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異世界英雄と22の召喚獣  作者: 十回十
Episode:1 黎明のコルアンディ
28/40

潜入

 ゴライアスの背にそびえる大樹。

 太く力強い枝にあるシルバーイーグルの巣からは、親に餌をねだる雛の声がうるさいくらい周りに響いている。

 親は巣から飛び立つと周りの平原に進路を取り、餌を探しに翼を翻す。

 狙うのは雛たちの良き栄養になる自分より小さく弱い、なるだけ魔力の多そうな獲物だ。

 太陽光を反射する鏡のような翼を広げ、大空を華麗に舞うシルバーイーグル。

 そしてその鋭い眼光は都合の良さそうな獲物を見つける。

 額に輝く宝石を付けたネズミのようなモンスター。

 サイズも程よく小さく、雛たちが啄んで口に運ぶにはちょうど良さそうだ。

 おまけに怪我をしているのか平原の草むらから動こうとしない。

 シルバーイーグルは空高くから狙いを定め急降下し、弾丸のような速度で獲物が逃げる前に自慢の爪で急襲する。


「キューキュー!?」


 見事、獲物を仕留め巣に持ち帰るシルバーイーグル。

 その姿を遠方の山頂より見つめる男の思惑など露知らず、銀の鷹は侵入者を招き入れる。



◆◇◆◇◆◇



「よっしゃ、かかった!」


 俺はシルバーイーグルがレーミーを襲い、将軍の乗っていたゴライアスにある巣に持ち帰るのを単眼鏡で見ると思わず声を上げた。

 その声に反応したサルバが俺に聞いてくる。


「なあ、あれ本当に大丈夫なのか? 俺には死んでるふうにしか見えないんだが……」

「ん? 大丈夫だよ、俺の方でレーミーの体力は見えてる。しっかり1だけ残して生きてるよ」


 俺は視界の端、自分のHPバーの下に連なって表示されているレーミーのHPを見て言った。

 レーミーが持つ特殊能力の中には、どれだけダメージを受けても必ず1残るというものがある。

 これはジェムバリアなどのスキルとは違う、モンスターごとの特徴のようなものだ。

 俺はこのレーミーの特殊能力を利用して、シルバーイーグルにあの大樹まで運んでもらおうという作戦を立てた。

 さきほど俺が見たシルバーイーグルの運んでいた獲物は、わずかにだが息があった。

 シルバーイーグルはゴライアスのバリアの中に入れるだけではなく、生きているモンスターを巣に運ぶためバリア内に入れることができるらしい。

 俺はその一連の流れを見てそれを利用したという訳だ。


「あとはレーミーが巣までお持ち帰りされたら、スキルでHPを回復して行動開始だ」

「いやしっかし……お前も酷いことするねぇ。いくら死なないからって餌にするとは」

「まあ、そこはレーミーも承諾してくれたから。何でもいう事聞いてやるって言っちゃったしな」


 ゲームの時は囮に使うなんて日常茶飯事だったのだが、さすがにこちらの世界に来てから同じことをするとなると少し気が引けたので、引き受けてくれたら俺のできる範囲で何でもいう事を聞いてやると言ったのだ。

 するとレーミーは勢いよく首を縦に振り、快く承諾してくれた。

 何を要求されるのかは全くわからないが、今回に関してはそれだけ重要な仕事をレーミーにはしてもらうのだ、この条件は妥当だろう。

 俺がそう考えているとサルバが何かに気付いたのか、ニヤニヤした顔で言ってきた。


「あんまりレーミーに構いっぱなしだと、他の子たちから愛想つかされちまうぜ」

「え? それってどういう……」


 俺がそう言いながらサルバの目配せしたほうを見ると、そこには膝を抱え込み目元を赤くして睨んでくるルシアと、ニコニコとまるで固めたような笑顔を向けてくるシラユキがいた。


