第三話:踊る愚者に見る愚者、同じ愚者なら踊らにゃソンソン
久しぶりというのもあり、以前世話になった孤児院に軽く立ち寄った際に、獣人の少女ストネと再開した。そのストネはと言えば、すっかりと孤児院での生活にも慣れたのか、年相応に子供たちと一緒に遊んでる。
バラックおじさんと呼ばれた戦士が戦って遺していったモノは、確かにそこに息づいている。何のことはない、それを見て私が勝手に満足しているだけだ。
そして、軽く挨拶だけして立ち去ろうとした時に、「あのね」っとストネから呼び止められた。
「サフィが孤児院を出て行った?」
「うん、白いおねーちゃん、やる事があるから旅に出るんだって、でもね、何だか怖い顔してたんだ」
「……そうか。気には留めておくよ。では達者でな」
何のことはない。よくある話だ。おじさんは遺産を残したが、私が戦って残したのは負債だった。それだけの話でしかない。
その後、明日のエルフの森への旅支度に必要な物資を金で調達した後に一晩の宿を借りた。例のごとく持て余した時間を日課に費やす為に、難民キャンプに打ち捨てられている手頃な餓死者の死体を拝借し、人気のない近場の平野へと向かったのだ。
……依然として獣人達の生活が良くなっているわけではない。どこもかしこも一度道を外れればそこには死者と悲しみであふれかえっている。私が使い捨てる身体を探すのに困らない程度にはな。
そう、一度勝った程度では何も変わらないのだ。ただ、滅ぶまでの時間を僅かに先延ばししただけに過ぎない。
そうして戦って勝って、戦って勝って、戦って勝った果てに一体何が残るのか。などと考えるだけ意味の無い話だ。結局のところ、奪われて飢えて死にたくなければ相応に戦い続けるしかない。
弱者であることに甘んじ続けた結果糧が得られず屍となり果てるのも自然の摂理でしかなく、その現象に一々痛める優しさなど持ち合わせていられる程に私の心は広くもない。
しかし……。
「えいっ、えいっ、えいっ」
目の前で、気の抜けた声をあげて両手剣を素振りしているエルフくらいの気位があれば、生き抜くことなど大した問題にはならないのだろうなぁ。
「な~な~ゾンヲリ。いつまでこれ続ける気なんだ。もう素振りに飽きて来たぞ」
普段面倒臭がって寝ているネクリア様が珍しく夜の日課に顔を出している。それどころか、何故かブルメアと張り合って一緒に訓練用の両手剣の素振りまでしている。
明日、流星群でも降るのだろうか。
ちなみに、素振りの様子を見るとネクリア様がブルメアの三倍の速度でブンブン振り回している。ブルメアと違って全身の力を無駄なく使うといったことはせず、手首の力だけでブンブンと振り回している。
客観的に見て、剣の重さで手首を痛め、力の無駄使いで疲労を溜めやすく、不測のケガすら心配になるものだが、そんな出鱈目なやり方から生じる剣風圧と風切り音の凄まじさから威力は推し量れるだろう。
つまり、従来備わってる単純な身体能力の高さにモノを言わせて棒切れを振っているだけなので素振り練習の体をなしていない。もっとも、ネクリア様に戦闘感覚を期待するのは色々な意味で間違ってるのだから、食後の健康的な運動に関心を示すようになったというだけでも僥倖だろう。
「ネクリア様……私は朝まで続けるつもりですが」
「私も~、えいっ、えいっ、えいっ」
「ゲェ……本気か……? うっ、もういい、疲れたから休も……」
ネクリア様はぺたんと、手ごろな岩に背もたれるようにして座り込んでしまった。
きっとネクリア様の反応こそが正しいのだろうなぁ。なにぶんブルメアが根性を出して私の修練に付いてきてしまうばかりに、この異常な空間においてネクリア様が少数派となってしまっている。
「えいっ、えいっ、えいっ」
素振りを始めてからおよそ1万6千4百5十回程、ブルメアは一切休まず鍛錬し続けている。ちなみに、ブルメアのように素振り一回につき一呼吸を置くような形のやり方を朝まで継続すると4万回くらいになる。
……ここまでは付いてきてる辺りネクリア様も割と根性あるのかもしれないな。
しかし、このまま旅の前にブルメアをバテさせるわけにもいかないか。
