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ユキちゃんは縫う。1
「この布には、この糸で縫ってこっちの方は切って、」
カタンッ
「ユキちゃんごめん今さっき自分の仕事してねって言ったけど、あの子のこと縫ってくれないかな。」
そう前足を使って襖を開けてすぐ、お虎さんは困った顔をしながら私の方をみた。
「あれ、あの子最初に見たとき、別にほつれたりしたところなかった気がしたんですけど、それに連れてきたキキも、何も言っていなかったし、」
「それが、私のこの姿みて気絶したら、ブチブチって音がして、糸抜けてた。」
申し訳なさそうに耳を下げながら、うじうじした空気を放っていた。
まあ、お虎さんのこの姿を初めて見たら、大概の人はびっくりするわね。
なんせ、人より大きい虎なんですもの。
「いいですよ。仕事の区切りがいいところなので。」
「よかった。ユキちゃんが仕事してるからルッカくんに頼もうとしたら、さっきキノマルが帰ってきたから、そっちに行っちゃったのよ。」
あー、キノマルさんいつも、ほつれて穴作って帰って来るからなあ。
私は糸束が入った籠を持ってあの子がいる部屋にむかった。




