参 父
ファーラ=クラーチェの手により変装が施された。
その姿は長い金髪に伊達メガネ、その奥の瞳は青く、どこにでもいそうな色の髪と瞳だ。
メガネで理知的に。
少し焼けた肌にメイクをして他にも色々メイクをしてディーやディーゼル、そしてディールが同一人物だとは気付けまい。
シークレットブーツで背を高く見せ、学園指定の教師用のスーツに着替える。
おお、動きやすい素材でできている。
聞くとワイバーン牙メインに使われているとか…
剣はオーソドックスなタイプの長剣。
ミスリルソードだ。
おっと、今日の分のガチャをやろう。
結果は…
『風の弓』と『探知』。
中々便利だった。
最初の運がなかっただけかな?
まぁガチャだしね…
風の弓は風属性が弓に宿っていて矢がなくても風の矢を放てるすぐれもの。
探知は便利でマッピングとリンクさせるとマップにどんな植物や動物がいるか、人が居るか等が表示できるようになった。
リンクしないとどっちの方向に人が居るみたいな感じだ。
因みに種族や種類、性別が分かるくらいでそこらへんは鑑定の範囲なのだろう。
今日は顔合わせだよとファーラは笑いながら言う。
馬車に乗りミラル学園に向かう。
まだまだ若い教師として向かうが本当に大丈夫なのだろうか。
ミラル学園といえば、有名な貴族はこぞって子供を入学させたいと言う学園なのだ。
もし俺が剣聖のスキルを得ることが出来ていればこのミラル学園に入学していただろう。
そろそろ入学の時期。
俺と同い年の子供たちが集まってくる。
つまりランドルフがこの学園に入学してくるのだ。
他にも婚約者だった彼女や幼馴染みの彼らも入学してくるだろう。
ああ…学園で無事に教師という役を出来るのだろうか。
「不安かな?君の知り合いが今年入学してくるからね。君の弟だって。」
「ええ。不安…です。怖い…です。彼らが、俺をどう思っているか。バレたらどうなるのか。」
「安心しなさい。僕は学園長だよ?そして君はまだ子供だ。君を教師にと推薦している僕が言うことではないんだろうけどまだ甘えていい時期だ。何時でも僕のところに来るといい。そうだね…僕が君の新たな父になろう。何かあったら僕に相談してくれ。僕に吐き出してくれ。」
「あ…あぁ…。」
俺は。
父に愛されたかった。
父は時期当主、剣聖として俺を育てた。
父として接してくれなかった。
俺は母に愛されていた。
それに苛立った父はもっときつい訓練を俺に課してきた。
俺自身を見て話すことはなかった。
剣聖のスキルをもらう俺を、時期当主として見ていた。
父は俺を愛すべき家族としてみてくれなかった。
俺は父に愛すべき家族として見てほしかった。
だから頑張った。
辛くても、弟が威張り散らしても、父から打たれても、誰もディール=ランフィース自身を見てくれなくても。
愛されたかった。
愛されたかったんだ。
けどスキルが違っただけで、一回目のガチャが悪かったせいで。
俺は父との繋がりが絶たれた。
父は父ではなくなってしまった。
俺を、見てくれてはいなかった。
「あ、愛してくれますか?こんな俺を俺自身を見てくれますか?褒めてくれますか?慰めてくれますか?抱きしめてくれますか?俺を見て、話してくれますか?」
「ああ。見よう。ディール。君を愛そう。父として、君を愛そう。だから泣き止んでくれ。僕の息子よ。君の笑顔を見せておくれ。」
「うう…グスッ…はい!」
俺は涙で顔がぐちゃぐちゃでメイクも駄目になってしまったけど、笑顔でファーラ…父の顔を見た。
「ふふ、ついたら顔を洗ってメイクをし直さないとね。それと、今日からディールはディール=クラーチェだ。」
「!はい!」
ああ…俺は幸せものだ。
そう、自信を持って言える。