「ブルメア、ここまで飽きもせず剣を素振りし続けてどう思った?」
「えいっ、えいっ、ちょっと疲れるよね!」
「なら一旦休憩にしておこうか」
「え、もう? 訓練やめちゃうの?」
……何故ちょっと名残惜しそうな顔をしているんだろうなぁ、このエルフ。一体誰が彼女をこんな風にしてしまったのだろうか……。ああ、私か。
やはり負債しか残していない気がするな、私は。
「今から座学にする。とりあえず座っていろ。まずは話を聞くんだ」
「うっ……難しい話よりは身体動かしてる方が好きだけどなぁ……」
ブルメアのその言葉には同意しかない。私も頭を使うことは得意ではないし、好きでもない。だが、否応にもなく頭を使うことは強いられるものだ。
「剣を振るにせよ最低限の知識はあった方がいい、闇雲に私の真似をするばかりが近道というわけではないぞ」
私の剣技は我流であるし、自分の守りを省みず攻撃に特化しすぎている。さらに、ダインソラウスという剣の使用を前提とし過ぎているので、本来は参考にしてはいけないのだ。
他の剣で同じ戦い方をすれば命取りになりかねないのだから。
「だから今から、私が帝国式の剣術を見せる」
「て~こくしき?」
「多くの人間が剣を学ぶとしたらまず始めに体系的に習うであろう型。ようするに、基本の型だ。そして、基本故に"技術"として洗練されているので隙がない」
これはあえて言わない事だが、基本というのはそこに徹底的な利が詰められているからこそ基本となりえる。それ故に、実力と剣の質が同じならば利のない我流の剣技では帝国式剣術にはまず勝てない。
もっとも、帝国式剣術にも幾つか弱みというものも存在する。まず、その剣技の想定されている相手が"対人"であるということ。尚且つ、重装備の鎧を着こんでいて一撃で寸断できないような相手であること。そして、相手も"剣や槍を用いる"こと。
つまり、敵の剣を捌きながら、硬い鎧を着こんでいる敵に致命傷を与えることに特化している。
何故このような型が基本の型なのかと言えば、魔導帝国は元々周囲の国と争い併合する事によって勢力を広げてきた国家だからだ。故に、本来の想定敵は魔族ではなく、"人間"なのだ。
言ってしまえば、"人殺し"に特化した技術というわけだな。
だが、技術として洗練されているが故に、思考と動きも読みやすい。だからそこに"応用"や"駆け引き"も生まれて来る。尤も、何事も"基本が前提"の話だ。それにも満たない実力を問答無用で圧殺する程度の力はあるからこそ、"技術"と呼べるのだから。
「ではブルメアに聞くが、この構えの状態から何をしてくるか予想は出来るか?」
両腕を下げて剣の切っ先も地面に目掛け、胴体から上をがら空きにして見せる。
「う~ん……? 構えてるの? あっ、分かった! 頭を狙わせる誘いって奴だよねっ! じゃあ、えっと……下から潜り込む感じで突いちゃうのかな?」
……正直驚いた。
これを初見で看破するのか。
「よくわかったな。正解だ。だが、どうしてその答えに至れたんだ?」
「だって、いつもゾンヲリの事見てるもん。それにゾンヲリってばイジワルだもん。ぜ~~~ったい捻くれてる問題出すって思ったもんね。えへへっ」
もしや、ブルメアは私という"人間を読んで"その答えを見つけたのか。だとすれば末恐ろしいな。
ならば、私も反省しなくてはならないだろう。ブルメアに人間を読ませてしまったというのは、つまり私のクセが見抜かれてるに等しく、戦いにおいてクセを読まれるというのはもれなく致命傷になりえるのだから。
「では何故、下段構えをとるのか、利点を説明できるか?」
「う~ん……? ゾンヲリがいっつも夜に訓練してる時の動きがそうだから、じゃダメなのかな?」
確かに部分的には私もこの構えの利点は取り入れている。
「……上段への防御をがら空きにするというこの構え、一見無防備な"愚者"にも見えるが、本当に愚かなのは誘いに乗って上段から剣を振り下ろした側になるわけだな。それと実の所剣を"下段に構える"というのは意外にも防御に適している。先ほどブルメアが言ったように、中段からの払い切りも潜って避けられるので対応できる範囲が広い。ようするに、相手の攻撃に応じながら反撃に移る"後の先"をとる戦い方に適しているというわけだ。とりあえず、この構えの状態から始まる動きの派生は見せておく」
