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異世界英雄と22の召喚獣  作者: 十回十
Episode:1 黎明のコルアンディ
37/40

秘密兵器

 レオンとイレール会長に手伝ってもらい爆轟マナ結晶を無事予定の数まで精製できたのは12時過ぎだった。

 出来上がった爆轟マナ結晶は危険なので、できたそばからパンドラに開けてもらった倉庫の穴に突っ込んであり、しっかり300個揃っていることも確認した。

 ここからの作業は俺とサルバだけでもできるからと2人には校舎の方へ戻るように言う俺。

 だが、2人はまだ時間があるから最後まで手伝いたいと言ってきた。


「まだ工程は残っているのですよね、でしたら私たちもお手伝いします」


 マナ圧縮装置を使って作業していないことに気が付いたのか会長さんはそう言ってくる。


「学院長から今日のこの作業は帝国との戦争に必要なものを作るって聞いてます。だからこそ僕たちにも手伝わせて下さい! 僕たちも王国を守りたいんです!」


 2人は真剣な表情で俺に言ってくる。

 でもなぁ……ここからはマジで危ないしなぁ……

 俺がどうしようか考えていると、外から汗だくで上着を脱いだサルバがやって来た。

 烈火のマナキューブを運ぶ作業の途中であまりに暑くなったのか、サルバは上着を脱いで作業していたのだ。


「なんだ、どうしたリオ。そんなに悩んで」

「ああ。マナ圧縮装置を使った作業が結構危なくてな、下手すると大怪我するかもしれないから2人にこのまま手伝ってもらおうかどうしようか悩んでたんだよ」


 ちなみに今の大怪我というのは冗談話ではない。

 今から作ろうとしている物は〈AULA〉でも作るのが面倒くさい部類のアイテムだ。

 なにせ装置の扱いを間違えるとHPの5割を持っていくダメージを負ってしまう。

 しかも間違えた回数だけダメージを受ける。

 なので〈AULA〉では作業中に死ぬ場面も多々あった。

 俺はフレンドたちと一緒に作っていた時にミスを連発して死んではバカ笑いしていたが、こっちではそうもいかない。

 う~ん……

 俺は色々考え込んでいたが、人数が増えれば作業が楽になるかと思い答えを出した。


「わかった、2人とも手伝ってくれ。ただし、危険だと思った場合は即避難させるからな」

「はい!」

「ありがとうございます」

「よしっ! そんじゃとっととやっちまおうぜ!」


 俺は頷くとマナ圧縮装置の方に移動した。

 一緒に移動したサルバたちに次の工程を教える。


「そんじゃ次の作業について話すぞ。このマナ圧縮装置でさっき精製した爆轟マナ結晶を圧縮していく、これには特殊なアイテムを使用する。まず融合魔の体液、これをタンク容量の9割まで入れる」


