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異世界英雄と22の召喚獣  作者: 十回十
Episode:1 黎明のコルアンディ
33/40

バグ技

 俺たちは山頂から山小屋まで下山すると、そこから一番近いハンプニー村という麓の小さな村まで爺さんを送ることにした。

 ワープゲートを使いハンプニー村まで転移すると、そこにいた村の人々は何やら皆荷物を抱え慌ててどこかへ行く準備をしていた。

 俺は村の青年を捕まえて何をしているのか聞いた。


「なあ、ちょっと聞いてもいいか? 皆慌ててどうしたんだ?」

「どうしたんだって、知らないのか!? もうすぐルズコート平原の方で戦争が始まるんだよ! ここも巻き込まれるかもしれないから、全員でへブリッチまで逃げるんだ!」

「なるほど、そういうことか」


 どうやら俺は王都の住人の反応に毒されてしまっていたらしい。

 戦争なんて聞いたらこういう反応がきっと正しいよな。

 俺は爺さんの事情を話した。


「山頂に向かう途中の山小屋でこの爺さんが倒れてたんだ。念の為医者に見せたいんだが、この村にはそういう人いないか?」

「バジル爺さん、あんたまた山小屋に行ってたのか! しかたねぇ爺さんだな、あっちにいる女の人が医者だからあの人に診てもらってくれ」


 青年はそう言うと、奥の方で他の村人と同じように荷物をまとめている若い女性を指さした。


「ああ、ありがとう」

「あんたらも早くここらから逃げたほうがいいぞ! 噂じゃ攻めてきてるのは帝国だって話だ」

「そうするよ、教えてくれてありがとうな」


 俺は軽く話を合わせて青年が他の村人を手伝いに行くのを見ると、医者だという女性のもとへと爺さんを連れて行った。


「すみません、他の人からあんたが医者だって聞いたもんで。この爺さんが山小屋で倒れてたんで連れてきたんだ」

「まあ、バジルさん。また山小屋に行ってたんですか? いくら奥さんの忘れ形見だからって、無茶してはいけませんよ」

「へぇ……申し訳ねぇ……」


 女性医師が口を酸っぱくして言うと爺さんは目を伏せ、頭を手で抑えながら謝った。


「はぁ……ありがとうございます。この人、いくら言っても山小屋まで一人で行ってしまって。最近、山小屋へ向かう道中にモンスターが出没するようになってしまって、私たちも心配してたんです」

「いや、いいよ。それよりも爺さん、あんまり無茶なことはしないようにな。村の人もこうして心配してるんだから」

「そうだねぇ、そうしようかねぇ……お兄さん方には色々と迷惑かけちまって、すまないねぇ」

「もうホントですよ。この人は私がへブリッチまで連れて行くので後のことは大丈夫です。本当にありがとうございました」


 女性医師は俺たちに深々と頭を下げると続けざまに言ってきた。


「あの、もしかしてあなた達って冒険者?」

「ん? ああ、そうか。そうだよ」

「やっぱり。じゃ、じゃあもしよかったら依頼を受けてくれない?」

「依頼?」


 女性は俺とサルバの認識票(タグ)を見て冒険者だと思ったようだ。

 まあ、間違ってはいないか。

 女性は依頼の内容を話し始めた。


「ええ、この村の人たちはこれからへブリッチに向けて移動を始めるわ。でも道中モンスター襲われでもしたらそれに対処できる人がいないの。だから私たちの護衛を依頼したいのよ」


 なるほど、護衛のクエストか。

 ここからヘブリッチまでだと、ざっと5時間くらいか。

 今9時過ぎだから着くとしたら昼過ぎ。

 ゴライアスへの潜入で得た情報はいち早く報告したいが、どうしたもんか。

 俺がそう考えて女性の依頼を受けるかどうか悩んでいると、サルバが女性の前に跪き手を取ると優しい口調で言い始めた。


「もちろんお受けします。大丈夫、ご安心ください。私はそんじょそこらの冒険者とは違いますので」

「は、はぁ……?」


 そこらへんにしとけお前。

 いきなり跪かれて困ってるじゃないか。

 俺は一緒にいたルシアがサルバから若干距離を取り、嫌そうな目で見ているのに気付いた。

 サルバはクエストを受ける気満々だが、俺の方はと言うと実はそうでもなかった。

 さきほど博士と話していた作戦に必要な物を急いで揃えなければいけないからだ。

 かと言って、このまま放っておくのもなあ……

 俺は色々と思考を巡らせた結果、実験も兼ねてあることを承諾することした。


「わかった。その依頼受けるよ。ただ、護衛とは少し違うけどな」

「え? それって一体どういう」

「おいおい、リオ。今度は何やるつもりだ?」

「まあ、任せとけって。ちゃんと村の人たちはへブリッチまで連れて行くから」


 俺はそう言うと女性医師に手伝ってもらい準備を始めた。


……


…………


………………


 俺は村人が全員一箇所に集まったのを確認すると、ワープゲートを開くための魔導書を取り出した。

 そして村人にこれからすることの説明をする。


「これからヘブリッチの検問所近くにつながるワープゲートを出しますので、皆さんそれを通って避難してください」


 その言葉を聞きざわつく村の人々。

 まあそうか、こっちじゃワープゲートはかなり珍しいものらしいし。

 俺がそう思っているとサルバが小声で聞いてきた。


「なあ、ワープゲートって開いてる時間が短いけど、村人が通ってる時にゲートが消えちまったらどうするんだ? おとなしく護衛しながら言ったほうが安全なんじゃないか?」


 俺はその言葉にニヤリと笑みを浮かべ、自信満々で答えた。


「いいかサルバくん。この世には何事にも抜け道というものがあるのだよ。今からやるのは俺が〈AULA〉でやってた抜け道だ。まあ、こっちでできるかどうか試したいだけなんだがな」

