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楽しいサッカークラブのつくり方  作者: カミサキハル
【第二章】双子の従姉妹
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帰り道(藍那と千佳)

 電停に到着し、時間を見た。十八時四十分。あと五分で次の路面電車が到着する。

 藍那は路面電車を待っている列の最後尾に並び、今日のことを振り返っていた。


 今日の大きな出来事は、吉野由依、という藍那と同じ高校の女子生徒と出会うことができたこと。

 昨日知り合った岸本姉妹の従姉妹。中学サッカー部のマネージャをしていたから、サッカーの知識が豊富だった。


「藍那?」


 思い耽っていると、背後から声をかけられた。驚いて肩をビクッと震わせ、後ろを見る。


「あれ、千佳ちゃん?」


 そこにはジャージ姿の千佳がいた。今日は練習は休みだったから、なぜ彼女がジャージ姿なのか藍那は少し考え、思い出す。

 千佳は今日、彼女の通う吉川(よしかわ)高校のサッカー部で練習すると言っていた。


「練習の帰り?」

「そうよ」


 肩にかけていたエナメルバッグを地面に置く。

 藍那は普通に千佳と話していたが、一つ違和感を覚える。


「あれ? 自転車通学じゃないの?」

「朝乗ろうとしていたら、タイヤがパンクしていたのよ」


 昨日河川敷のグラウンドに自転車で行ったからだと千佳は思っていた。

 河川敷のグラウンドの近くは砂利道になっていて、そこを通った際に、尖った石がタイヤに刺さってしまったのだろう。

 自転車屋へパンクを直すにしても、週末の学校が休みの日に行かなければならない。


「路面電車と徒歩になると学校に行くのに時間がかかるから、とんだ災難だわ」

「お、お疲れ様」

「それにサッカー部の練習にも参加したから、くたくた」


 大きく息を吐く。疲れの色が濃い。


「練習はどうだったの?」

「今日は大半がミニゲーム形式の練習だったわ。男子は当たりが強いから、何度も倒されたわ」

「大変だね……」

「その分、充実しているけどね……っと」


 こほん、と咳をして「私たちのサッカークラブも楽しくできているわよ」と千佳は付け足す。

 その言葉を聞いた藍那は苦笑いした。


「わたしたちのサッカークラブはできたばっかりだから、充実は難しいかな」

「……充実させるにはまずは人数を増やさないとね」


 人数、という言葉を聞いて藍那は「あっ」と声をあげる。


「明日、新しい人来るよ」

「そうなの?」

「昨日、理紗ちゃんが言っていた親戚の子。吉野由依って名前で、わたしと同じ東山高校にいたの」

「へぇ」

「中学でサッカー部のマネージャだったらしいけど、ボールは蹴ることができるみたい」

「それは楽しみね」

「うん」


 路面電車が到着した。二人は乗り込み、発車するの待つ。

 しばらくして路面電車が揺れ、動きだす。


「その吉野って人とはどうやって出会ったの?」

「呆れるかもしれないけど……」


 そう前置きをしつつ、藍那は今日の放課後の経緯を説明する。

 案の定、説明すると千佳は肩をすくめた。


「何をしているのよ、あの二人は?」

「はは……」

「まあ、昨日「波長が合う」とか言っていたし、思考回路は似ているのかもね」


 似ていて困る思考回路だ。千佳の頭の中でみさきと理紗の評価が下がる。


「でも二人のおかげで由依ちゃんと出会えて、お話できたんだけどね」

「そう?」

「サッカーについても色々教えてもらったし」


 ファミレスでは教えてもらったことはノートに書き留めている。新しい知識が増え、サッカーに関する世界が広がった。

 家に帰ったらもう一度見直そうと藍那は考えていた。


「知らないことがまだまだたくさんあるね」

「近いうちに勉強会する?」

「それ、やりたいな」

「詳細は明日集まったときに決めましょう」

「うんっ」


藍那は大きくうなずく。


「次は大橋。大橋に停まります」


アナウンスが流れ、藍那はボタンを押す。


「次で降りるね」

「そう。じゃあ、また明日ね」

「またねー」


電停に到着し藍那は千佳に手を振り、路面電車から降りた。

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