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異世界英雄と22の召喚獣  作者: 十回十
Episode:1 黎明のコルアンディ
26/40

王の一面

 ダインスレイフを倒した後、闘技場の中央に戻った俺はそこでサルバと合流した。


「おう、リオ! 無事だったか」

「お前もな……てかお前どこにいたんだ? 戦ってる時見かけなかった気がするんだが」


 俺はルシアから降りるとそう言った。

 デモンゴーレムと戦っている時、俺はサルバの姿を見かけなかった気がしたのだ。

 俺の見落としかもしれないが、少なくともパンドラとシラユキに殲滅してもらっている時は見ていない。


「なんか試合を見に行こうとトイレ済ましてから観客席に向かったら黒いモンスターがわんさと湧いててな、観客を襲ってるもんだから倒そうと端の方で頑張ってたんだよ」

「ああ、そうだったのか。……もしかしてデモンゴーレムを見るのって初めてか?」

「あのモンスターってそんな名前なのか。俺は初めて出くわしたな」

「そうか。サンキューな、戦ってくれて」


 俺がそう言うと、サルバはなんだか照れくさそうに返した。


「気にすんな、俺は冒険者として誰かが襲われてるのが見過ごせなかっただけだ。それに、男から礼を言われても嬉しくねぇや」

「ふっ、そうかい」

「だけど、あいつらは一体何だったんだ? 倒しても倒してもどんどん湧きやがって。それにあの竜も」

「ああ、あの竜は問題ない、俺たちが倒したからな」


 俺はそう言うと俺の横でおすわりをしているルシアの頭を撫で、肩に乗せたレーミーが頬にすり寄ってきたので返すように撫でた。

 俺がそんなことをしているとサルバが呆れ気味に言ってきた。


「お前、一体どれだけモンスターを従えてるんだよ。しかも綺麗だったり可愛かったり! ズルいぞ!」

「はっはっは! 褒め言葉として受け取っておこう」

「クソぅ……黒いモンスターが急に倒されていった時、お前と一緒にいたあの白い女性と可愛い踊り子もどうせお前の召喚獣なんだろ! わかってんだからな!」

「ハッハッハ」


 俺が適当に返すとサルバは、自分にもあんな子達がいたらモニョモニョ……と、どうやら妄想を膨らましているようだった。

 そんなことをしていると、遠くから蹄の音が近づいてくるのがわかった。

 俺が音のする方を見ると、闘技場の外から場内へと跳躍してくる影があった。


「おう、クロロス! お疲れさん」

「我が主……只今……帰還した」

「おかえり。そういえば、どこか近くで死の気配はしたか?」

「……今のところは……どこにも」

「そうか、そりゃよかった」


 俺はその報告を聞いて一安心した。

 するとクロロスの姿を見て驚いて腰を抜かしそうになっていたサルバが聞いてきた。


「お、おい。こいつもお前の召喚獣なのか?」

「ああ、そうだ。クロロスっていうんだ、仲良くしてやってくれ。クロロス、こいつはサルバだ」

「お初にお目にかかる……我が名はクロロス……誇り高き人馬の騎士である……以後お見知りおきを」

「あ、ああ。これはご丁寧にどうも、サルバです……っておい! こういう紹介はもっと他の女の子の召喚獣出した時にしてくれよ!」

「あ~、また今度な」

「しょんなぁ……」


 俺の返答にサルバがしょぼくれていると、王城で見た格好の衛兵が俺たちに近寄ってきた。


「お二人はリオ様とサルバ様で間違いなかったでしょうか」

「ああ、そうだけど。どうかしたのか?」

「はっ! 国王アスター様よりユスティ城に来られるようにとの伝令を預かってまいりました」


 衛兵は踵を合わせ敬礼し、緊張した様子で俺たちに王の言葉を伝えた。

 王様が俺たちを呼んでる?

