捌 海岸の異変
ファーラの元に向かった。
そしてアルティアにバレたこと、そして信じてくれることを確約してくれた事などを話した。
ファーラは笑って良いことだと言ってくれた。
他にはあのクラスで担任をやっていけるか、王に今日のことを言い表彰されることに決まったことなどを話し今日は学園の寮で睡眠を取った。
次の日、ガチャをした。
『隠者の杖』と『超回復・魔』だった。
隠者の杖?
杖は魔法使いの人が魔法の補助として使う武器だ。
なかなか小さい杖で持ってみると魔力を注ぐための機構があることがわかった。
そこに魔力を少し込めてみると…
「ディール!?消えた!?」
アモンが慌て始めた。
「アモン?」
「ディール!どこにいる!?」
「まさかこの杖の効果…他人から姿を隠せるのか!?」
よく見ると杖の根本が青く光っている。
先程までは光ってなかったのに?
見ていると光が弱まり消えた。
「お、見えたぜ。まさかアーティファクトの類とはな。」
「ああ。驚いたな。」
アーティファクト。
簡単に言うと魔力を込めると何かしらの効果を発する物の総称だ。
現代の魔法使いには解析することも作ることもできない代物だ。
ただ殆どが何度も使えるのでそこは幸いとも言える。
まぁ今までに1回きりの物が使われて無くなったとかであったらそう言えないのだが。
まぁ似たものがあったりなかったりするので不安定な評価ではあるが。
この杖も何度も使用できる代物らしい。
さて、次はスキルだ。
超回復・魔。
単に魔力を超回復してくれるスキルだ。
魔力は魔法を使うには必須の要素の一つ。
魔法は魔力と容量が必須要素だ。
容量とは?
覚えきれる魔法の量を示すもの。
魔法には魔力が必要だがその容量がなければ発動できない。
まぁ最大値、みたいなものだ。
誰もが魔力と容量を持って入るがそれは生まれつきに決まる。
それらは血筋に依存する。
俺は実は魔力、容量共にかなりある。
だが家柄的に剣しか握らなかったが基本の魔法は学び使える。
ま、俺は魔法も使えるということだ。
まぁその2つは自身自体感覚で分かっている。
で、だ。
このスキルも超とついているから破格の能力かと思ったら想像よりも強かった。
先程隠者の杖に使った魔力は一瞬で回復したのは当然。
まぁ少ししか使わなかったしな。
で、破格すぎる能力とは。
回復する魔力に上限がなかった。
普通ならそんな溢れた魔力は毒となる、が。
なんの問題もなく増えた分の最大魔力も増えている。
どのくらい増えるか今はまだ分からないがまだ止まる気配はない。
さて。
ガタナによると今日の一年は学園の案内や部活の案内らしい。
朝一にアルティアが弁当を届けてくれたのでそれを持って寮を出た。
俺は今日は冒険者として活動する。
「ディーさん!ようこそ来てくださいました!」
ギルドに付くとなんか歓迎ムード?
何かあったのか?
「緊急依頼が発令されました!」
緊急依頼。
それは急な異常や街などが危機になったときにあるものだ。
それはAランク以上が対象のはずだが?
それを聞くと受付嬢は。
「実は…ディーさん以外のBランクの人は出払ってしまっていて…隣国のセイス国との境の街、セルドは分かりますか?」
「ああ。要塞都市セルドだろ?」
要塞都市セルド。
セイス国とランス国は友好国で同盟したいる国だ。
何故要塞都市がその土地に必要なのか。
それは2つの国にまたがる『魔の森』の存在だ。
「ええ。そこの魔の森にて赤眼の魔物が大量発生しているのです。その討伐に両国共に対象に向かっているのです。あまりにも量が多いため殆どのBランク以上の方も行ってしまわれました。」
「けれど俺に依頼しようとしているのは違うんだな?」
「はい。ミナストル海岸にてドスタードルの大量発生が確認されました。」
ドスタードルは亀のようなモンスター。
弱点は頭で槍ならば頭を引っ込めても簡単に倒せる。
タードルのボス的存在で知られているモンスターだ。
「ドスタードル…の大量発生?それは珍しい。」
「ええ。ですからその調査と討伐をお願いしたいのです。丁度ディーさんは槍使いですし推奨ランクも当てはまります。どうか、受けていただけないでしょうか?」
「ああ。受けよう。」
「ありがとうございます!」
ギルドから馬車を手配してもらえることになった。
もしかしたら数日かかるかもしれないのでアモンにファーラへの伝達を頼み出発した。
ミナストル海岸はワレラ平原より奥に進んだところにある。
御者兼サポーターのレナ・ミュータル。
彼女のスキルが『モンスター図鑑』で見たモンスターの詳細を知ることができる。
話に聞くだけでも分かるというチートスキルだ。
「レナ。アレ、だな?」
「は、はい…。」
眼前に広がるのは広い砂浜…ではなく土汚れた深緑。
今は民衆達が施したバリケードによりこちらには入ってこれないが時間の問題だろう。
そこには、砂浜が見えないほどにタードル達がひしめき合っていた。
「こんな数のタードル…ドスタードルも確認できます!他にも近海で目撃されるモンスターも…ですがこの数…応援を要求しましょうか?」
「確かに…それが良さそうだ。俺は調査をしてみる。頼んだ。」
まぁこうなると海でなにかがあったんだろうが…
