クマッキーボートとサンキュー
「何だか悠太さんすごく疲れた顔してませんか……?」
次に選ばれたのはリオだ。
選ばれた遊具は水上ボート。
遊園地のマスコットキャラクターであるクマッキーがボートになった感じの最高に可愛いらしい(ハルたん会長いわく……。)ボートで敷地内の湖を優雅に漂う……と言った感じのやつである。
「そりゃあな……。」
あの後も延々と続くカップル2人のイチャコラとペアルック選び……。
そして何故か俺までクマッキーの耳カチューシャを買わされてしまった……。
ハルたん会長にはめっちゃ褒められて写真を撮られたけど瑞穂にはめっちゃ笑われて写真を撮られた。
この扱いの差よ……。
ちなみに志麻は動画で今もリアルタイムで撮ってまーす。
「さっきのショッピングが相当堪えたみたいですね……。」
「そりゃあな……。Part2」
「ちゃんとPart2まで口に出す辺りが悠太さんらしいですよね……。」
「ふふん、そうだろうそうだろう。」
「別に褒めてないですけど……。
まぁ良いです。
でもこうして皆でお出かけするの、やっぱり楽しいですよね。」
「それはまぁ……。」
「悠太さんの事ですから誕生日は家に引きこもって日奈美さんに祝って貰うんだーとか言い出すかと思ってましたけど。」
「うっ……!」
「図星じゃないですか……。
でも良かったです。
こうしてちゃんとお祝い出来ましたから。」
そう言ってあどけない顔で微笑むリオ。
「その、サンキューな。
今回の集まり、お前の発案なんだろ?」
「ま、まぁそうですけど……私はそんなお礼を言われる程の事は……。」
「こうして集まれたのはそもそもお前の旗揚げあってこそだよ。
だからサンキュー。 」
「ま、まぁそう言う事なら……どういたしまして……。」
少し照れくさそうにリオは返す。
「それでその……。」
「ん? 」
途端に少し気まずそうな顔になるリオ。
「ん?」
「私……こう言う風に誰かの誕生日を祝う事ってそんなに無くて……。」
「あぁボっ「何か言いましたか!?」何も言ってません!」
「コホン……。
それに人間にプレゼントを渡すと言うのも初めてで……。」
「あれ?もしかしてお前も用意してくれてたのか?」
「い、一応……で、でも仕方ないじゃないですか!
他の人のプレゼントを見ていたら出すに出せなくなったし……なんだか心配になって来たんですから!」
「いや……そんな気負わなくてもせっかく俺の為に用意してくれた物を突き返すような事しねぇよ。
あ、でも等身大フィギュアとかは勘弁な?」
「そんな物送りませんよ!?」
「なら良いんだ。
あ、自分のぬいぐるみも抱き枕もな?」
「だからそんな物送りませんよ!?」
このくだり前にも瑞穂とやっただろって?
いやだって心配になるじゃない……そんなに溜められたら……。
「そ、そう言うのじゃなくて...!き、キーホルダーです!」
「え、なにお前の……?」
「だから!私のって発想からいい加減離れてください!」
「お、おん……。」
「と、兎に角開けてみてください!」
「お、おう。」
「で、でもそのそんなに期待しないでくだいね!?
あと笑わないでくださいね!?」
言われて開けてみる。
「これ……。」
「そ、その……どうですか……?」
出て来たのは目刺しのキーホルダー。
しかも結構リアルなやつである。
「ぷ……ははは!」
「わ、笑うなって言ったじゃないですか!?」
「いや、無理無理!こんなの笑うって!」
「わ、笑い過ぎですよ!」
怒られた。
「だ、だっていつも私の事目刺し天使目刺し天使って言うから!」
「いや、だからってお前……!」
「しょ、しょうがないじゃないですか!
こう言うのよく分からなくて……相談したら自分らしい物を送ってアピールしてみたらって瑞穂さんが!」
アイツかw
「いやだからって!」
「もぉ!だから嫌だったのに!」
「そんな怒んなって!ちゃんと大事にするからさ。」
「なら……まぁ良いですけど……。」
まだ拗ねた表情のリオ。
「サンキューな。」
「ん……。」
「笑わせてくれて。」
「やっぱり喧嘩売ってますよね!?」
そんなこんなで陸地に戻ってきた俺達。
「よし、じゃあ次は遊園地の隠れた定番!お化け屋敷だよ!」
せわしなくも瑞穂は早速次のルーレットを回し始める。
「「お化け屋敷……!ちょっと怖いけどお兄ちゃん(悠にぃ)となら!」」
「む!」
「何よ!真似しないでよ!」
「そっちこそ!」
日奈美茉里愛組がそう言って火花を散らす中……選ばれたのは……。
「え?あたし?」
なんと瑞穂だった。
「あはは、あたしかー。
じゃあ仕方ないからもういっ……「待ちなさいよ。」」
回し直そうとする瑞穂の手をハルたん会長が止める。
「い、いやだってあたしはただの司会者だからさ。 」
言いながら目を泳がせて苦笑いする瑞穂。
「何?あんたもしかして怖いの?」
そんな明らかにさっきまでと比べてテンションが下がった瑞穂にハルたん会長が問い掛ける。
「べ、別にそう言う訳じゃないけど……。
そう言うハルたんこそこう言うの苦手なんじゃないの!」
「わ、私は別に普通だし……?」
おやおや……?
「じゃ、じゃあさ。
あたしも行くからハルたんもその後から入りなよ。」
「え?い、いやそれはちょっと……。」
「ほ、ほら!やっぱりハルたんも怖いんじゃん!」
「も……もって言った!今もって言った!」
「こ、言葉のあやだから!」
うーん...なんだろうこの不毛なやり取り……。
「とりあえずさ、俺と瑞穂、ハルたん会長と……そうだな、蘭ちゃんとかで順番に入ればいいんじゃないか?」
「お、えぇな。
ウチは全然大丈夫やで?
な、会長。」
「わっ……私だってへ、平気よ!」
「だ、そうだが瑞穂は?」
「あ、あたしだって平気だし!」
「よし、なら行くか。」
「え!もう行くの!?心の準備が……! 」
「ふん、先に行ってせいぜい吠え面をかいてなさい。
私らは後からゆっくり行くから。」
後発だからか調子に乗ってるハルたん会長。
「え?悠らが行ったらすぐ行くで?」
「え?」
あぁあ、調子に乗るから……。




