天使のような悪魔の笑顔…
「で…どういう事かを聞いても…?」
「まずは急な発表になってしまった事を謝らせてちょうだい…。
ごめんなさい…。」
始業式後の生徒会室にて。
今は俺と瑞穂含む生徒会メンバーで早速顔合わせ…と言うのも変か…。
俺も瑞穂も前々から手伝いしてたし…。
今後の活動方針やそれぞれの仕事の割り振り等を決める場という目的の元集まった感じだ。
でもこっちは正直それどころじゃないのである。
あの後。
いや、え?ちょ、ま?
突然名前を呼ばれた事により、テンパりまくりな俺を他所に、その時の周りの反応はまぁ…酷かった。
「え?誰…?」
「あぁ…なんかそう言えば隣のクラスにそんな奴居たな…。」
「え!あの2大美女もいる女子ばっかの生徒会に男!?と言うか誰!?」
「万死に値するな。あと、誰。」
「普段から女子に囲まれてるのにその上女子だらけの生徒会入りなんて!
羨ま…いやけしからん!」
「死ね…!あと滅べ! 」
「あいつ可愛い妹も居るんだよなぁ。
俺に紹介してくんねぇかなぁ。」
「よし、お前表出ろ。」
「悠太さん…日奈美さんが絡むと相変わらずですね、、」
リオには呆れられたがそんなの知った事か。
日奈美は誰にも渡さん!
「悠太が生徒会に!?じゃあ私も!やりたい!
え!?今から舞台挨拶!?
写真撮らなきゃ!!」
志麻は相変わらず過ぎてこれはこれでまぁ酷い…。
「では三澄悠太君出て来て挨拶してくださいーガウッ!」
リュウたん校長の言葉で、更に全校生徒の視線が俺に集まる。
どうしよう、これまでの人生で1番目立った瞬間かもしれない…。
出来ればもっと違う感じの目立ち方が良かった…。
と言うかマジで一体何がどうなってるんだ…。
そう、俺は今日今まで自分が生徒会入りを果たしていた事を知らなかったのである。
実際知ってたら瑞穂同様舞台裏で待機してたのだろうが、俺氏普通に自分の席で悠々自適に話を聞いてるだけだったのだ。
悠太だからな。
それ故に挨拶しろなんて言われても何も考えていないのである。
こう言う時陽キャのラノベ主人公なら急な指名にも怯まずに堂々と挨拶をしてみせるのだろうが、残念俺氏一般人のド陰キャなのである。
全員の視線が集まってしまって逃げるに逃げられない状況になってしまい、仕方なく舞台に上がる…あ、いつの間にか志麻が最前列に…あ、ちょ、写真はやめてくださーい。
舞台袖に控えているハルたん会長に視線でどういう事ですかと問うと、両手を合わせて申し訳なさそうに頭を下げてくる。
ちなみに瑞穂はその横で笑いを堪えている。
コイツ知ってやがったな…!!
とりあえず二人に事情を聞くのは後だ。
まずは目の前の全校生徒に向けて何かしら言葉を発するのが先!
そうだ、今こそ俺の隠されたコミュニケーション能力を発揮する時!
「あの!」
俺が叫ぶと、更に視線が!!
「えっと…が、頑張ります…。
よ、よろしくお願いします…。」
俺のコミュニケーション能力雑魚すぎワロタ。
「ぶっはw」
あ!瑞穂のやつ遂に吹き出しやがったw
とまぁ…二学期開始早々悲惨な舞台挨拶を終える事となった。
「悠太最高だったじゃん…プークス…!」
この清楚系ビッチめっ…!
「つかお前も俺が生徒会に入ってたの知ってただろ?」
「え?そりゃまぁ。」
「うん、当たり前でしょ?みたいに言わないで?俺は知らなかったよ?」
「だってその方が楽しくない?サプライズとか最高じゃん?」
「TPOって言葉知ってるか…?知らなかったら今すぐ調べろ…?」
「兎に角こうなったのには色々複雑な事情があって…。
言い訳になっちゃうけど聞いてもらえない…?」
頭を抱えながらハルたん会長が口を挟む。
「はぁ…まぁここまで来たらちゃんと聞きますよ。」
散々恥もかかかされたし今更である…。
「えっと、まず始業式でも言ったけど私達三人体制で回せる仕事には限度があるし、その分手伝いを依頼したり納期を待って貰ったりしていて…先生達側からもなるべく早い人員の補充を依頼されていたの。」
「それは…まぁ…。」
幾ら完璧生徒会長のハルたん会長が居ても人員がこれだけカツカツだと回らないのは仕方ないわな…。
それに完璧に見えて案外ポンコツだったりするしなぁ…。
「悠太君?何か失礼な事を考えてないかしら?
私でも怒るわよ?」
「ひぃ!?ごめんなさい!?」
そんなに分かりやすいのかしらん…。
「コホン…かと言って誰でも良いというわけでもないのよ…。
悠太君は知ってると思うけど。」
「おん…。」
忘れた方の為に再び解説しておくと、学園の2大美少女と呼ばれる綾瀬波瑠が生徒会長と言う事で、一緒に生徒会をやりたい!と言うファンの連中はめちゃくちゃ居た。
それもあって役員決めが異例の抽選形式となる事態になるほどである。
だが仮に選ばれたとして、真面目に熱意を持って仕事に取り組む人間はそうそう居らず…。
会長のパートナー的ポジションの副会長なんかは特に人気が高かったが、それ故にそんな人選ミスが続いて安定した副会長が居ない生徒会が長く続くと言う意味不明な事態に。
で、俺は転生したてでハルたん会長の事を知らないし興味も無かったから逆にハルたん会長に興味を持たれてたまに仕事を手伝うようになった、と言う流れだ。
「全く経験もやる気もない私目的の人員より一度は手伝ってもらってちゃんと真面目にやってくれる人の方が良い…と言うのは分かるわよね…?」
ちなみに志麻もやりたいと言ってたが同じ理由で却下されました。
いや、志麻の場合は俺目的だけども…。
今は廊下側から生徒会室の窓を椅子持参で覗き込んでいる。
椅子持参で居座るとか誰が上手い事言えと…。
「いや…全然上手くないしただ悠太の真似してるだけでしょ、、」
だからなんで瑞穂は考えてる事がそんなハッキリ分かるのか…。
まぁ今更か…。
「いやハルたん会長、理屈としては分かりますけど…。
でも流石に前もって言ってからにしてほしかったと言うか…。」
「いや、だって悠太は強制だし?」
それに瑞穂が口を挟む。
「ほ? 」
「それが…。
あなたと友達になった事がお父様にバレてしまったのよ…。」
難しい顔でハルたん会長が言う。
ま、まさかの親バレ!?
「その、初めてのボーイフレンドだし…大掛かりな誕生日祝いまでしたから…。
ハルに相応しい男なら生徒会になってハルを支えてみせろって聞かなくて…。
ごめんなさい…。」
「ハルたんのお父さん、ほんと娘を溺愛してるからねー…。」
あー……。(察し)
「ただのお友達だから…とは言ったんだけど取り合ってもらえなくて…。
お父様頑固だから…。」
なるほど…。
とてもお金をかけてもらった手前これは断れそうにないなぁ…。
「分かったよ…。
そう言う事なら協力させてもらうよ。」
「ほんと!?ありがとう!」
嬉しそうなハルたん会長。
今だけはこの天使の表情が悪魔に見えたのは言うまでもない。