フォークダンスはカオス満載!
休憩明け。
「はい!後半戦!始まって参りました!
現在白組優勢!紅組も頑張ってください!
さて!休憩明け1発目の種目はー!
フォークダンスだ!」
「うぉぉ!」
「えぇ…。」
絵美の宣言で非モテの歓喜の声数割、めんどくさそうな奴らのぼやき声数割、興味無さそうな奴らのため息。
様々な声や思いが飛び交う。
「こちらの競技は保護者の方々も是非御一緒にどうぞー!」
絵美に続き咲夜が言う。
それを受けて、何人かの保護者や関係者が入場門に向かっていく。
そして入場し、各自持ち場に着いて開始のBGMを待つ。
「志麻、お前なんか裏工作しただろ…。」
「してないよ!?」
偶然か必然か1番最初の相手は志麻だった。
「そりゃ悠太の1番の相手は私が良かったしどうせなら誰にも汚されてない悠太の手に触りたいし触れたら手洗わないって思ったけどそんな事しないよ。」
「言い訳してる筈なのに余計に怪しく聞こえてくるのは何故かしらん…。
あとちゃんと手は洗いなさい…。」
「えーやだ!」
「俺も会長に手袋借りようかな…。」
「そんな!酷い!ぴえん…。」
「冗談だよ…。」
「ではでは!ミュージックスタート!」
絵美が参加者側の持ち場でマイク片手に叫ぶ!
同時に聞き慣れたBGM、オクラホマミキサーが流れ始める。
早速志麻と踊り始める。
横に並んで所定のポーズでお互いの手を握り合い、音楽に合わせてステップを踏む。
そして回転し次の人と交代!と見せかけて志麻は変わらない!これには俺の次の人も志麻の次の人も困惑の表情。
「おい…志麻…。」
「何?」
しかもこの娘、なんの悪びれの様子もないのである。
むしろ何か問題でも?と言う感じである。
「いや、問題しかないわ…。
とっとと変われ…。」
「ぴえん…!
そんな!あぁ!悠太!あなたはどうして悠太なの!」
「はいはい…あなたは退場ね…。」
「あーん!ご無体な!!」
呆れ顔のハルたん会長に引きずられていく志麻。
やれやれ…相変わらず志麻は志麻である… 。
まぁ文字通り踊った相手は最初で最後まで俺だったんだし志麻的には満足だろう…。
そう思っとこ…。
さて、そんな志麻を連れていったハルたん会長は宣言通り手袋を付けている。
踊ってる最中は、ハルたん会長と当たった男子が落胆の表情を浮かべていた、、
落ち込むな…、きっとその内いい事あるから…。
蘭ちゃんは宣言通り素手でやってるが、如何せんパワーが有り余り過ぎて相手がついていけてない…。
あっ!アイツ!日奈実と踊ってやがる!
角森が嬉しそうに日奈実と踊る姿が目に入りモヤモヤする、いや殺意すら芽生える…!
「あいっかわらずのシスコンですねー…。
周りばっかり見てないでちょっとは自分が踊ってる相手の事も見たらどうですか…?」
「なんだロリ天使か。」
「なんだとはなんですか!
あとロリ天使じゃありません!」
「お前はちゃんと素手でやってるんだな。」
「そりゃそうですよ。
なんと言っても私は天使ですから!
人間の手を取り導く事なんてお手の物ですよ。
「手を取るからお手の物ってか…。」
「ちっとも上手くないですよ…。」
再び目線を周囲に向けると、今度は実に堂々と踊らずにただ横を歩いている片杉の姿が。
「あ、えっとダンスは…?」
「触らないでください。
あと近付かないでください。
セクハラで訴えますよ。」
「えぇ…」
そんな反応に困惑する者、ガチでショックを受ける者…反応は様々である。
そうこうしてる間に片杉が隣にやってくる。
「無条件で女子と踊れると非モテ男子が喜ぶ競技で高みの見物なんて、いいご身分ですね。
いえ、ゴミ分ですねゲスミ。」
「言葉だけで聞いても言い直した理由が分かったわ…。
と言うか誰とも踊ってないやつに言われたくねぇっての。」
「当然です。
会長に誰とでも踊るような安い女だと思われたくはありませんから」
「いやフォークダンスはただのダンスだしその理屈で言うと真面目にやったやつ全員安いやつじゃねぇか…。」
「理論上はそうなりますね。」
「いやならねぇよ…。
どんな暴論だよ…。」
いや、待てよ?
「まさかお前、異性と手を繋いだ事ないのか?」
「っ…!?」
「実はめちゃくちゃウブで、異性と手を繋ぐ事すらはしたない行為だって認識だったり…?」
「っっ…!?」
「…え?マジなの…?」
「そ、そんな訳ないじゃないですか!
私だって異性と手を繋いだ事ぐらいあります!」
「へぇ?誰と?」
「っ…!?
ち…小さい時に…お父さんと…。」
「あぁ…。」
「な!なんですか!馬鹿にしてるんですか!」
思いっきり背中をバシバシと叩かれる。
「痛い痛い!そんなムキになんなっての…。」
「全く…。」
ブツブツ言いながら手を突き出す片杉。
「なんだよその手は…。
慰謝料とか払わねぇからな…。」
「払わされる自覚があるんですね、流石ゲスミです。」
「流石って本来褒め言葉に使うべきだと思うんだよなぁ…。」
「それも良いですが…。
私に恥をかかせたんですから。
責任とってください。」
「いや責任って…。」
「なんですか。
私だってその気になればフォークダンスぐらい出来ます。」
「へいへい分かりましたよお嬢様…。」
「なんですかその呼び方は。
鳥肌が立ったのでやっぱり止めても良い「良いからとっととやるぞ。」っ…!?
