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第四話

「鋼に選ばれてにゃい!?そんにゃことあるのかにゃ!」

「あるんだなぁこれが」


 俺がしばかれた後、俺達はちょっとした世間話に興じていた。

 多摩が焦った様子で捲し立てる。


「ど、どうするんにゃ?七日の試し斬りが済んだら『御前試合』にゃ、傀儡だけでにゃんとかする気にゃ?」


 『御前試合』、ようはうちの里長三忍衆の前でやる、実力試しの場だ。

 頭領自来也様、大蛇丸先生、最後に綱手姫様。

 この御三方の前で技を競う。

 特に皆がアピールしたいのは、実務全ての長である自来也様だろうな。

 俺?俺は、何でかあの人にクッソ嫌われてて、どんだけアピールしても無駄なのが分かり切ってるんだよなぁ。


「俺だけ機巧のお披露目会になりそうだぜ」


 あーでも流石に爆弾だの毒ガスだの、そういったのは使わねえ方がいいよな……。

 この世界、なまじファンタジーだからか代用武器が作りやすいのなんの。

 怖いぞ?材料と十分な妖力……MP的なアレがあったら簡単に爆裂するお札が量産できるんだから。

 でもまぁ、爆弾で俺TUEEEできない理由があるんだよな。


「あんたの傀儡はすごいけど、早く鋼を持たないとやってけにゃいよ?」

「わかってるっての。だから蔵と魔窟を行ったり来たりしてんじゃねえか」


 銃さえあれば何にでも勝てた前世と違い、こっちは物理攻撃無効の妖怪や、腕が千切れても一瞬で生える妖怪が居る。

 そしてそれを妖刀の呪いなんかで突破する、らしい。

 『回復不能の傷』や『即死する呪毒』とかで。

 今のところ、見たことがないから断言できないんだがな。

 けど、これからは魔窟第三階層『鬼ヶ原(おにがはら)』が解放される。

 そこにわんさといるんだろうよ。


「とにかく、俺はまた今から蔵に行く」

「俺は鍛冶オヤジに話を聞きに行く。ではな」

「おう」

「私は魔窟で試し斬りにゃあ。七日後が楽しみにゃあ」


 そんなわけで二人と別れ、俺はひとり里の西に向かった。


 この鬼ヶ島は山がちな森で構成されており、島中央の山に魔窟、その麓から西へかけて学舎、東に工房、北に港、南に居住区が存在している。

 そして今、俺は学舎の外れへと向かっていた。

 学舎、文字通り様々な学問や技術を修める場所で、5歳から15歳くらいの子供のための施設だ。

 ちなみにそれ以上の年齢層は魔窟へどうぞと言われる。あるいは実戦に放り込まれる。

 そしてまさに俺が数え12歳だからもうすぐ実戦行き、商品として出荷されるわけだ。


 ここらでうちの組織について話しておこう。

 俺の生まれた里であり、所属している組織の名は『大蛇忍軍』。

 諜報暗殺破壊工作、流言卑語から要人護衛に魔窟攻略となんでもござれな傭兵組織で、言ってしまえば物騒な人材派遣会社だ。終身雇用制で福利厚生は割りとしっかりしてる。


 そして里長三忍衆。

 ひとりは八八八代目頭領自来也の旦那。主な仕事は外回り。半妖。

 ひとりは学舎の長である大蛇丸先生。里の子供たちを愛するがゆえに、立派な殺戮兵器に仕上げることを使命としている。妖怪。

 ひとりは綱手姫様。謎。魔窟の管理者らしいってことしかわからん。妖怪。


 ちなみに俺も含めて里の連中全員が半妖だ。


 ……さらにちなみに、他所の忍者はうちのことを妖怪忍者って呼んでるらしいぜ。

 さもありなん、『魂鋼』に選ばれるってのは―――


『おお、帰ったか木操朗。鋼は……やはり融け合わんか』


 蔵の前に、実にファンタジーな存在が居た。

 瀬戸物だ。

 割れ、欠け、砕けた瀬戸物の小山。

 見上げるくらいにはあるそれが、人の腕のように盛り上がって手を伸ばし、人の顔らしき窪みを歪めて口をきいた。


 ―――『妖怪』と化すのと同義なんだからよ。


 『せとものまじん が あらわれた !』ってな。

 へへへっ!まぁ手軽にパワーアップできるってことで納得しとこうや。俺はもうしたぜ?


「へっへっへ、いや面白い武器だったぜ?くいっとやりゃしゃあと伸びてずばずばずば」

『そこまで使いこなせて何故融け合わんのだ……』

「だから前から言ってるだろ?銃なり大砲なり手軽にぶっ殺せるもんくれたら融けたことにするってよ」


 冗談めかして俺が言えば、翁は顔をしかめ、低い声で脅すように口を開いた。


『……何度でも言うが』

「わかってるわかってる、選ばれてない『魂鋼』は絶対に返せ、だろ?」

『そうだ。さもなくば鋼に取り殺され、鋼の一部とされるぞ。この『合魂(ごうこん)の儀』はそれを防ぐためにあるのだ』


 合コンの儀とはよく言ったもんで、この倉は自分に合った『魂鋼』を見つける為のお見合い会場らしい。

 中にひとりで入り、鋼を選ぶ。いや、鋼に選ばれる、らしい。

 適当に手にした武器だろうと選り好みして選んだ武器だろうと、あるいはスッ転んだ先に掴んじゃった武器だろうと、それは本人が選んだのではなく、選ばれた結果……らしい。


 なんで『らしい』ばっかりかって……未だに選ばれてないんですがそれは。


「ま、とにかくまた返してくるわ。次のビックリドッキリ武器はなんじゃらほいと」


 しっかし、皆一発で決まったのになんで俺だけ……。

 『魂鋼』・ぶっちゃけると妖怪の一種。生物に取り憑くどころか魂に融合し共生することを強制する妖怪。融合された相手は半ば妖怪と化し、時が経つにつれ完全な妖怪になる。しかしさらなる秘密があるようだ。

 ハッピーバースデイ!デビルマソ!

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