ep.1
●海月 ハイゼ
ミツキ・ハイゼ。 12歳の男の子。
国連 地球防衛軍にてエイリアンと戦っている。
●サイサリア
30歳。 ガチムチの大男。
国連 地球防衛軍に所属する兵士。
戦場に向かうV-22の機内で居眠りをする――はずだった。
居眠りはボクにとって大切な時間だったのに、向かいのシートに座る男たちの話し声で目が覚めてしまった。
「――おい、さっきのヤツ見たか? 昨日、特例だとかで入った新入り」
「見た見た。 アイツ、まだ12歳なんだろ?」
「ああ、そうだ。 なのに、あんな派手なパワードスーツ着込んで、おまけに剣なんか装備してやがる。 ヒーロー気取りかっての」
目の前で、2人の兵士が言葉を交わしている。
時折、こちらを指差しながら。
「ここは遊ぶところじゃねえよ。 ガキは家に帰って、大人しくママのおっぱいでも吸ってな」
前にも居たな……。 嫌味を言って、そのあと死んでいった兵士が。
ボクの目の前で、エイリアンに噛み砕かれて死んでいった兵士たちが。
「言い過ぎだぞ――」
別の兵士が注意しようとして――
「――っ!?」
――いる最中に、ボクは目にも留まらぬ速さで剣を引き抜いて、兵士の喉元に突きつける。
「喉かっさばく? 首を切り落とす? どっちがいい?」
「お……お前!」
怒った兵士は、パワードスーツを固定するアームを外そうとした。
オスプレイが飛行している間、緊急時以外でアームを外すことは禁止されているのに。
「やめろサイサリア! 飛行中にアームを解除するのは禁止されてるだろ! お前も剣を下ろせ、ハイゼ」
「はいはい」
舌打ちしながらボクは剣を下ろす。
サイサリアと呼ばれた男も大人しくなったらしい。
"サイサリア"……だったっけ?
名前でデータベースを検索して、そいつの顔を覚えておいてやろう。
剣を鞘に収めながら、ボクはAIに名前を調べさせる。
そして、1人の男の顔写真が表示された。
「――――」
焦げ茶の短髪に青い目。 顎に散らばった、薄い無精ヒゲ。
他の兵士より肉体も鍛えているらしい。
これだけのデータがあれば、あとで探す時の手間も省けるだろう。
「――さっきハイゼが手にしてた剣、きれいだったな」
唐突に、隣でサイサリアをなだめていた男が話しかけてきた。
「ああ、この剣――"キロネックス"はね、刀身がフォトニック結晶で作られてるんだよ」
「そうだったのか」
30年前から、地球は未知の生命体――いわゆるエイリアンから、攻撃を受けていた。
30年前の戦争中に、エイリアンのコアを加工して作る『フォトニック結晶』が生まれ、それを動力源として利用した兵器――パワードスーツが誕生した。
ダイヤに似た外見をしているフォトニック結晶は、膨大な量のエネルギーを溜め込んでいるために、内部が虹色に輝く。
だから、ボクは集めた結晶を剣に加工してもらって、戦場で振るった。
「どうして剣に加工したんだ? フォトニック結晶は売れば金になる。 傭兵なら、みんなそうしているんじゃないのか?」
「お金には困ってなかったから、試しに作ってもらったんだ。 結構切れ味もいいんだよねコレ」
「へぇ……オレも真似してみようかな」
「じゃあ、ボクが工房を紹介してあげようか?」
「わかった。 機会があれば頼む」
ボクと兵士が仲良く話しているのを見て、サイサリアは不機嫌そうに体を揺すっていた。
青いパワードスーツを着ているせいで、表情まではわからないけど。
「2人ともパワードスーツの色が似ているな。 青色は青色でも、色味とかが違うはずなのに」
兵士の言葉のあと、サイサリアは顔を背けてしまう。
「単なる偶然でしょ。 同じ工房で塗装してもらったとか、同じ色を選んだ――とかでさ。
でも、サイサリアは地球防衛軍の所属なんじゃ」
「いや、サイサリアは民間軍事会社の所属だったんだよ。 まだ新人だから、経験を積むためにこっちの部隊に出向してる」
「なるほどね。 サイサリアが不機嫌になるわけだ。 ボクと同じ経歴だから」
エイリアンとの戦争から30年経った現在。
国連の地球防衛軍とは別に、PMCが依頼を受けてエイリアンと戦うようになっていた。
――9歳。
ボクは、9歳で両親が立ち上げたPMCに"入社"した。
そして今日までエイリアンどもと戦ってきた。
義務教育は通信教育で受けているんだけど、"戦争に関する知識以外は穴だらけだ"――と、評価されたこともあったっけ?