「私だって、リオにもっと構ってほしいのに、レーミーばっかりズルい」

「……どうかなさいましたか旦那様?」

「あ、いや。……シラユキ、もしかしてなんか怒ってたr」

「怒ってなどいませんよ? それよりも旦那様、私もレーミーさんと同じように何か褒美を頂いても?」

「アッハイ。何でもどうぞ」


 シラユキから凄まじいプレッシャーを感じた俺は、反射的にご褒美の約束をしてしまった。

 ルシアに関しては……あとでなんか食い物でも奢ってやろう。

 俺はシラユキの満面の笑顔を見ると咳払いをして気を取り直す。

 単眼鏡でレーミーの位置を確認すると、ちょうどゴライアスのバリア付近まで運ばれていた。

 俺は一抹の不安を憶えつつもレーミーのことを見守る。

 そして、バリアを通り抜けシルバーイーグルの巣まで運ばれたことを確認すると、俺は心のなかでガッツポーズを取り、レーミーに指示を出す。


〔レーミー、ジェムリバイバル〕


 俺がそう言うと、単眼鏡越しに樹木の枝らへんが一瞬黒く光ったのが見えた。

 その瞬間、視界端のレーミーのHPが一気に最大まで回復したのを確認した。


〔よし、そのまま木を降りてくれ〕

〔キューキュー!〕


 俺は念話で指示を出すと、単眼鏡から目を離しサルバたちに言った。


「そんじゃあ、さっき言ってた通り頼むぜ。しっかり守ってくれよ?」

「ああ、任せとけ美人を守るのは俺の使命だ」

「大丈夫だよリオ、しっかり守ってあげるからね」


 ……約1名、信用ならないやつがいるが、まあしっかりやってくれるだろう。

 俺はシラユキに再度確認のため声をかける。


「シラユキ、俺が合図したらマルチサーチよろしく頼むぜ」

「はい。お任せください」

「そんじゃ……いくか! センスシェアリング・フルリンク!」


 その掛け声とともに、レーミーの五感が俺に完全共有される。

 今回は前にラルフに使ったのとは違い五感全てを共有するものだ。

 これを使うと俺の本体は身動きが一切取れなくなる。

 なので、ルシアとサルバに守ってもらおうというわけだ。

 徐々に見えてくるレーミーの視界。

 周りを確認すると大樹の幹を降りきったところでレーミーは身を潜めている。

 俺はすぐさま念話で指示を出す。


〔レーミー、シラユキの種を地面に埋めてくれ〕

〔キュキュ!〕


 すると口を大きく開け、前足をその中に突っ込んで種子を取り出すレーミー。

 レーミーの2つ目の特殊能力、こいつは追加インベントリの役割を果たすことができる。

 ただ、しまえる物は俺のインベントリの10分の1。

 アイテムスロットでいうと20枠程度だ。

 まあ、それだけ枠があったら十分なんだけど。

 今回はその中にシラユキの特殊能力で出した種子をしまってきた。

 そして、レーミーが種子を地面に埋めると、埋めたところが仄かに光りそこからすぐに白い桔梗の花が咲いた。

 

