漆 元婚約者
ファーラ学園長が壊れたところをまるで無かったかのように直して生徒達はそれぞれの教室に移動した。
アモンは透明化出来るらしく俺のそばにいるが見えなくなってもらった。
「ディール。お疲れ様。」
「まだまだ始まったばかりです。アイツ、アモンから聞いた話だが何か憑いているらしいです。」
「そうかい…頼めるかな?」
「ええ。守るために戦ったのに急に守らない、は無い。今の俺は教師だ。…それにあいつは…。」
「気を張りすぎないように。教師だからといって全部背負うわけじゃない。ほら、ガタナがいるだろう?」
「そうだ!俺様達の最初の任務!HRがはじまるぞ!急げー!」
「放課後、私のところへ来ておくれ。悪魔と戦い打ち勝ち契約したんだ。王からデビルハンターの称号を貰えるだろうからね。」
「は、はい!?」
「ガッハッハ!当然だろう!俺様も称号もらいたいぜ!ほーれ!駆け足駆け足!」
ガタナは職員室を飛び出していった。
それを追いかける。
後ろから声をかけられた。
「頑張りなさい!」
「!はい!」
振り向いて元気に俺は答えた。
先に走ったガタナに追いつき息を整えて入る。
「やぁ。改めて、俺はディーゼル=ジョンだ。俺は君らの担任、そして剣を教える。スキルは剣豪。剣で強くなりたいのなら俺に来い。」
「ガッハッハ!俺様はガタナ=バマーハ!俺様は副担任だ!スキルは槍豪だ!槍を教えてるぜ!」
「早速出席をとる。呼ばれたものは返事をしろ。アーケィ=ミール。」
「はい!」
「アガディール=ガラハド。」
「はい!」
…
「全員いるな。まずは自己紹介だ。一年はこのメンツで学ぶ。俺もお前らのことを知りたいしな。」
「ハイハイ。俺はランドルフ=ランフィース。スキルは剣聖。確かに悪魔を倒したのはすげーとは思ったが俺は剣聖だ。テメェから学ぶ気はそもそも無い。以上。」
ランドルフ…
「僕はアガディール=ガラハド。王族ではあるけど、みんなと仲良くしたいな。スキルは聖君。皆、共に頑張ろう!」
聖人君子か!
「私はアルティア=ガラハド。目標は消えたあの方を探して嫁になること。スキルは魔帝。魔術ならまかしてくださいまし。」
え、待って、まさか探して…
「僕はノン=ゴルフィード。スキルは勿論賢者さ!趣味は研究さ!よろしくね!」
賢者のゴルフィード…彼は噂に聞くと研究でとじこもって出てこない…なんてことがよくあるそうだ。
「ナナはナナ=フリューハル。聖女です。え…と…よ、よろしくおねがいしましゅ!」
聖女のフリューハル…おっちょこちょいでそれが癒しだというものが多い。
「キラーズ=メルロッサ。スキルは軍神。俺は馴れ合うことはしない。目標は世界一の軍師だ。」
軍神のメルロッサ…一匹狼な気質だというがそれで軍師なのか?