「ボクの家、生活が厳しいからね。 こうでもしなきゃ生きていけないのよ」
ボクは嘘をついた。
本当は、両親が経営する会社の業績は好調。
でも、他人に"ボクは戦うのが好きです"なんて答えたくなくて、嘘をついた。
『コイツは戦闘狂なんだ』――と、思われたくなかったから。
「でも、反対する奴らも居たんじゃないのか?」
彼が言うことはもっともだ。
けれど……
「それは大丈夫。 何もしないくせに一丁前なことを言うやつは、この手でぶちのめしてきたから。 老若男女問わずに、何度も何度も……ね」
最後のセリフだけ、いたずらっぽく言ってみる。
「ぞっとしない話だな」
〆にウインクをしたボクを見て、兵士は肩をすくめた。
"こんな子供に戦わせるなんて!"
"子供を食い物にして、儲けることの方が大事か! あんたらは!"
まだ小学校に通っていた頃に出会った、厚化粧の教育ママや、熱血教師。
そいつらの顔や言葉を思い出すと、イライラしてしまう。
でも、この手でやつらを殴った時の感触と、ボクに殴られて驚くやつらの顔を思い出せば、落ち着いた。
――ボクの行為に絶句するヤツらの表情。
――拳にじんわりと広がる鈍痛。
これのお陰で、ボクはやっと子供らしく振る舞えている気がしたんだ。
「どこまでオレと似てるんだ……」
サイサリアがなにか呟いた気がした。
「なんか言った?」
「いや。 お前みたいなガキでも、辛い経験とかしてるんだなって」
「辛いとは思ってないけどね。 ボクのことなんて、ボク自身にしかわからないんだから」
「ああ、そうかい」
そうだ、ボクのことは……ボクにしかわからない。
例えば――"センチネルバースのある世界でガイドになった少年"を主人公にした小説とか、"生きた死体の製作者でありながら、敵に味方する少年"を主人公にした小説があるとする。
『その小説を見た祖先が、数百年もかけてその主人公を再現しようとして、なんとか"雛形"を作りました』――と自己紹介して、信じてもらえるだろうか?
いや、信じてくれない。 きっと。
だから、ボクは普通の人間とは違う生き方をすることにしたんだ。
◇
「もうすぐ降下地点だ! 全員、用意しろ! サイサリア、また動けなくなるなよ」
「わかってる!」
恐らく、前の戦いでのことを言われてイラついているサイサリアを尻目に、ボクはパワードスーツの状態を確認する。
ボク達が装備するパワードスーツは、複合素材とフォトニック結晶の微粒子を混ぜ合わせた強固な装甲を持ち、胸部に動力源として大型のフォトニック結晶(いわるゆ炉心というもの)を搭載していた。
関節部には高出力のモーターが組み込まれ、自動車程度なら持ち上げられるようになる。
背中とふくらはぎ、そして足の裏に小型で高出力の推進器を備えるから、短時間なら空だって飛べるのだ。
だから現在も、パワードスーツはエイリアンとの戦闘における主力であり続けていた。
「――サイサリア。 武器は何を選んだの?」
ボクは、固定を外して隣に並んだサイサリアを見る。
なんだか動きがぎこちないので、緊張しているのだろう。
「――20mmアサルトライフルとシールド、バックパック右にレールガン、左に予備弾倉を積んでる」
少しの間のあと、サイサリアは答えた。
「積みすぎかもだけど、悪くはないんじゃない? 頼むから誤射は止めてね?」
「馬鹿にすんな! ライフルくらい普通に撃てる!」
感情的になったサイサリアに対して「はいはい」と素っ気なく返しながら、ボクはHUDに戦域MAPを表示させた。
数秒後にデータリンクが更新され、MAPにマーカーが置かれる。
――つまり、戦場に到着したということだ。
「みんな、めちゃくちゃだ」
街の景色を見て、ボクは淡々と呟く。
「フロリダ、好きだったんだけどな」
サイサリアもまた、淡々と呟いていた。
◇
破壊された建物、炎上する車。
変わり果てたフロリダの街並みが、次々と表示されていく。