 俺はそう言うと倉庫の中から濁った銀色の液体が入った腰くらいまである大きめの容器をいくつも出す。

 そしてサルバとレオンに頼み中身をタンクの中に入れてもらい、会長さんには側面にあるメモリを見てもらいどれくらい入ったかの確認して貰う。

 そうして融合魔の体液が規定の量入ったのを確認すると、俺は次に必要なものを取り出す。


「次にさっき精製した爆轟マナ結晶、これを10個入れる」


 先ほど融合魔の体液を入れたのとは違う口から爆轟マナ結晶を静かに入れる俺。

 綺麗に明滅を繰り返す結晶が銀の海に沈んでいくのを確認すると俺は最後のアイテムを取り出した。


「最後は、こいつだ」

「ん? なんかその金属どっかで見た覚えが……」


 俺が倉庫から取り出したインゴットを見てサルバは疑問を投げかけてきた。

 そりゃ見たことあるだろうな。

 俺が取り出したのは金色に光りの入り具合で虹色に輝く金属。


「お前はよく知ってるはずだろサルバ。いつも首からぶら下げてんだから」

「え!? お前、まさかそれって」

「お前の思ってる通り、こいつは神製合金(オリハルコン)のインゴットだ」

「「「ええぇぇぇぇええっ!?」」」


 俺がそう言うと、その場にいた異世界サイドの全員が驚きの声を上げる。

 すると顎が外れそうなほど大口を開いて叫んでいたサルバが言ってきた。


「ま、待てリオ! お前、そんだけデカイの神製合金、一体いくらすると思って」

「うるせぇ! どうしてもこいつが必要なんだよ! しかも今から作るもんには1つにつき5本もな!」


 俺が持っている神製合金のインゴットはかなり重さを感じるもので、片手で持つと手からはみ出るほどの大きさをしている。

 サルバの首から下げているタグがこの一本からいくつできるかと言われたら……恐らく三桁いくかいかないかくらいだろう。

 これから作る予定の数を計算すると実に150本もの神製合金インゴットをマナ圧縮装置に入れるのだ。

 これくらいでギャアギャア騒がれても困る。


「そんなに……」

「5本って、お前それ大貴族何人分の資産が作れると思ってんだぁ!」

「本当ですよ! それだけあったら領地買えるくらいのお金が」

「うっせぇ! オラァ!」

「「キャァァアアアア!!」」


 俺はそう言うと先ほどアイテムを入れた穴とは別の穴に神製合金インゴットをまるでメダルゲームにメダルを投入するかのごとく勢いよく入れた。

 それと同時に悲鳴を上げるサルバとレオン。

 会長さんはその様子を直視しないよう顔を手で覆っていた。

 銀色の液体に沈む5本のインゴット。

 さて、これで準備は整った。


「さてと、そんじゃあ始めるか! おい、そこの2人いつまでも変な顔で固まってるんじゃねぇ!」

「だって……だって……」

「そんな大金が絡むものだとは知らなかったぞ……リオ……」


 はぁ……

 とりあえず俺は二人の頭をひっぱたき、正気に戻した。

 その様子を会長さんは苦笑いで見ていた。

 俺は気を取り直し圧縮の手順を説明しはじめた。


「いいか、これから圧縮の手順を説明する。まずサルバとレオン、2人にはタンク横のハンドルを回してもらう。かなり硬いから気合入れろよ」

「おう!」

「了解しました!」

「ハンドルを回すと圧縮が始まるから俺が小窓から中の様子と計器を確認する。そして俺が合図をしたら会長さん、そこにある赤いボタンを押すんだ」

「わかりました」


 全員が俺の言った配置につく。

 緊張の中、俺は開始の合図を出す。


「いいぞ、回してくれ!」

「うっしゃあ!」

「ふんっ!」


 声を上げハンドルを回し始める2人。

 だがその声の勢いとは裏腹になかなか順調に回りださないハンドル。

 俺も〈AULA〉の時ハンドル役を何回もやったがアレはめちゃくちゃ重い。

 正直、現実でもあんなに力を使う作業はしたことが無かったほどだ。

 なかなか動かないハンドル。

 だが諦めずに力を入れ続けるサルバとレオン。

 すると――


ギ……ギィィ…… 


 ゆっくりと、金属の擦れる嫌な音を立てながら回りだすハンドル。

 その様子を確認すると俺は取り付けられた内部圧力を表す計器を見る。

 徐々に圧力が上がり針が動き始める。


「いいぞ、そのスピードを維持してくれ!」


 順調に圧力が上がり、中のアイテムも光を出しながら反応している。

 そして、反応が激しくなり計器の針も危険域ギリギリになったところで俺は叫んだ。


「今だっ!」

「はい!」


 俺の合図とともにボタンを押す会長さん。

 タンクの下側から勢いよく吹き出す煙。

 俺はすぐさま会長さんの元へと駆け寄る。

 すると吹き出す煙に驚いたのか、会長さんは腰を抜かして座り込んでいた。