 まあ、色々言いたいことがあるんだろう、主に王子のこととか。

 俺は落ち込んでいるサルバの分も返答しておいた。


「わかった、今から向かうよ。ご苦労さん」

「はっ! では私はこれで」


 返事を聞いた衛兵は踵を返し、闘技場の外へと行ってしまった。

 俺はクロロスとレーミーにねぎらいの言葉をかけるとアルバドムスに戻ってもらった。

 するとルシアが俺に疲れた顔で言ってきた。


「う~ん、私も戻るね。なんか疲れちゃった」

「ああ、さっきは大活躍だったもんな。ゆっくり休んでくれ」

「うん、それじゃね」


 ルシアがウィンクルムに戻るのを見届けると、俺はいつまでも落ち込んでいるサルバを無理矢理立たせ、王城に行くぞと説得した。



◆◇◆◇◆◇



 ユスティ城に来るように言われた俺たちが城門前に到着すると、そこにはシーマが門番の頭の上に乗って待っていた。


「あんたたち、待ってたよ」

「シーマ……様、あんたどこに乗って待ってるんだ」

「いいのさ、こいつら門番とは仲がいいからね。よく遊んでやってるからお互い様だよ」


 ……それは遊んでもらってるの間違いなのでは?

 俺は喉仏らへんまでその言葉が出かかったが、また色々言われると面倒なのでなんとか飲み込んだ。

 すると、シーマは門番の頭から飛び降り華麗な着地を見せると、振り向きざまに俺たちに言った。


「ついておいで、アスターが待ってるよ。……そこの瞬撃の坊やはどうしたんだい、えらく落ち込んでいるようだけど」

「ああ、これは持病みたいなもんだから気にしなくていいよ」

「……そうかい。でもアスターの前ではシャンとしておくれ、曲がりなりにもこの国の王だからね」


 俺はなんだかシーマの言葉に引っかかるものを感じた。

 だが、こちらのことを考えずスタスタと先を急ぐシーマについていくので手一杯でそんな考えはどこかにいってしまった。

 しばらくして、巨大な迷路のような王城の中を進んでいくとシーマはとある部屋の前で立ち止まった。


「連れてきたよ、開けな」

「ああ、イリス頼む」


 扉の中から聞こえてきたのは昼間、謁見の間で聞いたアスター王のものだった。

 ゆっくりと扉を開いたのはさっきまで闘技場にいたイリス姫、そして書斎のような部屋の中には机に向かい書類に目を通すアスター王がいた。


「どうぞ」

「失礼します」


 そう行って最初に入っていったのはサルバだった。

 こいつ、イリス姫を見て元気になりやがったな。

 本当に、欲望に忠実な男だ。

 そんな事を考えながら俺もひとこと言ってから入ると、優しい笑顔で迎えてくれるアスター王。

 なんだか玉座にいた時とは印象が違うな。

 俺たちはイリス姫に案内されて書斎の一角にある応接用スペースのソファに座った。

 すると、対面するようにアスター王が座る。


「ああ、よく来てくれた。まずは礼を言わなくてはな。闘技場での一件、そして現れた竜の討伐、本当にありがとう。我々だけではあの事態を収拾するのは難しかっただろう」

「いえ、そんな。そんなことより王子の容態はどうなんですか? 生きてはいます……よね」

「ああ、だがかなり消耗しているそうだ。今は自室で眠っているがいつ目が覚めるか……」

「……そうですか」


 俺は倒れた時の王子のことを思い出していた。

 あの状態で俺に反論しようとしてきたんだ、そう簡単に死ぬはずないと思っていたが、やっぱりかなり危ない状態だったんだな。

 俺がそう考えているとイリス姫がお茶を用意してくれた。

 王はそのお茶に口をつけると少しホッとした様子で言ってきた。


「今回はゼノンの我儘に付き合わせることになってしまい、本当に申し訳ない。あれは聖剣のこととなるとムキになってしまう困ったやつなのだ」

「そうね、若い時のお前と同じさね」

「ババ様……いや、返す言葉もない」


 アスター王はテーブルに飛び乗ったシーマの言うことに反論するでもなく認めて恥ずかしそうに言った。

 王様にもそんな時があったのか。

 王の隣にイリス姫が座るとシーマが言葉を続けた。


「まったく、お前は甘いんだよ。今日の試合だってゼノン坊やが納得する形でケリをつけようとしたじゃないか。世の中には納得できなくても飲み込まなきゃいけない時が数多くあるってのに、お前は教育者としては失格だね」

