家に帰るまでが波乱です!
帰り道。
「どう?楽しかったかしら。」
「まぁ、色々ツッコミどころはありましたが...。」
助手席に座っていたハルたん会長が声をかけてくる。
ちなみに今俺は高級感漂うリムジンでハルたん会長、瑞穂と一緒に乗っている。
ハルたん会長いわくお迎えからお見送りまでがお祝い、と言う事らしい。
それにしたってこんな高級車を三人でなんて流石に贅沢すぎやしないかしらん……。
「確かに色々あったけどなんだかんだ楽しんでるみたいだったよね。」
そう言うのは瑞穂だ。
「まぁ...それはそうだけど...。」
「観覧車でなにしてたかは結局分からないけど。」
「え、悠太君何かしてたの!?」
「してません!それにもうその話は良いだろ...。」
「どうだか...。」
そう言って露骨にため息を吐く瑞穂。
「と、兎に角二人とも今日はありがとう。」
「なーんか体良くあしらわれた感じするけど...。
でもまぁ楽しめたんなら良かった。」
「そうね、まぁでも私はそんなに大した事してないけど...。」
「何言ってんですか!あなたが1番の功労者です!MVPです!ありがとうございました!」
「え、え、え?」
そもそものスケールが違い過ぎるんだよなぁ...。
普通の高校生は誕生日会で大人気の遊園地を1日貸し切り!なんてしないし..。
まぁ...ともかく...。
色々心労もあったものの...。
「本当に楽しかった。
多分今までで1番楽しい誕生日だった。」
勿論今までだってそれなりは楽しい誕生日はあったと思うが、それももう今となっては思い出せない。
「なら来年はそれを更新するつもりでやらなきゃね。」
そう言って不敵に笑うハルたん会長。
「もう来年もやる気なんですか...。」
嬉しいような少し申し訳ないような...複雑な気分である。
「まぁまぁ、ハルたんが好きでやってんだから悠太がそんな気を使わなくて良いと思うよ。」
また心を読みやがって...。
「その通りだけどあんたが言うなっての。」
「あだっ!?」
出た!ハルたんチョップ!
それにしても...。
「なぁ、瑞穂。」
「ん?どした?」
チョップされた頭を擦りながら瑞穂がそう返す。
「お前って俺の事好きなのか?」
「ブフッ!?」
「ちょ、悠太君!?」
「い、いきなり何聞くのさ!?」
二人に驚かれてしまった...。
いや、聞き方が悪かったか...。
「仮に!もし仮に!万が一に、いや億が一にもそうだとしてうん、そうだよなんて言えるわけないじゃん!」
「いや確かにそうかもしれないけど否定し過ぎじゃね...?」
「急に変な事聞くからだよ!?
そんな事急に聞くとかあたし的にポイント低いから!」
おぉん...瑞穂ポイントってなんだろ...?貯めたら何貰えんのかな.。
中々貯まらないのに満点まで貯めても500円の割引券とかだったらやだなぁ...。
「500円割引券どころかふんだくるレベルだよ!」
「なんでそんな具体的に読まれてんだよ...。
もはやホラーだわ...。」
「悠太が分かりやすすぎるからだよ!」
「いやだからってそうはならんだろ...。
いや...なるのか...?」
あいつが俺を好きだったのはもう過去の話だ。
下手したら本当にあったのかどうかすら分からない。
「な、何?急に黙り込んじゃって..。」
「いや...。」
でもこうして考えてる事を言い当てられんのは、それだけ俺の事をちゃんと見ていてくれたから...なんだよな。
そんな時期があったから..。
仮に今がそうじゃなくてもその記憶があるから...なのかな...。
分かってる。
こんな事考えたって無駄な事くらい。
「ねぇ、本当にどうしたの?やっぱりなんかあたった?」
瑞穂が怪訝な表情で顔を覗き込んでくる。
「あったっちゃあった……のかな。」
「え、何その微妙な返し……。
あたしはてっきりその場のノリでキスでもしたのかと……。」
「そんなの……ある訳ないだろ。」
「なんで?」
「いやなんでって……。」
「じゃあ、あたしとする?」
「ちょ!?瑞穂!?」
「いやいや……急に何言って!」
「何ってあたしキス好きだし。
あ、魚のとかみたいなしょーもないノリはなしね。」
くぅっ!渾身のジョークでごまかそうとしたら先回りされてしまった...!
「悠太は瀬川さんの事、好きじゃないの?」
「分からない。」
俺自身の気持ちも、あいつの気持ちも、何一つ。
「前までのあたしならさ、してたと思う。」
「え?」
「ちょ、瑞穂あんたさっきから何言って……。」
「だってそうじゃん。
そこに好みの異性が居て、雰囲気の良い場所に居たらキスの1つもしたくなるでしょ。」
「宏美はそんなのじゃ……。」
「でも一度は付き合ってる訳でしょ?
それとも全く好みでもないのに付き合ったの?」
「いや……そう言う訳でも……。」
「瑞穂!あなたちょっと!」
「ハルたんは黙ってて。
ならなんで?あたしとだって一度はしたじゃん。」
「そ、それは付き合ってからだろ!?」
「そうだっけ?あの時のキス、気持ち良かったたなー。」
言いながらそっと自分の唇を指でなぞる瑞穂。
「何が言いたいんだよ……?」
「何が言いたいと思う?」
質問に質問で返しやがって……。
「お、お前はそうかもしれないけど俺はしない。
俺と宏美は友達だから。」
そう言い切ると、瑞穂は露骨にため息を吐く。
「ま、悠太はそうだよね。
ならあたしとも友達だからしないの?」
「そ、そうだよ。」
「裸見たくせに?」
「ブフッ!?
だ、だからあれはお前が見せたんだろうが!?」
「とかなんとか言ってじっくり見てた癖に。」
「悠太君?」
ひぃっ!?目が怖い!?
「だ、だからそれは前にも言っただろ...!
目の前にお前みたいな可愛い女子が全裸でいたら見るだろって……!」
ほら!ハルたん会長がうわぁって顔で見てるじゃないか……!
「なのに手を出したりとかしないんだもん。
本当ヘタ……真面目だよね!」
「今間違いなくヘタレって言おうとしたよな!?ってかわざと言い直したよな!?」
「真面目な事が悪いって言うんじゃないけどさ。
そう言う理屈だけじゃどうにもならない事だってあるんじゃないかなって事が言いたかったって言うか。」
「どう言う意味だよ……?」
「え?ウジウジしてないで気になってんならとっととやっちまえよヘタレ童貞って事かな。」
「今度は普通に口に出したし更に悪化してる!?」
「じゃあ悠太は今もこれからも瀬川さんとはただの友達を続けるの?」
「そりゃ……そうだろ。」
「ふーん。」
面白くないと言う反応だ。
「ならさ、悠太。」
「……なんだよ?」
「あたしと大人のデート、してみない?」




