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楽しいサッカークラブのつくり方  作者: カミサキハル
【第四章】暫定指導者とサッカークラブ
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潜在能力

「この子たち、上手いなぁ」


 千佳がゴールを決め、小さく握りこぶし作っているのを見て水上は呟く。


 現状は一対一の同点。ゲーム内容も初心者がいるにも関わらず質が高く、各メンバのプレースタイルが良くわかる。


「本郷さんはトップ下、もしくはボランチかな」


 全体が見えて彼女自身も献身的に動く。守備もできるから、中盤の底でプレーすることが合っているだろう。


「岸本……理紗さんはトップ下か左サイドで、美紗さんはセンターバックだな」


 岸本双子はそれぞれ攻撃、守備に偏りがある。理紗は守備が苦手そうだし、美紗は率先して攻撃に参加しない。姉妹で得意不得意が対になっているようだった。


「吉野さんは右サイドハーフで川内さんは……キーパー以外だとセンターバック」


 由依は右利きで右サイド。カットインでゴールを狙うより、センタリングで味方に合わせることが好きそう。

 みさきはゴールキーパーに近いポジションが性に合っている気がする。声出しもできるし、後ろでどっしりと構えることが向いている。

 ただパッと見た感じ、美紗とみさきをセンターバックの言葉で一括りにはできない。

 チャレンジ&カバーをするなら、常に美紗がチャレンジ、みさきがカバーをしそう。


「大嶋さんは……フォワードかな?」


 センターフォワードというよりはちょこまかと動き回る選手。前線でいろんなところに顔を出してボールを受け取りそう。

 足の速さは水上には分からないが、ディフェンスラインの裏へ飛び出す動きが得意になるかも。


 水上は頭の中で彼女たちのことを思い浮かべつつ、ミニゲームを眺める。


 得点した後、ゲームは膠着していた。

 声を掛け合いパスを要求し、攻撃を仕掛けているが、得点には結びついてついていない。

 決定機を作らせないためにキープレーヤーにマンマークして攻撃をシャットダウンしている。


 それに両チームとも佳央梨を経由して攻めようとしている。それだけ佳央梨がいいポジショニングをしている証拠だ。

 だけどクラブチームを結成しようとしている彼女たちにとって、それはいいことではない。


 佳央梨にフリーマンを指名したことが裏目に出たか。


「まあ最近運動していないらしいし、あれだけ動けばすぐに疲れるだろ」


 佳央梨を経由しないプレーも見てみたい。そのために彼女の足が攣るまで五分間ミニゲームを繰り返すか、と大学時代の同期に対して非情なことを考える。

 すると邪な考えが伝わったのか、佳央梨が水上を見た。右手で左手首を叩き、残り時間がどれくらいなのか聞いてくる。


 水上は時計を見て、口元に手を添える。


「残り二分。最後まで集中して!」

「まだそんなにあるの!?」


 残り一分ほどだと思っていた佳央梨は思わず叫ぶ。

 運悪くそのタイミングで出された千佳からのパスに対応できずトラップミスをした。そのボールは理紗に奪われる。


「湊、集中しろ」

「っ、分かっているわよ!」


 水上に対して悪態を吐き、ボールを追いかける。


(や、フリーマンがプレスをかけにいったら駄目でしょ)


 フリーマンは攻撃側の味方。しかしボールを奪われたことで咄嗟に体が反応したのだろう。

 攻守の切り替えは重要だけど、今の佳央梨には不要だ。


「湊!」

「分かっているって!」


 佳央梨はボールを追いかけることを止め、体を反転させてボールを要求する。

 キープしていた理紗は佳央梨へボールを出し、佳央梨はそのボールをみさきへ下げ、攻撃の体勢を整える。


 佳央梨のプレーを見て水上はため息を吐く。


(この子たちが試合をするとしたら……)


 佳央梨のことは放っておいて、ミニゲームを眺めつつフォーメーションを考える。


 ゴールキーパーはみさき。

 ディフェンダーはセンターバックとして美紗。

 ミッドフィルダーは真ん中に千佳と理紗、サイドに由依。

 フォワードは藍那。


 基本的には「4-2-3-1」のフォーメーション。もしくは由依を一つポジションを上げて「4-3-3」の形か。


 時計を見る。そろそろ五分が経過しようとしていた。


「ラストワンプレー!」


 ボールがラインを割り、プレーが中断したタイミングで声をかける。

 全員が水上を見たが、すぐに視線を外し再開に向けて集中する。


 いい雰囲気。練習をしっかりすれば試合でそれなりにいい結果が残せるだろう。


「まあ、実際にチームを結成して試合ができるかどうかは分からないけど」


 そこは彼女たち次第。


 チームを創る目的を今一度見つめ直して、その答えを教えて欲しい。


 脳裏で彼女たちの答えに期待しつつ、水上はボールがタッチラインを割った瞬間に笛を吹いた。

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