「はっはっ、全くその通りだな。だがアレはまだ若い、できればやりたいようにやらせたいのだ」

「……そんなんだからいけないんだよ、アマリアだったら立ち上がれなくなるまでボコボコにして言う事聞かせてただろうに」

「私には彼女のような真似はできんよ。かわいい我が子たちにならなおさらだ」

「……まったく本当に親バカだね」


 アスター王は懐かしむように優しい顔で話をしていた。

 だけどそれはどこか悲しそうで、複雑な心境なのが伝わってきた。

 シーマとの話に一区切り着くと王は気付いたように俺たちに話しかけてきた。


「ああ、申し訳ない。客人がいるというのに。とにかく、今回の件は君たちのおかげだ、ありがとう」

「気にしないでくれ。俺もソフィアから聞いて王子のことをほっとけなかっただけだし」

「そう言ってもらえると助かる。そして続けざまで申し訳ないのだが、帝国との戦争に勝利し平穏を取り戻すためには英雄リオ、君の力が必要だ。もちろん瞬撃の二つ名を持つサルバ、君にもだ」

「はい! どんな相手でもお力になりますよ!」


 サルバは勢いよく返事をした、謁見の間でのビビリ具合が嘘のようだ。

 帝国との戦争……

 聖剣が使えない今、ソフィアの言ってた通り俺に協力してもらう他ないだろうな。

 俺も納得し王にOKの返事をする。


「戦争への参加はもちろんOKです。そうだ、できれば敵の最新の状況が知りたい。俺が知っている情報はソフィアから聞かされたものだったから、何でもいいから動きがあったのならその情報が欲しい」

「ああ、そのことなのだが……」


 俺がそう聞くと、王はあまりいい顔はせず確認できている最新の帝国軍に冠する情報を教えてくれた。


……


…………


………………


 王との話が終わると、俺はシーマに頼んでゼノン王子の部屋へと案内してもらった。


「ここだよ、でも本当に治るのかい?」

「まあ、見てみないとわからないさ。アドベント、アルカナオートマトン・クララ」


 俺はできるだけ静かに唱え、左手の魔法陣からクララを呼び出した。


「ハイハーイ! 呼ばれて参上クララですよ~」

「クララ、王子のことを診てやってくれ、治せなくてもいいから回復に向かうようにしてくれ。スキルも全部使って構わないから」

「イエッサー! 了解です」


 クララはベッドに横になっている王子に手をかざし魔法陣を展開する。

 すると、クララは眉をひそめた。


「ウ~ン、この方は体のあちこちが大変なことになってますねぇ。ホントに生きてるのかもちょっと分からなくなりますね、これ」

「やっぱりそんなにひどい状態なのか」

「マァ、でもやれるだけはやりますよ。……メディカルエリクシア」


 クララが展開した魔法陣から優しい光の粒子が王子の体へと流れていく。

 そして、クララはさらにスキルを使用する。


「マナチャージ、ホープリジェネレイション」


 緑、青、黄、白の粒子が王子に流れ込み浸透すると、王子の呼吸が気持ち穏やかになった気がした。


「ヒトマズこれで様子見ですね」

「そうか、ありがとうクララ」

「イエイエ、また何かあったら呼んでくださいね~」

「ああ、ご苦労さん」


 そう言うとクララはアルバドムスへと戻っていった。


「さっきのもあんたの召喚獣かい?」

「ああ、そうだよ。俺の頼れる仲間だ」

「……そうかい。うちの連中が世話ばかりかけるねえ」

「いいって、そもそも俺はアルテルに頼まれてここにいるんだから。気にすんなって」

「なるほど、そういうことかい。なら、ありがたく縋らせてもらおうかね」


 俺はシーマとともに王子の部屋を後にした。

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