反面欠点を挙げるならば、両手剣で後の先をとる構えなどと、相手に先手を譲り折角のリーチを活かさない。さらに、剣を伸ばし下に向けるという姿勢は腕に大剣の重みがかかるので疲労も溜めやすい。
なので、帝国式剣術で両手剣を扱うならば"疲労を溜めない"ようにするために正眼に構えながら軽く肩に剣の重さを預けておくべきだと"始めに"指導を受けるものだ。大剣の重みに任せた一撃必殺の"縦切り"や"袈裟切り"を繰り出す際にも無駄が少なくなるのだから。
だが、正眼に構えてしまうと剣先が真上の空を向いてる事になる。当然だが、大剣の縦切りなど左右のステップだけで避けられる。肩から斜め下に目掛けた袈裟切りでも、来ると分かってれば簡単に潜り込める。
そして、縦に振ってしまった大剣の重みと勢いを腕の力だけで支えて切り返すというのは無理がある。故に、大剣の縦切りや袈裟切りを一度かわした後に反撃する、即ち"後の先"をとる戦い方が大剣に対する対策になるわけだ。
後の先をとらないにしても、膝下などの下段を狙った攻撃を受けるとどうなるか、"手首だけ"で重い大剣の切っ先を下に向けて敵の攻撃を凌がないといけなくなる。
当然だが、正眼や上段の構えではまず防御が間に合わない。仮に間に合っても相手は全身の力を乗せてる攻撃に対しこちらは手首の力だけで受けないといけなくなる。そして、単純に大剣を振り下ろす形なのにその重みを支えるためにかかる手首への負担は甚大なものだろう。
まぁ、"同じ力量ならば"まず押されてしまう形になる。
だから、大剣を扱う者にとって下段に対する攻撃というのは泣き所になる。もっとも、これは大剣に限らず、剣という武器自体がもつ弱みでもあるのだが。
故に、始めから下段に構えておけば相手の上段からの攻撃はステップでかわし、下段に対する攻撃にも全身の力と大剣の重みを乗せながら受けて跳ね除けることができる点がメリットだ。
「ねぇ、ゾンヲリってば、さっきから全然"剣"使ってないよね?」
「気づいたかブルメア? 対等以上の剣士を相手どった場合、武器の重量差の問題で大剣を振っていられるような余裕はない。仮に振れたとしても"鎧ごと一撃で寸断できない"場合はただの鈍器と同じになる。つまり、胴体などに斬撃を加えても致命傷を与えることは出来ないのだ」
当然、ブルメアの筋力では大剣を振っても鎧ごと一撃で寸断など出来ないし、剣自体が鎧の強度に耐え切れず負ける事もありえる。例えば、コバルトクレイモアの切れ味は鋭いが、撫でただけで金属鎧をバターのように切り裂ける程というわけではないし、むしろコバルト以上の金属を相手すれば単純に剣が"力負け"し始める。
よって、切れても一人か二人が限度だ。それ以上はまず刃こぼれを起こす。
「そして、固い鎧で守られている相手には、結局鎧の継ぎ目や顔面を狙って"突く"か、再起不能にできる程の"渾身の一撃"を叩き込むしかない。前者を狙うならば短刀や脇差の方が融通が利くし、後者を狙うならば体術で敵の体制を崩す、あるいは武器を受け流すか壊すなりして敵が無防備になる瞬間を作り出さなくてはいけない」
大剣という武器で行える最速の反撃とは薙ぐのではなく、"突く"こと、あるいは"蹴る"、タックルなどの体術を用いるか、鎧通しや短刀のような緊急時用携帯装備に持ち替えて攻撃することだ。
つまるところ、敵に間合いの内側に入られてる時点で大剣とは死に体だ。無理矢理振っても攻撃速度の遅さが致命傷になる。当然、敵はこれらの大剣の弱みという名の"常識"を知っている。
細かい駆け引きはさし置いても"大剣の初撃"は何がなんでも警戒し、それを避けるために回避に専念し、初撃の"後隙"を晒してる間に反撃するのが"定石"となっている。
まぁ、つまるところ、相手が"徹底"して警戒している中こちらから大剣で斬撃を放った所でまず当たらない。"突き"なら多少早くとも、軽い槍と比べれば明らかに遅いしリーチもない。しかも突くためには独特な構えが必要になることから、突きを狙ってる事がほぼバレる。よって攻め手としては弱い。
