始業式は波乱の幕開け
「えー皆さん。
夏休みはどうでしたか?
私は行きつけの川に行って鮭狩りをしました。」
始業式。
長かった夏休みも終わり、俺達は体育館に集められている。
「他にも森にハイキングに行ったりもしました。
そこで女の子が小さな貝殻のイヤリングを落として行ったので、拾って追いかけました。
皆さんも落し物はちゃんと持ち主に返しましょう。
最初女の子には逃げられましたが、事情を伝えたらお礼に歌を歌ってもらいました。
どんなに怖くても親切を受けた時はきちんとお礼を言う事が大事です。
先生とのお約束だよ!ガウッ!」
いや!普通に喋れるんかい!?
と、一人盛大に脳内でツッコむ。
いやまぁそりゃそうか...中は人間だし...。
しかもめちゃくちゃいい声...。
なのに夏休みの思い出が普通に熊で熊...じゃなかった草。
と言うか2つ目の予定どっかで聞いた事あるんだが...。
俺は途中参加だから今思ってるってだけで多分ここにいる皆一度は同じ事思ったんだろうなぁ...。
久々の登場だから改めて紹介するが、我らが中山高校校長リュウ。
熊の着ぐるみを着た謎多き男...いや♂と言うべきか...。
その可愛らしい容姿とキャラから、この高校ではマスコットポジションでもある。
着ぐるみの中身はトップシークレットで、誰もその正体を知らないのだとか...。
「では次に生徒会から挨拶と発表があるそうなので、お願いしますガウ。」
ガウが無ければ声だけはイケボなのに、、いや
、あってもイケボだけども。
ちなみに俺のUthtuber時代の知り合いでもある。
「はい、皆さんおはようございます。」
そう言って校長と変わって舞台に立ったのは、我らが生徒会長ハルたん会長こと綾瀬波瑠。
リュウたん校長が登場した時の女子達の可愛い物を見る眼差しとは違うまるでアイドルでも見るかのような眼差しを一斉に向けられても、一切怯む事無く凛とした表情で堂々と喋れる辺り流石のハルたん会長である。
「先程校長先生が仰られていた通り、今日は皆様に生徒会からご報告があり、この場をお借りしました。
一学期、私達生徒会は人員の度重なる入れ替わりにより定着して務めている人員が私を含め三人だけと言う状況が続いていました。
それにより二人にはとても負担をかけたし、業務が遅れた際にフォローして下さった先生方、協力して頂いた生徒の方にはとても感謝しています。
ありがとうございました。」
そう言って恵美や蘭ちゃん、先生方、生徒達それぞれに丁寧にお辞儀するハルたん会長。
なんと言うかそう言った所作一つとっても絵になるのは流石の完璧生徒会長様である。
「そこで今学期より私達生徒会は、人員を新たに2人増やして5人体制での活動をする運びとなりました。」
おぉ、遂に生徒会に人が増えるのか。
まぁ確かに3人じゃ普通生徒会の仕事なんて回らないよな...。
「まず、副会長に...瑞穂、挨拶。」
「はーい、どうもー津川瑞穂でーす!」
ハルたん会長の呼びかけに応えて舞台に上がる。
アイツ副会長になってたのか。
まぁ確かに一学期から何かと生徒会に入り浸ってたしなぁ。
合宿でも普通の参加者側と言うよりどっちかって言うと運営側だったし。
瑞穂の登場に主に男子達の歓声が沸き起こる。
「我が校が誇る2大美少女が二人とも揃うなんて!
なんて豪華なメンバーなんだ!
最高かよ!」
「うぉぉ!瑞穂ちゃぁぁん!」
「皆ー!応援よろしく!」
「「「うぉぉぉぉ!」」」
いやライブ会場かよ、、
まぁハルたん会長と並んで2大美少女と呼ばれる瑞穂である。
如何せんキャラがキャラなだけに悪いイメージも持たれがちではあるが、それを差し引いて余りある整い過ぎた容姿はファンの心を掴んで離さない。
一方で...。
「まぁ...確かによく生徒会に出入りしてたしね...。」
「会長の事を気安くハルたんなんて呼んでたし実は仲良いのかなぁ...。」
「清純潔白な会長の相方があんなビッチなんて...。」
...なんて否定的な意見も耳につく。
実際停学になった事もあるぐらいだし多少はそんな意見が出るのも仕方ない部分があるが...。
「あたしが生徒会副会長になったからには昼休憩中に外出したり授業をサボったり出来るように「ダメに決まってんでしょうが。」あだぁ!?」
瑞穂の本気か冗談か分からない公約めいた発言にハルたん会長の高速チョップツッコミが入って場が笑いに包まれる。
まぁ...元々否定的な奴らは余計に不満を募らせているようで、同じく不満を持っている奴らと愚痴りあっている。
うーん...何も無ければ良いが...。
それにしても、もう一人の人員は誰だろう。
なんと言っても先に紹介されたのは良くも悪くも目立ちまくりな2大美少女の一人瑞穂である。
立場上副会長が先に紹介されるのは仕方ないにしろ、その後に紹介されて挨拶をする事となる新メンバーは中々にプレッシャーが大きいのではなかろうか。
は!?もしや智くんとかでは!?
流石に女子ばかりでは困る場面もあるだろうし、何よりイケメンオブイケメンの智成なら瑞穂の後でも何ら違和感無い。
むしろ今度は女子の歓声が沸き起こる事間違い無しである。
そうだ、そうに違いない。
「では次に生徒会庶務。」
庶務か。
なるほどなんだかよく分からないけど智君なら出来るだろ、イケメンだし。
「えっと、三澄悠太君。」
「ほ?」
ハルたん会長が名前を呼ぶと同時に、全員の視線が俺に集まる!
「ほぉぉぉぉ!?」