それらの映像が、戦闘の激しさを物語っていた。
2日前にフロリダを襲撃したというのに、ここまで街を破壊できるのは、エイリアンが物量という面で人類に勝っているからだろうか。
「そろそろ降下準備を始めてくれ! 飛行型エイリアンが気付く前に離脱したい!」
オスプレイのパイロットが声を上げた。
「お先にどうぞ、サイサリア」
顎をしゃくって、開かれたハッチを示す。
「降下してすぐに腰を抜かしてたら、ボクがそのケツ蹴っ飛ばしてやるからさ」
ボクの言葉に、周りの兵士たちが思わず吹き出した。
「お前な、オレのほうが先輩なんだぞ」
「関係ない。 というか早くして、後ろが詰まっちゃう」
サイサリアは、ため息をついてから固定用アームを外し、オスプレイから飛び出した。
サイサリアをきっかけに、機内の仲間が続々と飛び出していく。
ボクは最後にオスプレイから飛び出して、離脱していくオスプレイを見送った。
◇
――高度は100mほど。
この程度の高さなら、スラスターと反重力システムによって安全に降下できる。
「――!」
なるべくならエイリアンが居ない場所に降下しよう、と考えていた時に、アラートが鳴った。
「SOS――か」
すぐ近くで、パワードスーツがエイリアンから攻撃を受けたらしい。
パワードスーツはSOSを自動で発信する。
ただし、スーツが信号を発するのは身動きが取れない状態――つまり兵士が死ぬ寸前だ。
エイリアンは、おしなべて顎や脚部の力が強いので、パワードスーツの装甲ごと兵士を砕いてくる。
「この識別番号は――」
確認すると、SOSを発していたパワードスーツは、サイサリアのものだった。
「この――離れろ――!」
今はアリの姿をしたエイリアンに噛みつかれ、装甲を剥がされそうになっている。
(運が悪いなあいつも!)
ボクはアサルトライフルをバックパックに戻し、代わりにキロネックスを構え、アリの頭に突き刺せるように落下軌道を修正する。
◇
アリの頭に着地すると同時に、キロネックスが深々と突き刺さった。
突き刺した部分には、エイリアンにとって最も重要な器官――コアがある。
コア=心臓という常識は地球外生命体にも適用されるようで、ここを破壊されれば、エイリアンは即死するのだ。
「サイサリア、生きてる? 死んでる? どっちでもいいから返事して」
ボクが声をかけると、倒れていたサイサリアはアリの死体を蹴ってどかし、ゆっくりと起き上がる。
「死んでたら、返事はできないだろ」
「ボクなりのジョークってやつよ」
キロネックスを振るって付着した体液を落とし、腰の鞘に格納したあと、アサルトライフルを装備した。
サイサリアも、パワードスーツの装備を確かめ、落としていたシールドを拾い上げる。
「……サンキュー」
「ボクのこと散々馬鹿にしてたくせに、お礼は言えるんだね」
「うるせぇ」
不機嫌そうにしているサイサリアの顔が、HUDに映し出される。
ボクは彼と映像通信を交わしていたので、そんなサイサリアに対して微笑んでやった。
「まあ、助けられて良かったよ。 いざっていう時のために、人手は多いほうがいいからね」
「可愛くねぇやつ」
「うるさい。 それに、大人の機械化歩兵は大事にしないと。 言う事を聞かない子供と戦うのはイヤ」
10代の少年少女が、パワードスーツを着てエイリアンと戦う。
もう珍しいことじゃない。
パワードスーツが少なかった30年前の戦いで、優秀な大人達が数多く戦死していったからだ。
だから、子供が割を食っている。
今は、各国に訓練学校が設立されていて、ある程度の基準を満たせば、PMCにだって入れるようになっている。
ただし、PMC入れるのは"15歳以上になってから"という条件はあるけど。
ちなみに、ボクは例外中の例外である。
ボクがPMCに関する法律について学んでいた時、法律の"穴"を偶然見つけて、その穴を突いてPMCに入隊した。
「じゃあ、サイサリアはボクに付いて来てくれる?」
