私は夢だと思いたい。1
どんなにつらくて悲しい事があっても、
生きなさい。
それがヤクソクで二人の願いだった。
お母さん、おばあちゃん
ごめんなさい
私、守れなかった。
私はゆっくりと目を開けてすぐに庭にある朝顔が目に入る。
あまり時間が経ってないようで庭は明るく、そこにある朝顔はさっき咲いたばかりというふうに、みずみずしく咲いていた。
これ、本当に朝顔かなあ。真昼間なのにこんなに綺麗に咲いているのはおかしい。
朝顔から目を離し、あたりを見回す。
近くに誰も何もいない事に安心した。
よかった私は生きている。
そう思った矢先、喋る虎と同じ声の女の人に言われたことを思い出す。
『貴女は一回死んでいるのよ。』
よくよく考えたら、そんなの嘘だ。だって
私はお腹が空いている。
それであの時、目の前にあの女の人が置いていった食事を見て、
お腹が鳴ったんだ。
あの時死後の世界の物を食べない方がいいって思わないで食べていたらよかったなあ。
だいたい、私から生えていた翼やあの女の人の声をした虎だってそう、
私お腹空きすぎて、なんかそう、幻見てたのよ。
背中の方を見ると何もない、いつもの背中だった。うん、あれは夢だった。
だいたいこの部屋だってそう、飛び降りさせられた人間を左前の浴衣を着せて和室に寝かす病院がどこにあるのよ。
ほんと、夢の中で夢見てるんだ。次、目を覚ましたら、私は病院のベッドの上で一人でいるんだ。きっとそうよ。
「ねえ、さっきから何、夢だ、幻だっ言ってるの」
「えっ」
「いい加減、受け入れなさいよ。
ここが夢じゃなくて、
現実だってことを。」
声のした方を見ると襖が開いていて、
そこに青い目で青みがかった白い髪を肩に少しかかるくらいの長さで切りそろえて白いワンピースを着たどことなく涼しげな雰囲気の私と同じくらいの女の子が籠を持って立っていた。