「シラユキ、頼む」

「ええ、それでは。マルチサーチ、情報共有」


 すると桔梗の花が明滅し、俺の頭の中に城の内部構造の情報が送られてきた。

 シラユキの特殊能力は、種子から咲いた花を介してスキルを発動できるというものだ。

 しかし……うへぇ、やっぱこれ結構大変だな。

 俺はセンスシェアリングとマルチサーチのコンボを以前にも使ったことがあったが、その時は5分と経たず共有を解除してしまった。

 2つの情報共有を続けて使用していると激しい頭痛がしてくるからだ。

 でも今は……うん、なんか大丈夫そう。

 共有される情報を捌くのが大変なだけで、頭痛が起きそうな感じはしないな。

 これならかなり長時間できそうだ。

 俺はレーミーに進むよう指示を出す。


〔まずは目の前にある通路を抜けて階段を降りるぞ〕

〔キュキュー!〕


 レーミーの視界に映る城の中。

 大樹によって突き破られた天井から暗い広間に光が差し込んでいる。

 カビ臭い石造りの壁や床には所々ひび割れがあり、木の根や伸びた蔦が至るところに見える。

 共有されている構造情報から、どうやらここは最上階の一室のようだ。

 まるで植物が朽ち果てる城を支えているようにも見える内装に。俺は少しだけ安堵していた。

 〈AULA〉の時はよくフレンドと一緒にこの中を駆け回って、レアアイテムを探し回ったもんだ。

 そんなことを思い出していたが、視界が下り階段に差し掛かったところで俺はレーミーを引き止めた。


〔待て、下から登ってくる反応がある。どこかに隠れろ!〕

〔キュ!? キュキュッ!〕


 シラユキからの情報共有によって内部構造以外に敵の位置情報もわかるので、上がってくるゴブリンたちに気づくことができた。

 レーミーは慌てて張り出した木の根の影に飛び込み、丸くなることでなんとかゴブリンの目を凌ぐことができた。


〔よくやったレーミー。先を急ごう〕

〔キュキュ!〕


 俺がレーミーに指示を出しながら先を進んでいると、サルバが俺に質問してきた。


「どうだ、お目当てのものは見つかったか?」

「ああ、シラユキのおかげだ。最下層の大部屋、恐らくここにバリアを発生させているゴライアスの生体器官があるはずだ。それをぶっ壊せばバリアは消滅する」

「それ本当なのか? お前の話を全部疑うわけじゃないけどさ、なんか順調すぎやしないか?」


 俺はサルバが何をそんなに危ぶんでいるのかイマイチ理解できず、とりあえず意見してみた。


「少なくとも俺のいた〈AULA〉でのバリア解除方法はこれしかなかった。今のところゴライアスの様子や城の内装も俺の知っている通りだし、間違いないと思うぞ」

「あ~、でもなんか心配だな……こういうふうに何もかも順調にいく時ってのは、大抵なんか壁にぶつかるんだよ」

「……それは持論か?」

「いや、親父からの受け売り」


 俺はその言葉に一抹の不安を憶えながらもレーミーを最下層まで走らせた。

 途中、何度か巡回のモンスターに出くわしそうになったが、なんとか回避して目的の大部屋までたどり着いた。

 しかし、そこは俺の知っている大部屋ではなく、血のように赤い不気味な結晶体が中央に置かれた部屋だった。

 おかしい、確か大部屋には大勢の警備モンスターと魔法砲台が設置されていたはずだ。

 ここに来るまで最下層に入ったときからモンスターを一匹も見なかったのも気になる。

 それに何だこの結晶体、こんな色見たこと無いぞ。

 感覚共有によって伝わってくる異質な雰囲気、鉄臭くジメジメと湿気が多く鼓動のような音が絶えず聞こえる、床の感触もなんだか生暖かく妙に弾力がある。

 俺はレーミーに部屋の隅を静かにゆっくり移動するように指示し、結晶体に焦点を合わせるように言う。

 そしてその結晶体の簡易情報を確認すると、俺は目を疑った。


謎の生体器官(要塞兵器)

レベル:175 ランクS

HP5,000,000/5,000,000

エレメントスコア:0


 ブッ!?

 な、なんだそのHPは!?

 軽くダインスレイフの5倍はあるじゃねぇか!

 〈AULA〉で見た生体器官はせいぜいHPが10万程度だった。

 それが500万!? ふざけるのも大概にしてほしい。

 さらにバッジがない今、城に直接乗り込む手段がないというのにどうやってこれだけのHPを削れというのか。

 俺はひとまず冷静になろうと深呼吸をして呼吸を整えた。

 そして、レーミーに大部屋を出るように指示を出した。


「どうしたリオ、なんか妙に汗かいてるけど大丈夫か」

「もしかしてどっか具合悪い? 大丈夫?」


 俺の様子がおかしいことに気付いたサルバとルシアが心配して声をかけてくれている。

 まあ、この情報もユスティ城に帰ってからだな。

 俺はそう思うと二人に返した。


「ああ大丈夫だ、ありがとう。サルバ、お前の親父さんからの受け売りには頭が上がらん。今度から気をつけるよ」

「あ? あ、ああ」


 サルバが恐らくわけのわからないといった顔をしていると簡単に想像できる声を上げると、レーミーをもうひとつの目的地を伝えた。

 俺は忘れてないからなアディー、お前の親父……ケペックのこと。

 シラユキから共有されるモンスターの位置情報、俺はその中に1つだけ違う反応がある事に気づき、その地点へとレーミーを向かわせるのであった。

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