挨拶
至って普通で、どこにでもあり得る日常。
こうだといいな、ではなく「こう在った」こと。
そして現在進行形。
アプリを始めてから一週間近く。
Tさんと知り合ってから、さらに一週間ほど。
私とTさんは会話を交えるでもなく、淡々とゲームを進めていた。
マッチング系のアプリではあるが、庭を作るのがメインの為口数はなかった。
それこそ初めにかわした「よろしく」の言葉くらい。
初めのうちは意思の疎通をしなくてもある程度ゲームが進行するので、お互い好きなように遊んでいた。
これが一週間か二週間ほど続いた後、ふと思って挨拶をしてみる。
「おはようございますー」
極々短い文章で、もはや文にもなっていないけども。
チャットを打ってみてから数十分、特にやることもないのでアプリは落としていた。
しばらくして通知を見てみると「庭」の文字がある。
「おはようございます~」
そこにTさんからの返信が入っていた。
極々短い文章で、私たちの会話は始まった。
それからは毎日という訳ではないけれども、少しずつ会話を交わすようになった。
最初はそのアプリの内容だけで、お互いしてほしいことや伝えたいことを話していた。
勿論それは出会いとかのそれではなくて、あくまでゲームで、進める為に必要なこと。
これが終わったから、次はあれをしてみよう。
進まないな?じゃあ、他に何か必要な条件があるのかも。よくあるゲームの攻略。そんな感じで。
お互いにきっとなにも意識などしていなかっただろう。
朝のちょっとした時間に「おはよう」と文字を打つ、まだそれだけの関係性。
恋人未満で友達未満
お互いにお互いをなにとも思っていなかった。