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彼女にフラれた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう  作者: 遊。


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いつか魔法が解けるまで

「うぉっ...。」


さて会場に入ると涼しいのかと思ったら元々の人口密度と熱気でムワッとした空気が流れ込んでくる。


クーラーは効いている筈だが、普通に暑いな...。


とりあえず姫様に連れられ、指定席に移動する。


東西南北それぞれにある入口で俺たちが入ったのは北口。


その中央辺りの席だった。


流石に最前列程ではないにせよ、なかなか悪くない席である。


席につき、開始を今か今かと待つ姫様はさっきからソワソワと落ち着かない様子。


その周りにも、そんな様子でライブ開始を今か今かと待ちわびる人の姿が。


なんと言っても人気アーティストである。


姫様イチオシの上野沙耶音がボーカルを務めるバンド、TrickStarsはアニソンからCMソングまで多くを担当し、姫様からオススメされる前からも、彼女達の楽曲は耳にする事が多かったように思う。


そして時間になり、会場が一度暗転。


からの楽曲のイントロが流れ始め、そこから圧倒的な歌唱力の歌声が会場に響き渡り...。


ステージに登場した彼女の姿を、スポットライトが眩しく照らす。


この粋な登場演出に、スタジオ中のファンは大興奮。


姫様もまるで欲しかったおもちゃをもらった子供のようにキラキラと目を輝かせて...。


「さやちゃぁぁん!」


思いっ切りその名を叫んだ。


コイツがこんな大きい声出してるのを見聞きするのなんて本当いつ以来だろうな...。


一緒にカラオケに行った時とはまた違う、ガチな叫び。


普段は陰キャだし人見知り全開で...こんな大きな声を出して騒ぐようなタイプでもないのにな。


それは一重に大好きな物が目の前にあるから、で。


だからこそ全力で今を精一杯楽しもうとする姿がいつもより眩しく見えて...。


「ライブを見に来たんだけどな。」


そんな俺の小声等気にも留めず盛り上がる姫様の横顔を時折覗きながら、俺もまたライブを楽しむのだった。


「最高じゃったぁ...。」


帰り道。


今も満足そうな顔で姫様はライブの余韻に浸っているようだ。


聞けば久しぶりの参戦だったと言うから、感動も一入なのだろう。


「この後どうする?」


始まりが昼過ぎだっただけに、まだ夕方の時間帯。


「良かったら暑かったしファミレスにでも行ってパフェでも食って帰らないか?」


「い、良いけど...また調子に乗らん...?」


そう言って睨んでくる姫様。


あwこれまだ昼間の事根に持ってる感じですかね、、


「いや、だから悪かったって!


神様仏様姫様!」


「馬鹿にしとるじゃろ...?」


ダメでした...。


「でも...まぁ...今日は許してあげる...。


感想も...その...聞きたいし。」


「ありがたき幸せ!」


「ほら!またすぐ調子に乗る!」


「は!?遂癖が...!」


なんと言っても形から入る男、三澄悠太である。


姫様にお仕えするからには平身低頭の精神なのだ。


「わ、私もゆ、悠様って読んどるんじゃし...そ、そんなにかしこまられても困るし...。」


「わかりました姫様!」


「分かってない!」


ダメかぁ...。


「だ、だから...普通で良い...。」


「分かったよ。」


「わ、分かれば良い...。


で、でもたまになら...「それも分かりました!」な、なんでそこだけ耳ざとく聞き分けるんよ...。」


確かに最後らへんは小声だったが、主人公と言うのは基本都合のいい時と悪い時だけで難聴と健聴を使い分けられている物なのである。


あくまで使い分けられているんだ。


意図的にじゃないぞ?


「ほ、ほんまに、意味分からんし...。」


言いながらも赤く染めた顔でおずおずまた手を差し出してくる。


それを握り返し、またファミレスに向かう。


...勿論向かう先は昼に行った場所とは違う場所だ。


そこは姫様が譲らなかった...。


「そ、それで...?今日はどうじゃった...?」


席に着き、姫様が聞いてくる。


と言うか毎回対面席じゃなくて横なのね...。


「いや、ライブ参戦は俺も久しぶりだったしトリスタのライブは初だから楽しめたよ。」


「そ、それなら良かった...。」


「特にあの登場の仕方は凄かったな。」


「そう!ほ、ほんまにかっこよかった!


それとそれと!」


そう言って、嬉しそうに感想を語る姫様。


なんだか本当楽しそうだな。


前まではあんなに険悪だったのに...。


いや、だからこそ取り戻したこの時間をもう壊さないようにしないと、だよな。


そうこうしてる内に、注文していたパフェと姫様が頼んだショートケーキが届く。


「それじゃ、お疲れ。」


「んっ...。」


注文品も揃った事だしと、1度乾杯を交わす。


「あ、あとこれは悠様の...。」


そう言ってショートケーキを俺の方に寄せてくる。


「え?良いのか?」


「ま、まだ直接はお祝いしとらんかった気がするし...。」


あ、なるほど...つまり誕生日ケーキって訳か。


「その...遅くなったけど...お、おめでと。」


「おう、サンキュ、姫様。」


「んっ...。」


照れくさそうにそっぽを向く姫様。


「じゃあお言葉に甘えて...。」


ケーキを食べようとすると、突然フォークを奪われる。


あれー...?


「あ、あーん...。」


ほ?


唐突なあーん。


相変わらず照れくさそうにフォークで刺したケーキの一欠片をおずおずと差し出してくる姫様。


「ど、どうしたんだよ?急に...。」


「ほ、他の人にもされたんじゃったら...わ、私だって良いじゃろ...?」


「い、良いけど...。」


多分付き合ってた時にもされた事無かった...よな?


なのに良いのか...。


「か、勘違いせんで...!


た、誕生日じゃけぇ...特別。」


「お、おう」


そう言う照れくさそうな表情が俺にも伝播して、照れくさくなる。


特別...か。


今日のこの姫様悠様呼びも今日だけだ。


明日から、いや解散したら元通りだし、そのリミットは刻一刻と迫っている。


なら今ぐらいならこの特別な時間に浸ってみても良いよな?


シンデレラみたいに魔法はいつか解けるけど。


きっとこの時間の輝きを、俺はずっと忘れないのだろう。


姫様にとってもそうだと良いな...。


なんて思いながら、俺はその後の姫様の感想に耳を傾けるのだった。




「ほ、」

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