戦況を把握しながら、次に向かうべき場所を決める。
「味方ともはぐれちまったからな。 何をすればいい?」
「ボクは前に出る。 そっちは援護を」
「OK、任せろ」
ボクはスラスターを吹かし、地表を滑り出した。
直後、目の前に飛び出してきたクモ型エイリアンを叩き切る。
クモの後から飛び出したアリは、サイサリアが撃ち落としてくれた。
「どこに移動するんだ?」
サイサリアが、周囲を索敵しながら聞いてきた。
「今居る所から、ヨット・クラブにまで移動する。 道中で孤立している味方を保護して、そのあとセント・ルシー川下流に展開している部隊から補給を受ける。
ボクのパワードスーツは平気だけど、射撃が下手なアンタや、道中で助けた人たちは、弾薬・燃料が心もとないかもしれないでしょ?」
「たしかに。 オレも無駄撃ちしちまうしな」
彼は、ボクの説明に納得しているようだ。
まあ、ボクがこうやって説明できるのは、PMCとして戦ってきた経験があるからだけど。
◇
戦術MAPには、他の部隊のものと思われる信号が多数と、戦車・装甲車合わせて3台分の信号がある。
ボクとサイサリアが居るのは、セント・ルシー川を挟んだ向かいの街『パーム・シティ』を直接視認できる場所だ。
エイリアンは、1週間前に突如地中から現れ、圧倒的な物量で街を制圧した。
話によれば、制圧するのに2日もかからなかったらしい。
街の住人を避難させたアメリカは、パーム・シティ解放作戦を計画。
最初に、アメリカ軍 海兵隊の部隊が、前線基地となった『ウィザム・フィールド空港』に派遣された。
そして、作戦中にエイリアンの増援を確認したアメリカ軍が、国連やPMCに援軍を要請。
手の空いていたボクが、フロリダに派遣されたのである。
◇
作戦開始から1時間後。
ボクたちは、補給部隊が展開していたセント・ルシー川下流に到着し、道中で助けた兵士達と共に補給を受けていた。
「なあ、お前はどこの所属なんだ? PMCから転属したとしても、国連の部隊に所属することになるんだろ?」
「日本支部の第4小隊だよ。 そこからガルフポート基地に派遣されてる」
「日本人なのか? 12歳と聞いてはいたが、データより若く見える」
「背が平均より低いからじゃない?」
補給中の兵士たちと話しながら、ボクは周辺を警戒する。
こんな時でも、気を抜くことはできない。
補給中に襲われて戦死する兵士も多いのだ。
「あの、私達はこれからどうすれば良いんでしょうか?」
補給を終えた女性兵士が質問してきた。
「補給完了後、パーム・シティに繋がる2本の橋の一つ、サウスウェスト・モントレー・ロードの近くまで移動したい」
「なんでそんな所に?」
補給を終えた男の兵士が、首を傾げる。
「戦況は拮抗してる。 ボク達が橋のどちらかを制圧できれば、車両や歩兵が侵入できるようになって、戦況は一気に優勢になると思うんだよ」
「だが、航空隊は飛行型と交戦中。 橋を壊すわけにはいかないから、ミサイル攻撃も要請できない」
「わかってる。 いま確認できてるエイリアンの種別は?」
「数が多いのはクモとアリ。 二つの橋の入口をダンゴムシが塞いでいて、奥のイモムシが、アリやクモを運んでいるらしい」
データリンクに表示される様々な情報を元に、ボクは黙考する。
「戦闘ヘリは出せませんか? 一応、艦に待機させてあるんですよね?」
若い男の兵士が手を挙げる。
「戦闘ヘリなら、橋を越えてエイリアンを叩ける。 しかも、橋に流れ弾を当てないようにできるね。 ――最速で来れるとしたら何分?」
「8分だそうです」
バックパックの左側に予備のアサルトライフルを格納させ、キロネックスを構えながらボクは立ち上がった。
「じゃ、橋に居るエイリアンが増える前に行くよ。
橋に到着したら、ボクが突撃して真っ先にダンゴムシを撃破するから、残りはボクを支援しつつ前進し、橋を制圧。
あとは、ヘリが到着するまでの時間を稼ぐ」
