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奴隷市場に、私を婚約破棄した王太子が売っていたので買ってきました。[全年齢版]  作者: 曙はるか
第二章

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第六話 奴隷の思い - 罰の形 -

 馬車での移動の最中、私は座席に座り外をぼんやりと眺めていた。

 国境を越え、北の地方に行くまで十日ほどの日程だった。


 私の首を掻き切れと言った長身の騎士バルドゥルは、あれ以来、私と目が合うと逸らすことなく睨んできた。

 彼の目には憎しみが滾っていた。


 それが正常な反応だった。


 けれど私の周りを常にエヴェリーナとその供の獣人やエルフが固め、バルドゥルは希望を果たすことはできなかった。

 バルドゥルだけではない。途中から合流した騎士達は、私の姿を皆、驚愕の眼差しで見つめ、それから憎悪し侮蔑した。

 だが、一部の者達は同情し、こう囁いていた。


 王太子の目を抉り、足の腱を切り

 その背に鞭をくれ、夜な夜な伽につかせている

 奴隷の身に堕として寵愛している


 相変わらず恐ろしい“赤の姫君”だ。



 それを彼女は否定せず、噂が広がるに任せていた。

 そして、彼女は私がその噂を否定することを許さなかった。



 道中の宿で、私は彼女に言った。


「貴女の名誉にかかわることですよ」


「私の名誉なんてとうに地に堕ちているから関係ないわ」


「……………」


「あら、心配してくれるの? 優しいわね」


「……私のためなのか? 私が貴女からひどい目に遭っているとされれば、私を罰しようとする者の手が緩むと」


 彼女は私の頬に手をやり、私の左目の眼帯に口づけた。

 右目はポーションで癒してくれたが、彼女は、左目はそのままの方が良いだろうと言って、そのままにしていた(ひどく傷つけられた部分が残っている方が同情を寄せられると言うのだ)。


「実際、貴方は十分ひどい目に遭ったと思うけれど。王太子なのに奴隷になって、両目は抉られ足の腱まで切られるってなかなか凄まじいわよね。それでも足りないって、これ以上何をしたいのかしら」


「私の命が欲しいんだろう」


 その言葉に、彼女は腕を組んでうーんと頭を傾げていた。

 宿の寝台の上で、彼女は薄着だった。

 そうすると、細身の割には豊かな彼女の胸が寄せられて、非常に魅力的な様子になり、私は視線を逸らさなければならなかった。


「前にも言ったけれど、死ぬのって楽になることだと思うけど。死こそがご褒美だと思っちゃうんだけどな。生きて這いずって苦しんでいく方が余程、相手に対する罰だと思う」


「……貴女もそのつもりで私を生かしているのか?」


 その問いかけに、彼女は頭を傾げたまま、何故か笑って言った。


「そうかも知れないわね」




 そして母国に向かうその頃から、彼女は私に触れ出した。

 今までは「いらない」と言って、私の奉仕を拒絶していた彼女だったが、それを受け入れるようになっていた。

 

 理由は簡単で、私が彼女に隷属して、私が彼女からひどい目に遭っていると周囲に思ってもらうが為だった。


 だけど、それは私にとって大変なご褒美だった。

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