってくる。
「あ、ごめんね。
すぐ戻るから。」
自分のせいじゃないのに律儀に頭を下げる智成。
本当、性格までイケメンである。
それにしてもだ。
「さっきまでそっぽ向いてた癖になんだよ。」
皮肉に皮肉で返す。
「別に。」
またそっぽを向かれる。
「え、なんか感じ悪っ。」
それを見た志麻が呟く。
「は?」
それを耳ざとく聞き付けた宏美は、志麻を睨む。
「感じ悪いって言ったの。
聞こえなかった?」
「私が感じ悪いならあんな狂った物堂々と教室で広げさせるあなたは激重勘違い女でしょ?」
「げ……か……?」
返された言葉を受け止めきれなかったのかちゃんと復唱出来てない……。
「あ、あなた、良く見たら悠太の元カノじゃない……!」
たっぷり30秒くらい沈黙した後、志麻が思い出したように叫ぶ。
「……そうだけど?それが何か?
それを言うならあなただってそうでしょ?」
「わ、私はただの元カノじゃないし!今は友達だし!」
それを聞いた宏美は一瞬驚いた顔をした後で俺を睨む。
え、今俺睨まれる理由あった……?
「それを言うなら一応私も……!友達って事になってるんだけどね?
なんでこんなに扱いが違うんだろね?」
うっ、恨みがこもってる……!?
「それは!勿論あんたなんかより私の方が愛されてるか「いや、それは無い。」
運命の赤い糸で繋がれ!「いやそれは無い(2回目)」
ぴえん……。」
大事な事なので2回言っておきました。
「大体、普通の友達にあんな物送り付けるなんて頭おかしいんじゃないの?」
それは本当にそう思う……。
「おかしくないし!
これは愛情表現だし!」
「だからどう考えても普通の友達に対しての愛情表現じゃないって……。」
それは本当にそう思う……。(2回目)
それよりこの二人なんでこんなに仲悪いんだろう……。
前世では当然ながら会う機会なんて無かった筈だが……。
ん……?てか待てよ?
「お前……さっきコイツの事よく見たら元カノじゃんって……。
コイツのこと知ってたのか?」
「え?そりゃ知ってるでしょ?」
うん、さも当然なように言わないで?
分からないから聞いてるんだよ?
「だって普通好きな人の関わってる人も調べるでしょ?」
そうかぁ……それが普通かぁ。
普通になっちゃったかぁ……。
「いや……全然普通じゃないしそんなのが普通だったら世の中ストーカーだらけだし……。」
宏美が呆れた表情で返す。
それは本当にそう思う……。(3回目)
ちっとも嬉しくない記録更新である。
「本当にこんなのと友達続けるつもり?」
今度は俺の方に視線を向ける宏美。
「いやだからそこはお前に……」
「干渉される事じゃないって?
コイツには干渉しといて?」
「いや……だからそれは……。」
言われて思う事はいっぱいあるが、上手く口に出せない。
そうしてる内に、宏美がため息を吐く。
「まぁ良いか。
はい。」
「え?」
言いながら宏美が差し出してきたのはノートだった。
恐らく全教科分ある。
「それ、貸してあげる。」
「いや……それは……。」
受け取りはしたものの、そのまま借りるのはやっぱりはばかられる。
「要らないなら捨てれば?
そこのお友達様に重たいノートでも見せてもらえば良いじゃん。」
そう言って宏美はまたそっぽを向く。
正直気は乗らないものの、とりあえず開いてみる。
とても綺麗な字でまとめられていて、横にはちょっとした解説まで付け加えられている。
むちゃくちゃ見やすい。
これなら俺でも活用出来そうだ。
「一応、礼言っとく。」
「一応……どういたしまして。」
そっぽを向いたまま、宏美がそれに答える。
彼女の表情は見えなかった。