そうして作られたのが帝国式剣術において4番目に習う"愚者の構え"だ。先制攻撃の有利を諦めリーチという大剣の長所も投げ捨て、始めから"反撃を前提"としていることから、またの名は"敗北主義者"の構えと呼ばれるような代物。
それが、私が今ブルメアに教えている戦い方になる。
逆に言ってしまえば、愚者の構え以外が通じるような相手というのは、工夫もなしに力技でどうとでも薙ぎ払ってしまえるような相手だけだ。
「つまり、はっきり言ってしまえば大剣という武器自体が、"対人戦"においては全く強くないのだ。それどころか多数の致命的な弱点を抱えている。まぁ……それでも大剣を使いたいというのなら、色々と覚悟しておくんだな。まず長生きは出来ないだろう。これで一応止めたぞ、ブルメア」
「えぇ……そんなぁ……」
槍や体術を使うどころか盾で殴った方が遥かにマシだろう。だから大剣を振るってるような輩というのは特大の愚か者か、見栄を張っているだけの物好きか、単純に隔絶とした実力差があるからどうにかなってるようなものだ。
対等の実力を持っている相手ならば"後の先を狙われた段階"でまず勝てなくなる。それが、"対人戦"における大剣という武器なのだから。
「なぁ、私はゾンヲリが何を言ってるのかチンチンプンプンだぞ」
ネクリア様の反応に安心してしまう自分がいた。
「や~ボクもサッパリだねぇ。そんな細かい差なんて気にしても圧倒的に力の差があったらどうにもならなくないかい?」
天使の言う通り、あくまでこれは小細工だ。あまりにも力量差があったらまるで意味をなさないこともあるだろう……だが。
「ヨム、お前の【聖絶の光槍】だったか、理屈さえ分かっていればこんな小さな短刀でも容易く弾ける。それが技術だ。そして、その小さな技術の積み重ねを軽視したからこそ、私よりも優れた身体能力と強大な魔力を持っていたはずのお前は私に敗れたのだろうに。技術の本質とは弱者が己よりも強い者に"逆襲"する為にあるのだからな」
人は何故、己の腕に武器を持って戦うのか。獣のように牙や腕力で戦わないのか、答えは単純だ。人間は弱い。
弱いからこそ、人は武器を持って戦い、武器の振るい方を工夫し、武器自体すらも研ぎすます術を磨くのだ。人間は獣より弱いからこそ、獣から強さを学び、獣の強さを利用し、獣の弱さを突く。
圧倒的な身体能力で目にも留まらぬ速度で力任せに暴れる。大変結構だ。膨大な魔力で無差別に破壊の限りを尽くす。それも結構だ。
そういう化物共を狩るために、人は技術を磨いている。
「なるほどね~勉強になったよ~。ボクのような天使ってね~"生まれた時点から完成していて強い"からさ~、そういう技術を使う必要性っていまいち感じられないんだよね。だからわざわざ学ぼうとも思わないしね~」
生まれた時から強い。故に、己に宿っている力を振るうだけで大抵の者達を相手に工夫もなく勝ててしまう。だからこそ、ヨムの戦い方は言ってしまえば"稚拙"だった。
だからこそこちらが付け入る隙があったともいえる。
「……」
だが、ヨムは敗北を知ったわけだ。ただ強いだけでは勝てないこともあると。そうして天使が慢心をやめて技術を学び始めたらどうなるか。
人の手には負えなくなるだろう。実際、今の私のままでは二度とヨムには勝てないだろうな。
「人間はほんと面白いよねぇ。ボク達天使とくれば600年間はず~~~と同じことにしがみついてるだけなのに、人間は10年も経てば今までに見た事の無い物を生み出しちゃうんだから、見ていて飽きないよ」
「いっそあと400年くらい天界に引き籠ってくれててもいいぞ、痴女天使」
「や~……嫌だよ。こんな面白いことを知っちゃったらもう戻れないじゃないか」
……天使と悪魔のじゃれ合いに気をとられるのは程々にしておかなければな。
「さて、話を戻すかブルメア。貴女は何故、大剣を使おうなどという狂気の沙汰に走った。これで切りたいモノでもいるのか?」
「う~ん……何だろ? ほら、私が大剣使えたらゾンヲリが入った時とか便利だよね!」
