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エピソード 2ー11

 毒を疑われて思わず否定したけどいまのは私が悪かった。私は研究室のテーブルに片手を突いて、ポーションを胸のまえで振ってみせる。


「これはね。美容ポーションよ。飲めば肌年齢が若返るわ。定期的に摂取すれば、十代の肌を保つことも不可能じゃないわよ」

「……は? いや、さすがにそれは……冗談だよな?」


 ダリオンが首を横に振る。ブラウンの瞳には隠しきれない驚きが滲んでいた。


「嘘じゃないわよ」

「本気で……言ってるのか? 嬢ちゃんの妄想とかじゃなく?」

「なんなら貴方が試してみる?」


 ダリオンに向かってポーションの瓶を投げる。彼は慌てて空中でキャッチした。


「おまっ、そんな貴重な物を投げるなよ!?」


 ポーションは戦闘に持ち込むこともあるので、ガラス瓶はわりと頑丈に出来ている。というか、貴重な物と言うってことは、なんだかんだ言って私の話を信じてるのね。


「いいから、飲んでみなさいよ。それとも、他の人を使う?」


 問い掛ければ、彼はポーションの瓶と私を見比べた。


「いや、本物なら、ほかの奴には教えられねぇ。だから……俺が試す」


 彼は瓶の蓋を開け――意を決して飲み干した。


「……ほんのりと甘いが、特に効果は……いや、肌が熱くなって来やがった。おい、嬢ちゃん、かなり熱いんだが、これ、大丈夫なんだろうな!?」

「治癒ポーションで傷が治るのと同じような原理よ、心配いらないわ」

「そうは言うけどよ……うぉ、頭がふらふらする」


 ダリオンは熱に浮かされたような顔で椅子に座り込んだ。

 そして数分後。


「……うおぉぉお、マジか。子供みたいな肌になってやがる。え、なんだこれ、マジか」


 ダリオンは鏡を見入っている。彼の頬に触れる指先が震えており、その目は信じられないものを見たように見開かれていた。

 ちなみに、私が最初に見たときもすごく驚いた。新陳代謝が上がっているはずなのに、使用時に垢が出ないんだもの。治癒ポーションもそうだからいまさらかも知れないけど、どういう原理なんだろうね?


「うおーすげぇ、つやつやだ。って言うか、二十代と十代でこんなに違うものなのか……」

「落ち着きなさい。ちゃんと効果はあったでしょ?」

「いや、たしかに効果はあったが……この世界にこんなものがあっていいのか?」

「そんなに驚くこと?」

「いや、驚くだろ、これは!」


 ダリオンが大きな声を出す。

 まあ、気持ちは分からなくもない。美容ポーションなんて夢のようなポーションの存在を知れば、世の中の女性はこぞってこれを求めるだろう。


「だけど、治癒ポーションや治癒魔術を使えば、大怪我だって一瞬で治るんだよ? 肌が少し若返るくらい、たいしたことじゃないと思わない?」

「いや、それとこれとは別だろう……」


 ダリオンは呆れたような顔をする。でもそれは、彼にとって治癒ポーションが日常にある品だからだ。日本の知識を持つ私に取っては、どちらも非常識であることに変わりはない。


「ま、影響力がすごいのは認めるけどね」

「すごいなんてもんじゃねぇぞ。令嬢達がこぞって争奪戦を……あぁ、血みどろの争いって、そう言うことか」

「うん。それに肌って、地肌――頭皮も含まれるからね」

「……ん? それは、まさか……?」

「髪の毛も生えてくるわ」


 私の言葉に対し、ダリオンが口にしたのは「やべぇ……」の一言だった。

 

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