イケメンで浴衣男子とかチート過ぎる
「お!悠ちゃんも居るじゃん。 」
「やほ、皆こんばんは。」
「悠兄やっほー!」
千鶴さんの浴衣を目に焼き付けていると、横から声をかけられる。
「おぉ、三人も来たのか。
お!」
私服で来ている秋名たん、美紀と違い、紺色にストライプ柄の浴衣姿の智君。
さっきから女子の視線が智くんに集まってるのも納得の浴衣美男子ぶりである。
鳴り止まぬ嬌声!
ちなみに俺もあげてる側である。
「なんで悠太さんまで嬌声あげてるんですか…。」
リオに呆れられた。
「良い!良いよ悠兄!やっぱ悠兄はそうでなくちゃ!」
対して大興奮の美紀。
ただの悪ノリなのに絶対に誤解されてるだろw
あとはっちー鼻血拭きなさい…。
「こうして巡り会えたのもある意味運命!?
ブハッ!?」
駄目だこの子…。
「いや、良かった。
浴衣着てきたの僕だけでちょっと浮いてるなって思ってた所だから。」
「まぁ秋名たんは浴衣とか着なさそうだしな。」
「おうよ。
そもそも持ってないしな。」
「ウチも持ってないし浴衣って全部そろえるってなったら結構するからね!
それなら…もっと有意義な物に使わなくちゃ…グフフ…。」
鼻血を拭きながら不敵に笑う美紀。
あ、察し…。
有意義かぁ…有意義なんだろうなぁ…。
知らない方がいい事もあるよね、うん。
「悠太!どう!?」
と、ここで瑞穂に髪を結ばれたのであろう志麻がその姿を見せに来た。
「おぉ。」
「どうよ?我ながらいい出来だと思うけど。」
得意げな瑞穂。
「あんまり見ない髪型だな。
これ、なんて言うんだ?」
「ギブソンタックだよー。
海外とかでも人気なんだってー。」
「ほーん。」
調べてみると確かにそう言う髪型があるらしい。
低めの位置で髪をまとめるアップヘアのヘアアレンジをギブソンタックと呼ぶそうだ。
もともと美少女の志麻だ。
浴衣姿も相まって更に磨きがかかっていた。
「ふふん、すごいでしょ?ハルたんの髪をいじったのもあたしだからね。」
「そうそう、だから瑞穂の髪は私がやったわ。」
「へぇ…。」
今日も二人で祭りに来てるみたいだし髪をいじりあったりしてるし、たまにその、絵美に目隠しされるレベルのスキンシップもあったり…。
最初こそ真逆のタイプが故に一触即発みたいな感じだったが…。
案外今は仲の良い友人って、感じなのかも…。
いや…まさか…いや、これ以上考えたらあとが怖いな…。
「それより悠太さん…さっきから宏美さんの姿が見えないんですが…。」
と、ここでリオがそう言って口を挟んでくる。
「宏美? 」
言われて辺りを見渡すが、確かに宏美の姿は無い。
「誰か知ってるか?」
「私は知らないですが…。」
「さぁ?帰ったんじゃないの?」
そう言う瑞穂の声は何処か素っ気ない。
「お前…なんか知ってるだろ?」
「べっつにー…。」
話すつもりはないらしい。
「悠太!それより一緒に屋台回らない!?」
そう言って俺の腕を引く志麻。
「駄目…!渡さんもん!」
さっきからしがみついてた美江がそうはさせじとより強く引き寄せる。
痛い痛い!僕はロープじゃありまてん!
「いや、流石にほっとけねぇだろ。」
とりあえず二人を振り払い、スマホを取り出す。
そして宏美に電話をかけるも。
「おかけになった、電話は電源が入っていないか、 電波の届かない場所にあるため、かかりません。」
「駄目だ…。」
「ほっとけば良いじゃん?」
相変わらず素っ気ない物言いの瑞穂。
そう言えば初絡みで口喧嘩みたいになってたし…なんだかんだそれ以降も親しくしてた感じは無い。
合宿でもなんか煽ってる感じだったし普通に仲が悪そうだよな…。
「合流したらまた宿題やるように言われるだけだよ!?」
なんでそれを…って志麻だからか…。
そう言や今朝からだって言ってたっけ…。
「いや…それはまぁ…やってなかったのは事実だし…。」
「私が代わりにやってあげるよ!?」
ううっ…魅力的な提案!!
いや!駄目だ駄目だ!
マジで将来無職で志麻のヒモになってる未来が見えて来そうだもの…。
「しゅ、宿題は自分でやらなくちゃ意味が無いから!」
「一瞬揺れたね?」
瑞穂がそう言ってニヤリと笑みを浮かべる。
「ゆ、揺れてない!」
と言うか瑞穂だけじゃなくて志麻もなんか知ってそうだな。
「ねぇ、なんでそんなに気になるの?」
「なんでって…。
そんなの、友達が急に居なくなったら普通心配くらいするだろ。」
「友達、ね。 」
「な、なんだよ?」
「悠太はそれで良いのかもしれないね。
でもさ、あの子にとってはそうじゃないと思う。
悠太が探しに行って、仮に見つけられたとしてもきっと彼女はあなたを突き放すよ。」
「取り付く島もないと思う!あ!私じゃないよ?」
分かってるわ…。
全く、誰だそんなしょーもない事言うやつは…俺だわ…。
「それでも探すの?」
「探す。
あいつがめんどくさいのも素直じゃないのも今に始まった事じゃないしな。」
「そ、なら好きにしたら。」
不機嫌そうにそっぽを向く瑞穂。
「私は悠太がどうしてもって言うなら止めない!」
対して志麻は特に気にしてないようだ。
「私も手伝います!」
そう名乗りを上げたのはリオだ。
「助かる。
リオはあっちを探してくれ!」
「はい!」
「悪い、宏美を探しに行くから一旦離れてくれるか?」
「ほんまに行くん…?」
「なんだ?美江も反対なのか…?」
「そうじゃない…。
宏美ちゃん、合宿の時話し相手誰も居ないで落ち着かなかった私に声をかけてくれたから…。」
そうだったのか…。
「じゃけぇ…私は別に彼女の事嫌いじゃない…。」
良かった…あいつにもちゃんと味方が居たんだな…。
「じゃけぇ…行くんならちゃんと話してほしい…。
適当な気持ちで行くなら許さん…。」
「分かってる、サンキューなひめさ…うぐっ!?」
また鳩尾に!今から走るのに…!
「そうやってすぐ調子に乗るところとか…馬鹿!ほんま馬鹿!あと馬鹿!馬鹿馬鹿!えぇけぇはよ行け馬鹿!」
言いながらしっしっと手を振る美江。
「悠太君、人探しなら私の付き人の人達にも手伝ってもらいましょうか?」
と、ここでハルたん会長が口を挟む。
「いえ、お気になさらず!」
そこは全力で拒否しておきました!
流石にガチな人らに捜索されるのは宏美からしてもホラーだろうし…。