まぁ王族と四柱貴族の挨拶が終わりチラホラと他の者の挨拶が始まった。
因みにこの一年生はこうだ。
アーケィ=ミール 女
アガディール=ガラハド 男
アルティア=ガラハド 女
ウィリアム=マクダ 女
オールド=ガスト 男
カルナ=メメントス 男
キラーズ=メルロッサ 男
ククリーナ=ミーナ 女
ケニー=ファール 男
シーナ=シシーハル 女
タターティ=イトゥーニョ 男
ディビット=ポチ 男
ナナ=フリューハル 女
ノン=ゴルフィード 男
ハーミルド=アルカディ 男
ホープ=ファース 女
マイケル=イーデン 男
メントー=ミミック 男
ヤールカ=モンハード 女
ヨン=マロン 女
ランドルフ=ランフィース 男
リチャード=エヴァンス 男
リューゼス=ガタナ 女
レディム=ファルコ 女
ワズ=ガガハード 男
男14人、女11人、計25人だ。
出席番号順で表示した。
「自己紹介は以上、か。今日はこれくらいだ。机の上のものを確認して寮へ移動しろ。困ったことがあったらだが俺は常勤ではないから困ったときは常勤のガタナ先生に。明日から忙しいぞ。夜ふかしするなよ。」
「「「「はい!」」」」
この学校は全寮制。
それは生徒を守るための措置。
名簿を見てどの生徒がどの寮かを確認する。
寮にはクラスがある。
まぁ勿論お金で決まる。
最高クラスのAクラスは部屋が広いし個人の風呂もついて専用の使用人を宛てがわれる。
料理も美味しいし学校自体近い。
最低クラスのFクラスは必要最低限なものだ。
部屋は狭いし共同浴場で小さいしトイレはその寮に男女一つのみ、使用人なんていない。
料理は自分で作ったほうがマシか?と思うメニューもあることがあり、その日その日でメニューが決まる。
そんな感じだ。
教師は近ければ自宅から通っていいし教師専用の寮がある。
教師専用の寮はAクラス並だ。
因みに自宅はあるが全員寮を取ってある。
物を置いておけるし忙しいときは近い寮で眠る人が多い。
勿論俺も寮を取っている。
ファーラの隣の部屋だ。
家具は備え付けのものがあったがファーラがいつの間にか取っ払い綺麗な俺用の家具を運び込んであった。
寮の部屋に行きベッドにダイブした。
「疲れた。」
ほんの少しだったが疲れた。
「お疲れ様ー。」
アモンが具現化し水を差し出した。
それを受け取り飲み干す。
「はぁ…まさかアルティアがなぁ…。」
「どうしたんだ?」
「…元の家の婚約者。追い出されたのに探し出そうとしてるみたいだ。俺が俺だとバレたら…。」
「ヒェー女はどこまでも追いかけてくるぜ。」
「…怖いな。」
「まぁな、そーいや呼ばれてただろ?」
「あ、忘れてた。行くか。」
部屋が出て学園長の元に行こうとすると呼び止められた。
「先生。少し、よろしいでしょうか?」
「ん?あ、ああ。アルティアだな?なにかようか?ガタナ先生に言えば…。」
「ディーゼル先生に用事があったんです。ね?ディール。」
「!?」
「分かりましてよ。雰囲気も、声も、魔力も剣も。変装しているだけなら私には分かりましてよ。」
「…中に。」
「ありがとうございます。」
ば、バレた…
中に戻り椅子に座らせた。
アモンに頼んで音を遮断してもらった。
「アルティア。」
「ええ!やっと、やっと会えましたわ!まさかあの方達がディールの良さを分からずに追い出してしまうだなんて信じられませんわ!婚約者を解消されたとしてもあんなランドルフとは婚約しませんわ!私の婚約者はディール唯一人…。ディールのスキルは聞きましてよ。一日二種ガチャ、スキルと武器を一日一回、ガチャすることができるスキルなのですよね?」
「あ、ああ。」
す、凄い話すな…
「やっぱりすごいですわ!一人一つのはずのスキルを一日一つ取れるのでしょう!そしてその中にはランドルフを超すスキルも出てくるのでしょう。ディール、私は諦めませんわ!学園では確かに生徒と教師の立場…ですが、それ以外は全力でアタックさせてもらいますわよ!」
「ア、アルティア…。」
「ふふ…まずはお弁当ですわね!ディールは剣術の授業ではないときはいらっしゃらないのかしら?何をしているのかお聞きしても?」
「冒険者をしてるよ。それでここの学園長であり、ギルドのギルドマスターであるファーラの養子になってここの教師をやることに決まったんだ。」
「そうなのですね!では栄養価の高いお弁当をお作りしますわ!ふふ!ディールですもの!直ぐに有名な冒険者になりますわ!私、応援しますわ!」
「ありがとう、アルティア。えっと…俺なんかにはもったいないんだろうけど…アルティア、俺の恋人になってくれません…か?」
「!ええ!勿論ですわよ!ディール!そうね!この学園を卒業したらこの国を出て旅をしましょう!ルールになんてとらわれず!自由に!」
「!ははっさすがアルティア!エスコートさせてもらうよ。」
「よろしくお願いしますわ!では、今日はもう遅くなってしまいましたので私の寮に戻りますわ。また明日、お弁当をお持ちいたしますわ!」
「はは、楽しみにしてるよ。…そしてありがとう。」
「!勿論ですわ!」
バタリ。
「アルティア…本当にありがとう。」
「ヒヤヒヤしたぜ。良かったのか?」
「ああ。俺を探しに来てくれたんだ。こんな俺を…それにアルティアは昔から知ってる仲だ。」
だから…信頼してもいいかなって…