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奴隷市場に、私を婚約破棄した王太子が売っていたので買ってきました。[全年齢版]  作者: 曙はるか
第二章

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第四話 騎士の思い - 驚愕 -

 一週間後、かつての主君の娘、エヴェリーナを迎えに行った私は驚愕していた。


 エヴェリーナは自身の配下を異種族の奴隷で固めている。獣人マンセルとクランプ、エルフのリザンヌのことは、私も知っていた。

 だが、馬車に座っている黄金の巻き毛の青年を見た時、私は文字通り驚愕して動けなかった。


「……………セオルグ……か?」


 王家の青い血をそのまま伝える繊細な美貌。蒼い美しい瞳に、すらりとした肢体。

 

 それを認めた瞬間、怒りに血が沸騰した。

 私の手がすかさず腰の剣に伸び、鞘から剣を抜こうとしたところで、マンセルがその手を押さえた。


「やめろ、エイヴの奴隷だ。アレは」


 その言葉に、私は口を開いた。


「………ど……奴隷?」


 よく見ると、彼の首元には隷属の首輪がはめられていた。

 御者台のエヴェリーナは何故か笑みを浮かべていた。


「そう、彼は私の奴隷なの。私の所有物だから、傷つけたりしたら、私は怒るわよ」


「王太子を……奴隷になさっているんですか?」


「そうよ。貴方のにっくき王太子殿下は私の奴隷なの。いい? そのことを理解しておくべきね」


「何故、何故、さっさとその首を掻き切ってやらないのです。貴女がやらないと言うのなら、私がやってやる」


「それでおしまいでいいの? バルドゥル」


 彼女は、その唇を弧の字に釣り上げて、笑みを浮かべながら言った。


「それでおしまいなら、一瞬よね。バルドゥル。私はこの男を苦しめるために、この男の目を抉り、逃げ出さないように足の腱を切ってやったわ」


 その言葉に、私は馬車に乗る男の姿を見つめた。

 見れば、彼の左目には眼帯が付けられていた。

 手許には杖もある。

 

 目を抉り、足の腱を切ったというのか。


 エヴェリーナ様が?


 そのことにも愕然とする思いだった。


 私の知る幼い頃の彼女は、心の優しいひどく大人しい少女だった。




「その背中にも鞭を打ったわ。彼は私の奴隷なの。罰するのは私に権利があるわ。貴方はそう思わない?」


 そう問われ、私は震える声でうなずいた。


「仰せのままに、お嬢様」





 だけど、私は八年前に、彼女が変わったことを知っていた。

 

 重いものなど持ったことのない、その華奢な手は、魔法で強化され獣を引き千切る。

 何十何百、何千という魔物を屠り、その赤い髪は返り血で真っ赤に染まった。

 緑の瞳には狂気が浮かんでいた。


 真っ赤な赤い髪と、その恐ろしい強さを目にした者達は、畏怖と尊敬と、恐怖を込めて彼女のことを“赤の姫君”と呼んでいた。


 彼女は弟が死ぬまで、戦闘の訓練を受けたこともない深窓の姫君だった。


 それを変えてしまったのは、私のせいだった。

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