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第二十八話:望み望まぬ再開

「我々の集落に吸血鬼をけしかけるとは、これは一体どういうつもりですかな?」


 吸血鬼ユーリカに抗議しているのは集落の長と数名のエルフ達だった。


「けしかける……? よくわかりませんが、生贄はどうしたのですか? 見当たりませんが」


「はぐらかさないで欲しいものですな……。生贄を提供し続ける限り吸血鬼は我々に危害を加えない。そういう契約であったはずです」


「ええ、危害は加えてはおりませんが? どうも魔獣か何かと間違われたのではないですか?」


 吸血鬼ユーリカには本気で心当たりもなく、貴族吸血鬼ミラカがそのような指示を出したという話も聞いていない。そこで、廃棄物(ロスト)と化して暴走を始めたレッサーが勝手に集落を襲うという可能性にユーリカは思い立った。


 自我もなくただただ血を求めて暴れ回るだけの廃棄物(ロスト)など残しておいても百害あって一利もないため、吸血鬼側としても見かけるようならば積極的に駆除している。


 しかし、広い大森林の中に潜むロスト化した吸血鬼を始末できるのは、実質的に眷属との血の繋がりがあることで気配を探知できる吸血鬼、ミラカだけだった。


 そのミラカが現存している最後の廃棄物(ロスト)と化した眷属の処分と血の繋がりの消失を確認している以上、廃棄物(ロスト)が集落を襲うというのは理屈上"あり得ない"。 


 そう、死体が勝手に起き上がりでもしない限り。


「ほぉ……あくまで吸血鬼殿はしらばくれるおつもりですかな?」


――……? いつにも増して集落のエルフが強気になっている……? 吸血鬼を恐れていない……?


 ユーリカに不可解であったのは、集落の長の態度だった。


 吸血鬼と集落のエルフ達の間にある力関係は対等ではない。だから、これまでは集落側の全面服従という形で話が進み、どのような要求も集落側は受け入れて来た。


 廃棄物(ロスト)による偶発的事故が発生することが度々あっても今回のように、"抗議"してくるということは一度としてなかったのだから。


「……はぁ。それで、仮の話ですが、我々吸血鬼が何らかの手違いでこちらの集落に被害を出したとして、それに何の問題があるのですか? あなた方が今夜まで生かされ続けているのは、全てあなた方の醜い命乞いを受けいれて下さった慈悲深きミラカ様の温情のおかげなのですよ。それでなければ――」


 吸血鬼ユーリカの紅き双眸(そうぼう)が鈍く光る。


「眷属にもなれず餌にもなれず、触れるのもおぞましい穢れた臭いを漂わせたクズをわざわざ生かしておくものか」


「ッヒィッ」


 吸血鬼ユーリカは凍てつくような強烈な殺気を込めた眼光で集落の長を睨みつけると、長はたまらず腰を抜かし地べたに転げ落ちてしまう。


 そして、長が這うようにして一歩分後ずさりすると、正面にはそこにいたはずだった吸血鬼ユーリカは既におらず、背後に立たれていたのだ。


 その間の吸血鬼ユーリカの動きは、長には全く見えていなかった。


「"今一度"立場をきちんと思い出しましたか?」


 吸血鬼ユーリカは長の首を片手で掴むと、ギリギリと締め上げながら身体を宙に浮かせてみせる。


 華奢とも言える程に細いユーリカが自身よりも体格の良いエルフを片手で持ち上げる事に対し、何の重さも感じていないといった風に。


「ぐ、ぐぇぇ……」


 長は潰れたカエルのような声をあげながら、何度も頷くばかり。


「でしたらあなた方がするべきことを今すぐに果たしなさい。さもなくば――」


 吸血鬼ユーリカは棒切れを軽く放り投げるようにして付近の宿木(やどぎ)に長を勢いよく叩きつけた。


「ぐぇぇ……」


 吸血鬼とアイゼネのエルフは対等ではない。


 ほんの一度瞬きをする瞬間もあればエルフ一匹殺すことなど吸血鬼には造作もないのだと。吸血鬼ユーリカは改めて集落の長とその一部始終を見届けていたエルフ達に思い出させたのだ。


「殺しますよ。ここに住んでいる者、全て」


 吸血鬼ユーリカの紅き双眸(そうぼう)が闇夜に光る。悲鳴は上がらなかった。あまりにも恐ろしいモノを目の当たりにしてしまうと、悲鳴を上げるどころか呼吸さえも忘れてしまうのだから。


 この場にいるエルフ達は皆、恐怖の虜となってしまっていたのだ。ただ一名を除いて


 そして、風を切る音と共に、ユーリカの心臓に目掛けて一筋の矢が飛来する。それは、吸血鬼ユーリカの質素な胸に突き刺さる事は無かった。二本の指で摘まれ、ペキりと音を立てて折れてしまう。


 吸血鬼を殺すにはあまりにも頼りなく、貧相で、脆弱だった。


「……そうですか。"また"外から何も知らない守り人(イケニエ)を連れてきたのですね。だからわざわざこのような茶番を……」


 吸血鬼ユーリカにあったのは失望だった。そして、静かに矢を放った当人を見据える。


 弓矢の有効射程程度の距離などと、吸血鬼にとってみれば一瞬で詰めきることも容易。不意をうったつもりの狙いすました一撃ですらこの有様なのだ。


――守り人の質も衰える一方ね……ッ!?


「そこまでだ。吸血鬼! なっ!?」


「ま、まさか……"ユーク"なの……?」


 その守り人の顔を一目見て、声を聴いて、ユーリカは初めて狼狽えた。何故ならば、そこに居て欲しくは無かった人物がそこに居てしまったからだ。


 同様に、守り人ユークもその吸血鬼の顔を見て困惑を隠さなかった。


「姉さん……」


 守り人ユークは、吸血鬼ユーリカを見てそう呼んだのだ。

さて、ユーク&ユーリカ姉弟感動のご対面となってしまったわけですが……。


 リアル時間一月前からずっとどうやってユーク君を殺そうか……とあれよこれよと先延ばしにしながらサクーシャは考えるに考えた末に、未だユーク君を殺せる方法が何一つ思いつかないのだ! う~ん、困った……


 急募:ゾンヲリさんがバックに付いてるユーク君を合法的に殺す方法


 どうしてゾンヲリさんはサクーシャが練ってるプロットぶち壊してしまうんですか? ユーク君には死んで貰わないとサクーシャは本当に困ってしまうんですよ!  という苦し紛れのお話なのさ……。


 まるで先延ばししまくってるド〇ゴンボー〇のアニメのように……

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