肆 ミラル学園
学園に着き、メイクをし直して教師たちの前に立つ。
「ディーゼル=ジョンだ。スキルは剣豪だ。」
「まだまだ若いじゃないですか、学園長。こんな青臭いガキがここの教師が務まるとでも?」
「うむ。スキルを使わずとも強い。ガタナ、一回戦ってみてはどうかな?」
「それはいい!ディーゼル。俺はお前を案じて言うぜ。今すぐ辞退しな。ここの学生共はお前のようなヒョロヒョロ野郎には務まらねぇぜ?」
「まずは自己紹介してほしい。そして、俺は強い。」
「…そうかい。じゃあみんなはちょいと離れてな。俺様はガタナ。ガタナ=バマーハ。スキルは槍豪だ。」
剣豪の槍バージョンのスキルだな。
訓練用の木刀を渡され、ガタナは訓練用の木槍を持った。
「では、僕が合図を出そう。」
父…ファーラが審判をするようだ。
「では、始め!」
「オラァ!」
声出してくるとか…見た目通りの脳筋だな。
バックステップで避けて腕を打つ。
「な!?」
「まだまだ次だ。」
流れるような動きで部位を打つ。
主に槍を持つ腕。
このくらいの相手ならランフィースで習った剣術だけでも対応可能だ。
剣神など使う必要はない。
ああ、俺が優位にたってるからガタナが弱いと思わないでくれよ。
ガタナは主に重心を動かすのが上手だ。
そして槍の扱いも流石と言える。
的確な突きでみな急所を少し外した狙いである。
ここまで繊細な槍は初めて見た。
流石国一番の学園の教師。
暫く打ち合いダメージの蓄積で槍が持てなくなったガタナが槍を落とした。
「そこまで!勝者ディーゼル=ジョン!」
「ハァ…ハァ…マジかよ…俺が手も足も出ねぇとは。認めるぜディーゼル。お前はこの学園に相応しい。」
流石実力主義というわけか。
「では自己紹介の時間と行こう!」
「じゃあ改めて!俺はガタナ=バマーハ!槍術を教えてるぜ!」
「私はララス=メフィーサ。魔術を教えてるわ。」
「僕はカタシ=アオーラ。基本座学担当だよ。」
「俺はメイナーズ=ガラコダー。弓術だ。」
「僕、サアカ。サアカ=ワンダールー。古代学。」
「私はマリア=フファールよ!回復術担当なのだわ!保健室も担当してるのだわ!」
「我、ノハーリズ=モサードス。図書担当。」
「私はゲケロ=マイター。副学園長だよ。よろしくね。」
「で、君、ディーゼル=ジョンが、剣術担当だよ。まぁこれがメインの教師たちだよ。さて、明後日が入学式だ。色々と先輩教師に教えてもらうといい。僕は仕事があるからここで失礼するよ。」
「はい。ありがとうございます。」
「ふふ、良いんだよ。」
というわけで。
ミラル学園の説明をする。
ミラル学園は6年制。
各学年に担任が一人、副担任が一人。
俺は一年の担任となることに。
新任は皆一年の担任だという。
副担任じゃないのかと思ったが自分のスタイルを決めるためだという。
というか担任はメインの授業持ちではないとだめなので図書担当とかだったら副担任からになっていたという。
俺は剣術で、新任なので一年の担任となる。
つまり、俺の懸念していた彼らの担任というわけだ。
頑張らなければ。
まぁ週三なので俺が出ない日には学園長が直々に担任をしてくれるとか。
職員室にて一年の名簿を渡され、学園を案内された。
まず最初に俺が教える一年の教室。
広い…
大きな黒板に半円状の机が並んでいる。
大きな窓から日が入り綺麗だった。
次に闘技場。
先程戦っていた場所ともう一つの場所。
先程いた場所は訓練用。
闘技場α。
もう一つは決闘用だ。
闘技場β。
決闘用は魔機で映像を保存することができる。
学園のルールに決闘では闘技場βを使うとある。
次に図書室。
高く、広い空間に本が所狭しと詰まっている。
貸出は一人5冊で7日間。
延長は出来るが手続きしないと図書担当のノハーリズ追い掛けられ徹底的に絞められる。
俺も借りれるので時間があるときは読んでみることにする。
次に職員室。
職員室に戻り俺の席と、その周囲の席…皆挨拶した人達だったが…を紹介された。
アンティーク調の部屋で広い。
空間拡張機能がついたロッカー。
広いデスク。
使いやすそうな便利な魔機達。
さして入学式をやり、運動のための体育館。
空間拡張機能で外から見るより中はとても広い。
あとは各教室。
一階に一年と二年。
二階に三年と四年。
三階に五年と六年。
の教室棟である。
隣に教員棟があり、職員室と保健室と図書室等があり、その反対側に武術棟がある。
武術棟はメインの四武術の剣術、槍術、弓術と、魔術用の施設があり、その中心に体育館や闘技場二つがある。
その他に庭園や研究所、トレーニング室や遠くから来た生徒用に寮がある。
とまあこんな感じか。
ファーラによると隠し部屋見たいのが多々有るらしい。
教材を受け取り中身を確認する。
とはいえ俺がやるのは剣術と担任としての仕事くらいだ。
特に剣術を見る。
国がメインに教えている『ランフィース流』がメインだ。
後は少数派の『ガレス流』や『ミドル流』、『マーマルド流』、そして『刀流』。
一応剣神で全ての流派の剣術は動ける。
が、やはりランフィース家としてずっとランフィース流で訓練してきたので一番はランフィース流なのだろう。
まぁこの学園ではランフィース流がメインだが他の流派もある程度は教えることになっている。
試験はランフィース流だが。
闘技場αに移動して俺は刀の模擬刀を掴む。
刀流の動きをして体に慣らすしていく。
刀流は純粋な剣術とは勝手が違う。
片刃で刃の向きを変える。
重さも軽いので扱いが難しい。
そして、他の流派も少し試した。
職員室に戻ろうかと模擬刀を片付けるとパチパチと拍手が聞こえてきた。
「ファ…学園長。」
「ここには僕しかいないのにね。流石、剣神。流石僕の息子よ。」
「父。」
照れくさくなって頬をかく。
「ディール以上の剣士は居ないよ。ディールの振るう剣を見ていたけど美しかった。見本よりも綺麗で、華やかで、真似なんて恐れ多い。」
「じゃあセーブしながら教えなきゃいけないかな。」
「そうだね。けど僕にはディールの力を見せてくれ。」
「うん。あ、明日は冒険者として活動したいんだけど。」
「分かった。今日はもう帰るかい?」
「帰る…?」
「何不思議がってるんだい?ディールは僕の息子だろ?一緒に僕達の家に帰ろう。」
「あ…はい。父。」
そっか。
今の俺には帰る場所があるんだ。