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ユキちゃんは縫う。2

「あ、ユキ!あんた、どこいくん。こっち手伝って、」

行く途中キキが、さっき帰ってきたキノマルさんが使っていたハサミに絡まった糸屑を剥がしていた。キキもキノマルさんが帰ってきたから自分の仕事じゃなくてこっちをやるらしい。

「ごめん、お虎さんにあの子を縫うよう頼まれて、そっちやるのちょっと無理。」

キキはなにかを思い出すように首を傾げる。

「あれ、あの子拾ったとき別に穴とか、糸抜けたりしてなかったはずなんやけど。」

「どーも、虎の姿のお虎さんを見てびっくりしたら、糸が抜けたみたいで。」

「あの子びっくりしすぎやろ。そーいえば、うちが拾った時もうちが変身したの見て、気絶したわ。」

キキが変身したの見て気絶したってあの子、怖がりなのかしら。



あの子の部屋の前に行くと

「夢だ。これ絶対夢だ。」

「起きたら病院のベッドに寝てるんだ。」

とそんなことをぶつぶつ言っていた。

今のこの状況を夢だと思いこもうとするのは

あるあるだ。私もここで起きたばかりの頃はそう思った。

「ねえ、さっきから何、夢だ、幻だっ言ってるの」

「えっ」

「いい加減、受け入れなさいよ。

ここが夢じゃなくて、

現実だってことを。」

私は襖を開けて、あの子に向かって言った。

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