後も数が多いと海に行けないな…
…この近くの人達に伝承でもあるか話を聞きに行こうか。
「伝承?そりゃ海の守り神様の話かなぁ?ん?どんな話かって?いいぜ!むかーしむかし、この地には王国が建っていた。国民は魚を取って暮らしてた。だがある時、隣国が戦争をふっかけてきて海に毒をまいたそうな。漁業をしてきた国民は一気に食糧問題になっちまってどんどん死んでしまったさ。だがある時、海に住む守り神が現れ海を浄化してくださったのさ!そして隣国の船を片っ端から壊して退治してくれたんだ!隣国は海の向こうでな?進軍してくることはなかったらしい。国民や王は感謝し崇め称えたんだ。まぁその国は直ぐに違う国に攻め込まれ滅びたがな。ま、そんな感じだ。え?どんな姿かって?さぁねぇ…とても巨大だってことぐらいかぁ?」
海の守り神…か。
「来たぜー…って何だこの数!?俺様も始めてみたぜ!」
「アモン。」
ちょうどいい。
「俺をあの海まで運べるか?」
「お?海を調べるのか?おうともよ!」
何かから逃げているふうに見えるからな。
「ディーさーーん!」
「おっと、俺は透明になっとくぜ。」
「ああ。」
走ってきたのはレナだった。
「応援を要請しました!ですが知っての通り、人手不足なもので結構時間がかかりそうです。」
「構わない。」
「進捗はありましたか?」
「伝承を聞いてきた。」
「伝承…ですか?」
「あの魔物たち、何かから逃げている。」
「たしかに…つまり何かが暴れているとかですか?」
「海の守り神。俺はそう見てる。」
「海の守り神…ですか。」
「情報を集めていろ。」
「わ、わかりました!」
とりあえずコイツラを軽く倒しておくか。
偽装したロンゴミニアドを手に持ち槍豪を発動する。
「ふぅ…乱れ桜!」
周辺のモンスターを吹き飛ばした。
「じゃ、行くか?」
「ああ。」
怯えたように押し合いへし合いして少しは通れそうになっている。
その間を通って海に向かって歩き始めた。
海の中は慌ただしかった。
逃げ惑う水生のモンスターたちが押し合いへし合いして俺たちから逃れよう、だが海から遠ざかりたい、と混乱に陥っていた。
アモンにより空気については大丈夫だがこうも視界を駄目にされるとな…
ゆっくり進みなんとかモンスターの本流から抜け出せた。
「ヒデェもんだったなぁ。そしてすげぇ魔力が海底から湧き上がってるぜ?」
「ああ。」
濃縮された魔力が圧力をかけてくるかのような錯覚を起こす。
「もしかしたら…龍種がいるかもだな。」
龍種。
モンスターの起源種とも言われるモンスター種。
遥か太古から生き続け地形を破壊することなど朝飯前、現れたら災害とも呼ばれる種。
似たようなもので竜種があるが龍種は四足で竜種は二足なのが主な特徴だ。
更に潜ると大きな岩穴から魔力が出ているのがわかった。
恐る恐る中に入る。
ロンゴミニアドを握り進むと…
急に暗かった視界が開けた。
というか空気の中にいた。
「は!?」
「こりゃたまげたな!結界か?」
そこはとても広い空間だったが狭かった。
2体の蒼い龍がいた。
「龍種…。」
そのうちの一体が話しかけてきた。
「人の子か…よくここまでたどり着いたな。そこの悪魔のお陰か。地上ではやはり異変が起きてしまっておるのだな…。」
は、話した…
「そ、そうだ。多くのモンスターたちが…海岸に現れて問題を探しに来た。」
「すまないことをした。だが…それも時間の問題。我等は死に瀕している。普段はもっと海底の神殿に住んでいたのだが何者かに奪われてしまった。何とかここに避難してきたが…我が妻は我が子を孕んでおりこれ以上動けぬ。それにここらの海水は我らに合わぬ。そのせいで衰弱し、我が身から放つ魔力を抑えきれぬのだ。」
「何者かに奪われた…。」
「もし、神殿を開放されたとしても我はもう動けぬ。神殿を奪った者に負わされた傷によってな。…人の子よ。もう我らの命は残り少ない。我が子を育てることもできぬ程に。ここで出会った縁だ。我が子を、託したい。」
「は?」
「我ら龍種は生まれた環境により種類が決まる。海で生まれたのならば海龍、火山で生まれたのならば火龍。風が吹く谷で生まれたのならば風龍…と。我が妻が卵を産んだあと…ソナタに託したい。ソナタならば…我らの子を強く、逞しく、育ててくれると我は信じよう。」
「なぜ…出会ったばかりの俺を信じるんだ?」
「ソナタが清き心の持ち主だからだ。そしてここまでこれる強さ。龍種の未来を託したい。」
「龍種の…未来?」
「うむ。そしてできれば神殿を取り返してほしい。あそこにはすべてがある。そこにあるものは全てソナタに託そう。名を、聞いてもよかろうか?」
「ディール=クラーチェ。」
「ディール。ディール…良き名だ。我の名はエヴァルダン=リヴァイアサン。気高きリヴァイアサンの一族だ。我が妻はリリルアルナ=リヴァイアサンだ。」
「エヴァルダンとリリルアルナだな。わかった。俺もまだまだ子供だけど…実の子供と思って育てよう。」
その後リリルアルナは卵を2つ産み、力を使い果たしてしまったようで永遠の眠りにつき、その後を追うようにエヴァルダンも感謝の言葉を述べながら彼も永遠の眠りについた。
彼らの残した2つの卵は虹色に輝きコロリと鳴った。