「――少し無茶な作戦じゃないか? ハイゼ」
サイサリアが、不安そうな声で言った。
「PMC時代の時と同じことしかしてないけど?」
ボクは笑いながら通信回線を開き、ガルフポート基地所属で、第2小隊の隊長であるデイビッドを呼ぶ。
「デイビッド、セント・ルシー川に来れる? 橋を一つ取り返したい」
「また唐突な……。
まあ、こちらは部隊も健在だし、弾薬に燃料も足りてるから問題はない。 なにをすればいい?」
しっかりとしたデイビッドの声に、部下達の声が混ざって聞こえる。
デイビッドと彼の部下は健在らしい。
「ボクらが突入するタイミングに合わせて、制圧射撃をしてほしい。
川から侵入しようとするエイリアンと、低空飛行してるエイリアンの処理が面倒で」
「他に動けるヤツらを連れてすぐに向かおう。 合流はいつだ?」
「5分後」
「了解。 ――無理はするなよ」
通信が切れる寸前で、デイビッドは笑った。
デイビッドは少し厳しい人らしいが、部下に嫌われていないのは、優しいところもあるからだろう。
「連絡も終わったし、そろそろ始めようか。
後方や地中、あと上からの襲撃に対する警戒は怠らないで。 陣形はデータリンクを参照」
「了解!!」
ボクの命令に、みんなははっきりとした声で答えてくれた。
◇
陣形は、ボクを先頭に前衛が楔型に広がり、後衛が縦に並んで鏃を構成するようになっている。
この陣形なら、橋のような場所で高い攻撃力を発揮できるからだ。
橋に向かう途中、多数のエイリアンが襲いかかってきたが、デイビッドとは別の部隊が援護してくれたおかげで、ボク達は消耗しないで済んだ。
そして、目的地である橋が見えてくる。
「ハイゼさん、注意してください。 イモムシからエイリアンの反応が出てます」
データベースによれば、まだ機械化歩兵としての日が浅いらしい女性兵士が、焦った様子で声をかけてきた。
「こっちに気付いたみたいだね。 ボクは予定通り先行するから、みんなは援護」
「了解」
指示しながら、ボクはさらにスラスターを吹かした。
そしてバックパックのサブアームを展開し、ライフルを連射させながら先陣を切って突入する。
「すげぇ、体を左右に振ってるのに、クモの脚だけを壊して止めてやがる」
「それだけじゃないわ。 ジャンプした個体への反応と対処は――もっと早い」
通信で聞こえてくる兵士たちの声。
ボクの攻撃で動きを止められ、動けなくなるエイリアンを見ながら、誰もが驚いていた。
一見、エイリアンを殺さないため無駄に思えるが、固い甲殻を攻撃して破壊するより、弾薬と燃料は長持ちする。
「足が止まったエイリアンの動きに注意して! 絶対に油断しないでよ!!」
ボクは大声で怒鳴り、さらに加速する。
「了解!」
ボク達の背後に居るエイリアンどもは、川沿いの攻撃艇とデイビッドが率いる部隊からの制圧射撃によって、身動きが取れない。
代わりに、橋の出口からやって来るエイリアンの数は増えていった。
「全員! ボクが跳躍したら続いて! ボクがダンゴムシを撃破するまでの間、滞空してダンゴムシ以外を攻撃!」
命令しながら、ボクはスラスターを全開にして跳躍した。
ボクに続いて、みんなも跳躍する。
その後、跳躍の限界点でサイサリア達は滞空し、こちらを見上げるエイリアンに鉛弾の雨を降らせた。
一方、ボクは橋の欄干に着地し、そこから更に跳躍して高さを稼ぐ。
同時に、弾切れになったライフルをバックパックから切り離し、キロネックスを構えて急降下する。
「死ね!」
ボクは、ダンゴムシの上に着地した。
急降下によって威力が増した一突きがダンゴムシの甲殻を砕き、裂け目から緑色の体液が噴出する。
ダンゴムシは、ぴくぴくと体を痙攣させたあと――絶命した。
「このままイモムシも殺る! 続いて!」
「了解!」
――休む暇なんてない。
すれ違いざまにエイリアンを斬り伏せつつ、ボクは口を閉じようとするイモムシへ接近した。