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楽しいサッカークラブのつくり方  作者: カミサキハル
【第三章】それぞれの日常
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放課後の会議

 敷瀬(しきせ)駅前のカフェ「スタダ」の一角。藍那、みさき、由依、そして岸本姉妹がそれぞれ飲み物を注文して座っていた。


「ではー、第n回チーム会議を始めたいと思いますー」


 みんなが集まり一息ついたところで、みさきが宣言する。


「なんやその「第n回」ってのは?」

「藍那ちゃんと千佳ちゃん、それにあたしの三人で話し合っているからねー。何回やったかは忘れちゃったけど」

「それで「第n回」か」

「そういうことー」

「で、今日のチーム会議のお題は?」


 五人が顔をそろえて会議をしたことがないから、認識を合わせたほうがいいと理紗は感じたからだ。

 みさきはノートを取り出し、テーブルの真ん中に広げた。残りの四人はそのノートを覗き込む。

 一行目に「第n回チーム会議」と今日の日付、その下の行に「練習日の決定」「ユニフォーム案」「チーム名」と横並びに書いてあった。


「今日はこの三つを決めたいかなー」

「了解や」

「で、何から決めるの?」

「これかなー」


 美紗の質問にみさきは「練習日の決定」を指差す。


「これが決めやすいと思うんだー」

「本郷さんがいないけど、決めて大丈夫なの?」


 この場に唯一いない千佳の名前を出す由依。


「この中だったら一番サッカーが上手いと思うから、本郷さんのスケジュールに合わせたほうがいいと思うけど……」

「そこは大丈夫ー」


 ふっふっふと笑い、みさきはスマートフォンの画面を見せる。


「事前に千佳ちゃんから吉川高校の時間割をもらってるんだー」

「用意周到ね」

「えへん」


 胸を張るみさき。


「藍那ちゃん、東山高校の時間割出せるー?」

「うん」

「美紗ちゃんは西寺学園の時間割出してー」

「わかった」


 それぞれが時間割を取り出し、テーブルの上に広げる。


 まず五人は千佳の高校――吉川高校の時間割を見る。吉川高校は金曜日が七限まであり、土曜日の午前にも授業があった。

 それ以外の日は六限までの授業となっている。

 次にみさきと岸本姉妹の高校――西寺学園。こちらは月曜日に七限、そして土曜日の午前に授業がある。

 最後に藍那と由依の高校――東山高校。西寺学園と同じく月曜日に七限があり、土曜日・日曜日に授業はなかった。


 じっと五人は時間割を見比べる。


「これだと火・水・木・日のうち、いつ練習するかだね」

「あー、水曜は難しいんちゃう?」


 理紗がストローから口を離し、藍那に意見する。


「あの河川敷なら駅の北にある大学――敷瀬大学やったっけ?――のサークルが使っているらしいで」

「どうしてそんなことを知っているの?」


 引っ越してきて間もないはずなのに、大学のサークルのことを知っている姉に美紗は目を丸くする。

 すると理紗がどや顔になった。


「ネットで調べたら出てきた。確かフリスビーサークルやったと思うで」


 理紗はスマートフォンの検索履歴からサークルのサイトを見つけ、妹に見せる。


「本当だ。いつ調べたの?」

「今日の午後の授業中」

「……理紗、授業を何だと思っているの?」


 不真面目な態度に呆れ、睨みつける美紗。理紗は冷や汗を流し、たじろぐ。


「せ、せやけど、練習できない日を事前にわかってよかったやんか」

「結果論よ。引っ越していたばかりなのに、そんなことをしていたら、後々大変なことになるわ」

「正論ね。授業についていけなくなるよ」


 由依が美紗の肩を持つ。理紗は困ったように藍那のほうを見るが、彼女は苦笑いしているだけで助け舟を出そうとはしなかった。


「みさきー、助けてくれ」

「理紗ちゃんを問い詰めるのは家に帰ってからにしてねー」

「親に報告かな」

「止めてくれ……」

「話し戻すよー」


 がっくりと肩を落としている理紗の隣でみさきはノートに書き込んでいた「水曜日」の上にバツ印を書く。


「他にこの日は絶対に駄目ってのはあるー?」

「に、日曜日の午後は難しい……かも」


 おずおずと手を上げながら藍那が言う。


「お(うち)の手伝いをしないといけないから……」

「りょーかい」


 日曜日の単語の横に「午前のみ」と追記する。追記したあとみさきは他のメンバの顔を見るが「大丈夫」と全員が首を横に振った。


「じゃあ、この四日で練習を調整しよっかー。場所は昨日練習した河川敷だけでいいよねー?」

「今のところはいいんじゃない? 他の場所だったらお金かかるし」

「オッケー」


 練習日の項目に「練習場所:いつもの場所」と書き込み、写真を撮る。


「あ、そうだ。「RiME」でクラブのグループトーク作らない?」


 みさきが写真を撮っているのを見て、美紗が思いついたように言う。


「そうだね」


 最初にうなずいたのは藍那だった。


「わたしは必要だと、思う」

「私も賛成。そのほうが情報共有しやすいし」


 異議はなく、由依も賛成する。


「じゃあ、藍那ちゃんグループ作成してー」

「わかった」

「作ったらあたしを招待して―。りさみさを招待するからー」

「なんや、その「りさみさ」は?」


 みさきの発した単語に理紗が反応する。


「岸本姉妹のことー。ちなみに使うのは二回目ー」

「コンビ名か」

「その反応も二回目」

「二番煎じやったか」

「……わかってて言っているでしょ?」


 由依の問いかけに理紗はにやりと笑う。


「あ」


 グループを作成していた藍那が「しまった」とでも言うように声を上げる。


「どうしたの?」

「グループ名はどうするの? 普通はチーム名だと思うけど」


 藍那の質問に五人は会議で決める順序を間違えたと感じた。

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