あ、また頭の痛みが強くなってきたな……。本当に私から単に剣を習いたいだけなのか……。普通もっとあるだろうに、"普通の武器"では到底切れないような化け物を切るためだとか……。
いや、いいか、もう。
「つまり、ここまで言ってもまだ剣を続けるつもりと?」
「うん!」
「なら立て、今度は素振りじゃない。私がこの木の枝で攻撃を加えるからそれを防ぎ続けろ。反撃できるならしても構わん。朝になるか、嫌気がさして止めたくなるか、足腰立たなくなるまで徹底的にイジメ抜いてやるから覚悟しろ」
「よ~し、私、頑張るからね~」
だから何で嬉しそうにしているんだ。
……しかし、恐らく、本当に頑張るんだろうな……このエルフ。
ならばせめて、"死なない程度"の力だけは身に付けさせてやらなければいけない。
もっとも、しばらくは私の方は絶妙に手加減する訓練ばかりするハメになりそうだが、それでも、そう長くかからない予感もしている。
実際、ブルメアの飲みこみは早かった。前々から短刀術や体術や戦闘の定石をそこそこ教えてきたのもあるが、単純に目が良すぎるからか単調な攻撃にはすぐに対応してくる。
「え~っ!? なんで木の枝なのに剣を弾き飛ばせちゃうの~」
「これは受け売りだが、最適な角度で最適な機会に最適な速度で最適な位置に、一切の無駄を省き寸分の狂いもなく敵の虚を突いて打ち込めば、手で軽くへし折れるような木の枝だろうが鋼をも断てる。それが技術だ。武器の性能に頼ってるようでは半人前以下だ」
昔聞いた"帝国最強"の言葉だ。
もっとも、私もその域は遠い。精々木の枝で訓練用のなまくらを弾き飛ばせる程度でしかない。
――――……
「ふむふむ、いいのかい? ネクリアちゃん、見てるだけで」
「ふん、いいんだよ。アイツがイキイキしてるならそれはそれでさ。ムカツクけどな、あ~すごくムカツクけどな。で、痴女天使、お前の方はどうなんだ? え?」
「ボクかい? ボクはムカつくという言葉や感情を知らないけれど、踊る愚者を眺めてる分には退屈しないよ。 むしろ、愚かだからこそ愛しく思えてしまうんだろうね。ほら、言うじゃないか、踊る愚者に見る愚者、同じ愚者なら踊らなきゃねってね」
「また訳の分からんことを言ってるな。だったら混ざったらどうなんだ?」
「ほら、天使ってば"完成しちゃってる存在"ってことになってるから、"成長する"ことは許されていないのさ。それは、キミ達のように不完全な状態で生まれて来るヒトや生き物の持つ特権だからね」
「私から言わせればさ、痴女天使、お前も大分不完全だと思うけどな?」
「や~一応天使というボクの立場上、それを認めるわけにはいかないのは分かって欲しいね。ネクリアちゃん」
「……ま、いいけどさ。それじゃ見ててもムカつくだけだから私はもう寝るからな」
「眠りもまた、生き物だけが持ちえる特権だよね。なんてね。ただ、胸の辺りがこう、どうして落ち着かないんだろうね? あ、もう寝てる」
既にお気づきの方もいるかもしれないが
ゾンヲリさんは強敵認定している相手には割とダインソラウスを投げ捨てている。
例えばプロローグ第三話のカイル君とかオウガ相手にはタックル使ってるようにな!
既に忘れられているかもしれない生き遅れ女騎士ことウィルナさん相手には脇差を使ってたりする
某闇系の魂ゲームで特大剣で対人した事ある人間ならお分かりいただけるだろう
振ったのを見てから後出しでロリコン余裕されて尻を掘られるのが分かりきってるからその武器一本じゃまず勝てないことを……だから3対1だと特大剣を持ってる奴を見かけた時点でほぼ2対1のイージーモードになるのさ……
それでも特大剣使って勝とうと思えば、左手に短刀持ってパリィしてブスみたいな本末転倒な戦い方をしたり、忍ばせたサイドアームの槍でプレッシャーをかけてロリコンを狩りに行く(むしろ両手長槍だけで勝ててしまう事案多数)とか、ターゲットロック外して未来予知しての暗黒盆踊りを始めたり、尻掘りに来た所をすれ違って尻掘り返すみたいな不毛な戦いをやり始めるようになるという……
というお話が今回のネタなのさ……。