 俺が会長さんに手を貸して立ち上がらせると、ボタンの下にある口から取り付けられた受け皿に黒い多面体が転がり落ちてきた。

 黒い正二十面体は光を受けると虹色に輝いている。

 俺はそれを見て歓喜の声を上げた。


「よっしゃ成功だ!」

「神製合金をあんなに使ったのに、こんなに小さい物ができるなんて」

「でもこれが作りたかった物で間違いない、おーい2人とも成功したぞ!」

「はぁ……はぁ……」

「な、なに……? 成功……?」


 ハンドルを回していた2人は疲れ切ってその場で崩れ落ちていた。

 俺はできた物を指でつまむとそれを二人に見せに行った。


「こ、これが?」

「こんなに小さいのが……お前の作りたかったもの……?」

「ああ、これが俺たちの秘密兵器だ!」


 俺は高くその物体を掲げると建物に入ってくる陽の光に照らし、その虹色の輝きを見つめた。



◆◇◆◇◆◇



 その後サルバ、レオン、イレール会長の協力のもと無事に30個の秘密兵器を作ることに成功した俺たち。

 神製合金インゴットを湯水のように使う俺に3人は卒倒しそうになっていたが、そんなことお構いなしに使う俺の勢いに引っ張られてか途中から気にしなくなっていた。

 俺は出来上がった秘密兵器をパンドラの倉庫にしまうと、パンドラにはアルバドムスに帰ってもらった。

 そして全ての作業が終えたのは14時過ぎ。

 さすがにぶっ通しでの作業で腹が減ってきた俺たちは、学院の食堂ではなく近くの店で遅めの昼食を済ました。

 今回は手伝ってもらったこともあり俺の奢りだと言うとサルバとレオンは容赦なく次々と注文をし、注文表でベルトができそうなほどに食いやがった。

 店での会計を済まして学院へ戻る途中、会長さんが俺に話しかけてきた。


「今日は貴重な体験をさせていただいてありがとうございます。先生方からもあんな素材を使った精製や圧縮は聞いたことがありませんでしたわ。それに昼食までごちそうになってしまって……とくにレオンが食べすぎてしまってすみません」

「え、だってリオさんがいくらでも好きなだけ食べていいって」

「それにしたって限度があるでしょう」

「ああ、いいよいいよ。あれくらいなら大丈夫だ」


 俺は申し訳無さそうにしている会長さんに言った。

 レオンはと言うと、大皿を軽く10枚以上平らげたというのにまだ余裕がありそうな表情だ。

 これも若さか……!

 俺がそんなことを思っているとサルバが苦しそうに言ってきた。


「なんだ、大丈夫なのか。じゃあ今度も昼飯奢ってくれや」

「お前は駄目だ。てかあからさまに苦しそうじゃねぇか、なにレオンと張り合ってるんだよ」


 サルバの腹はいつもと比べて前に出ており、その詰まりそうな声からは明らかに自分の限界を超えて食っていたことがわかる。

 まあ、だいたい理由はわかる。

 食事中に会長さんがサルバの食いっぷりを見て褒めていたのだ。

 それにしたってお前……


「いいかリオ。男にはな、やらなきゃいけない時があるんだよ」

「いや知らねぇよ。みっともねぇ腹になるくらいだったらそんな意地捨てちまえ」

「想像の3倍ひでぇ!?」


 そんな会話をしていると隣を歩いているレオンと会長さんはクスリと肩をすくめ笑う。

 そして学院の校舎まであっという間に着いてしまった。

 すると何やら校庭で魔法陣が展開されているのが見える。

 よく見ると3人の学生が1つの魔法陣を展開しているようだった。

 見たことのない光景に俺は隣を歩く学生2人に聞いてみた。


「なあレオン、会長さん。アレは何やってるんだ?」

「え? ああ、あれは連結魔法ですね」

「連結魔法?」


 会長さんが〈AULA〉では聞いたことのない単語を言うので俺はつい聞き返してしまう。


「連結魔法は魔法陣を分割して1人ではなく複数人で発動することによって、各々の負担を減らすことができるんです。それ以外にも当人が扱える以上の魔法を分割することによって、問題なく発動することもできるんですよ」


 レオンが快調に続けるように話す。

 ほほぉ、つまり中位の魔法までしか使えないとしても人数を揃えれば上位の魔法が使えるってことか。

 俺がそう考えていると会長が校庭の様子を説明してくれた。


「今は戦争に使う連結魔法のスクロールがしっかり機能するかの動作確認をしているところですね」

「へぇ……」


 俺はその様子と連結魔法の説明を聞いて思いつくものがあった。

 ゴライアスのバリアを壊す手段はできたが、そこからどうやって帝国軍に攻撃を仕掛けるかその参段がまだついていなかったのだ。

 これは……使えるんじゃないか?

 俺はそう思い2人に連結魔法について詳しく聞くことにした。

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