表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
奴隷市場に、私を婚約破棄した王太子が売っていたので買ってきました。[全年齢版]  作者: 曙はるか
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/30

第十五話 裏切りは御免だから

「……………」


 リザンヌは、私を見てため息をついていた。


 私もため息をつきたい。


「エイヴ、貴女、何がしたいの? セスと一緒の寝台で寝ていて、彼には何もさせてないの?」


「セスは私の愛玩物(ペット)だから」


「は?」


「私の愛玩物(ペット)


 リザンヌは両手で顔を覆った。


「貴女、おかしい。貴女おかしいわよ。愛玩物(ペット)!! あー、エイヴ、あんたって、けっこう美人だってこと知ってる? 身体だっていい胸しているのよね。男だったらすぐに寝台に引き込んでしまいたい、いい女よ。それなのに、セスと一緒に寝て、やることはしていない」


「彼は目が見えないから、私の胸が大きかろうが、顔が美人だろうが、関係ない。目が見えないから」


「…………生殺しって言うのよ。セスが可哀想だわ。貴女、ちゃんと寝てあげないなら、セスと部屋を分けなさい」


愛玩物(ペット)だから、主人のそばで仕えるべき」


 以前は、この屋敷に慣れてきたら階下にセスの部屋を作ってあげようと思っていたが、すっかりその気持ちは無くなっていた。だってちょうどいい抱き枕なのだもの。


「貴方、いつかセスに襲われるわよ!!」


「大丈夫、私の方が強いから」



 


 リザンヌはガッと私の両肩を掴んだ。


「八年間、貴女と一緒だったから、私は知っている。貴女、処女よね」


「…………………」


「男っ気まったくないものね。マンセルとクランプも手を出していない」


「私の方が強いから」


 リザンヌは顔を両手で覆って嘆いた。


「ああ、こんな子に育てた覚えはないのに」






 八年前、一番最初に奴隷市場で購入したのは、このリザンヌというエルフの少女だった。

 非常に高価な奴隷だったが、彼女は何も知らない私をよく導いてくれた。

 誰も信頼できないのなら、信頼できる奴隷を増やしていけばいい。

 そう言ったのも彼女だった。


 だから、私はその後にマンセルとクランプを買ったのだ。


 私は国を出る時に、相当な資金を持ち出していた。

 

 双子の弟のリンデイルがそう勧めたからだ。





 誰も信用できないなら、金で身を固めるしかないよ。

 姉さま


 金は貴女を裏切らないから




 そしてリザンヌも、奴隷なら裏切らないと言った。

 主人に尽くすよう、隷紋で縛れるから。







 私は、裏切られるのはもう御免だった。



 





 リザンヌは、私がセスにしていることは「ヒドイ」と言った。

 男の沽券にもかかわる行為だと言った。


 そんな「ヒドイ」ことをしているつもりはない。

 

 良質の食事を与え、仕事を与え、ふかふかの寝台で眠る。


 実は、私は彼と一緒に眠るのが好きだ。

 

 あの金の巻き毛を見ていると、遠い過去を思い出す。


 悲しみと苦しみのもっと向こうにある、遠い過去の中の幼い私は、幸福の中を生きていた。


 きっとセスは知らない。


 その頃の私の小さな幸福と、その後の私の不幸を、彼は知らないだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