…無理やり手を掴むなんて粗暴な上にいかにもやり慣れてる感じですね。
流石ゲスミです。」
「お前なぁ…。」
言いつつもしっかりとダンスは踊る。
そして俺とのダンスを終えると、片杉はそのまままた普通に相方の横を歩くだけのスタイルに戻る。
相変わらずだなぁ…。
本当何考えてんのか分かんない奴だな…。
「あ、次は悠さんなんだ。」
「え、智成!?」
なんと次の相手は智成だった。
「いやなんでお前そっち側…。」
「そっちの方が良いからに決まってるじゃん!」
それに鼻血を垂れ流しながらそう返すハッチーこと美紀。
「いやでも智成は男…。」
「だから良いんじゃん!」
「お、おん…。」
だから良いらしい…。
「なんだか元々全体の人数割合で女子の方が少ないらしいから」
何人かの男子は女子側にまわってほしいって会長に言われてさ。
そしたらハッチーが智にぃ!是非立候補しなよ!って。」
「あぁね…。」
脳内想像余裕過ぎて草
「だってそうじゃん!
智兄が女の子と手を繋ぎながらダンスする姿なんて見てられないし!」
これ絶対嫉妬してとかじゃないよな…。
「かと言って智兄が悠兄以外の男子と踊る姿を見てられない…!くぅっ!」
「いや…くぅっじゃないんだよなぁ…。
と言うかハッチー…こっちばっかり見てないで自分も踊りなさい、、」
「悠兄と智兄が手を取り合って共同作業だよ!?踊ってなんかいられないよ!」
「一々言い方に悪意がこもってんだよなぁ…。」
「悪意なんかじゃないよ!愛だよ!!」
「あぁ…さいですか…。」
「はーい…踊らないならあなたも退場ね…。」
「え!?今からが1番良いとこなのに!ご無体な!!」
扱いも反応も志麻と一緒で草…。
最近どうにもストーカーっぽくなってたり志麻に似てきてる気がするんだよなぁ…。
等と美紀の将来がちょっと心配になりながら…「おっと…!」
ついバランスを崩して足を踏み外し倒れそうになる。
「危ない!大丈夫!」
それを自然な流れで抱きとめる智くん。
これには周りから女子の嬌声が巻き起こる。
そして…。
「ブッハ!!」
あ、ハッチーが倒れた…。
「ちょ、あなた大丈夫!?」
救護テントに連れて行かれるハッチーの顔は大量出血に関わらず穏やかで実に幸せそうでした、、、
うん…見なかった…。
俺は何も見なかった…。
それにしても相変わらずのイケメンっぷりだな…。
不覚にもちょっとドキッとしちゃったジャマイカ…。
「…悠君ってそう言う趣味があったん…?」
なんて思ってたら順番がまわってきた美江がジト目でこちら見ていた。
「い、いや…はは、そんな事…」
そう言いながら手を指しだす。
「触らんで変態…。」
えぇ…急に辛辣じゃないの…。
「ばーか…。」
そう言ってそっぽを向き、そのままとっとと次のやつと変わってしまう美江。
あ!秋名たんのやつ千鶴さんと踊ってんじゃん!あいつあとで潰す…。
「あら、悠太君じゃない。
ってなんか随分物騒な顔してない…?
大丈夫そう…?」
次の相手はハルたん会長だ。
「あぁ、いや大丈夫です、ちょっと度重なる嫉妬で殺意芽生えただけなので。」
「それのどこが大丈夫なの!?」
おっといかんいかん…反省反省…。
「本当に大丈夫なの…?」
「大丈夫だって。」
「な、なら良いけど…。」
まだ納得言ってないような表情で手袋を外し、そしてズボンの裾でゴシゴシと手を拭く。
まぁ暑い中で手袋しっぱなしだと手汗もかくしなぁ…。
「さ、やりましょ?」
「あ、おう。」
流れるようにそのまま踊り始める。
一つ一つの動作が美しく様になってるのは流石である。
「に、二人三脚の時もそうだけど、これ近いし少し緊張するわね…。」
「そ、そうだな。」
「他の人とはそんな事無かったんだけどな。
なんでかしら…。」
少し照れくさそうにそんな事を言ってくるハルたん会長。
可愛いかよ…!
少し名残惜しそうにハルたん会長が手を離すと次は…。
「ハルたんと楽しそうだったね?悠太。」
ニヤニヤしながらそう言って俺の手を取る瑞穂。
「別に普通だろ。」
「そうかなぁ?
あ、アイツとは踊ったの?」
「アイツ?あぁ…。」
瑞穂が目を向ける先にはアイツこと宏美の姿が。
ちょうど輪の反対側で踊る彼女は、こちらと目を合わさずにただ作業のようにダンスを続けている。
「ま、あんだけ離れてたら踊ってるわけないか。
でもさ、これって偶然なのかな?」
「…何が言いたいんだよ?」
そう聞きつつ頭では分かっていた。
真偽は定かではないにしろ、志麻のように俺と踊るのが1番最初になる位置に陣取る事が出来るなら、意図的に一緒にならない位置に陣取る事が出来るのではないかと。
そう考えると、この反対側になった距離があまりにも遠い物のように思えた。
「何考えてんだか知らないけどさ。
あたしはもう目の前にチャンスがあるのに無駄にしたりなんかしない。」
そう言う声には強い決意のようなものが感じられた。