「一体何をしようってんだ?」

「まあ見てな、全部説明すると面倒だから少しだけ教えるけど。この技術は俺のいた世界ではバグ技っていうんだ」


 俺は魔導書を開き行き先を選択すると、地面にそのページを開きっぱなしで置いた。

 本来はこのあとマナ結晶を1つ魔導書にあてがってから放り投げると、その場所にワープゲートが出現する。

 だが、俺はインベントリから2つのマナ結晶を取り出すと両手で1つずつマナ結晶を持ち、それを魔導書に当てた。

 2つのマナ結晶が光りだしたことを確認した俺はマナ結晶同士を打ち鳴らし、甲高い音を響かせる。

 そしてその2つを同じ場所に放り投げると、ワープゲートが出現した。

 だが、そのワープゲートはいつもの倍の大きさをしていた。

 俺はそれを見て頷き、こちらでもバグ技が使用できることを確認した。

 そして顔をつっこみ行き先がヘブリッチの検問所近くであることを確認すると、顔を引っ込め村人たちに言った。


「問題なく繋がりました。どうぞこの中に入ってください」


 だが、村人は初めて見るワープゲートに恐怖を感じているのかなかなか入ろうとしない。

 そこでルシアに村人を先導するように伝えた。

 ルシアはおもむろにワープゲートをくぐり、向こう側から半身だけだして手招きした。


「怖くないから大丈夫だよ。こっちこっち」


 すると、さきほど女性医師を教えてくれた青年が集団の中から踏み出し恐る恐るワープゲートをくぐった。

 そして、安全であることを確認すると他の村の人々を案内し始めた。

 その様子をサルバは目を丸くして見ている。

 それもそうか、俺がいつも出しているワープゲートより大きなものが現れたんだ。

 それに、村人が通り抜けはじめてから30秒が経過したが今だにワープゲートは消滅する気配を見せず、依然口を開いている。

 サルバは驚いた様子で俺に質問してきた。


「な、なああれどうなってるんだ!? 俺たちが使ってたワープゲートと同じものなのか?」


 興奮した様子で聞いてくるサルバ。

 しかたない、教えてやるか。

 なんか手品の種明かしみたいで面白いなこれ。

 俺は再びインベントリからマナ結晶を2つ取り出すと先ほどと同じ手順を踏んで音を響かせた。


「ワープゲートを使用する時に使うマナ結晶。これを今やった手順を踏んでから使用するとワープゲートを大きく、そして持続時間を長くすることができるんだ」

「へ、へぇー! すっげぇ、スッゲェ!」


 そんな語彙力を無くしたようにはしゃがなくてもいいとは思うが。

 この方法は〈AULA〉を初期からやっている人間なら誰でも知っているバグ技だ。

 いちいちワープゲートを開き直さなくて済むし、マナ結晶の節約にもなる。

 俺は地面に落ちているマナ結晶と同じ場所に、まるで焚き火に巻きをくべるかのごとく放り投げた。

 するとサルバがまた質問してきた。


「これってどれくらい保つんだ? 5分? 10分?」

「15分だ。今追加で使用したから合計で30分は保つぞ」


 俺がそう言うとまたサルバは珍しいものを見た子供のようにすげぇすげぇと言い始めた。

 しばらくして村の全員が転移したことを女性医師と確認すると俺とサルバが殿を務め、ワープゲートをくぐっていった。

 くぐった先では検問所の兵士が驚き目を見開きながらワープゲートから出てきた俺たちに軽い会釈をしていた。

 おい大丈夫か、口が開きっぱなしだぞ。

 そうして俺たちはハンプニー村の合計73人を無事ヘブリッチへと送り届けた。



◆◇◆◇◆◇



 俺たちはヘブリッチから輝きの草原へとワープゲートで移動すると、王都ウェストル

へと帰ってきた。

 色々とあったがユスティ城へと到着したのは10時過ぎ。

 早く王たちに情報を伝えなければ。

 俺たちは城に入り謁見の間ではなく、昨日王と話をした書斎へと足を運んだ。

 今回はシーマに案内されずとも迷うこと無く部屋に行くことができた。

 やはり一度行けば建物の構造は分かるものだ。

 部屋にいたイリス姫が扉を開け、王に俺たちが帰ってきたことを伝える。


「お父様、リオさんたちが戻りました」

「おお、リオ殿。して、帝国軍の様子はどうであった?」


 アスター王は待ちきれないと言った様子で部屋に入ってきたばかりの俺たちに聞いてきた。

 俺はなるべく落ち着いて帝国軍の現状を説明し始める。


「王様の言ってた通り、やつらは異形に、俺がいた〈AULA〉でいう異形腫瘍体(マリグナント)に変化していたよ。それもほぼ全員がな」

「……やはり、その情報は真実であったか」

「ああ。それに重要なこともわかった。やつらがなぜ異形腫瘍体になったか、その原因がな」

「なに? それは本当か」


 俺は静かに頷く。

 その様子をサルバは横目で見てきて、原因に関してだいぶ気になっているようだった。

 俺はゴライアスにいたモンスターたちがなぜ変化したのか、その原因を説明しはじめた。

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