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転生と奴隷

「スキル! こっちの掃除を手伝え! ヘドロが酷く終わりやしねえ!」


「わかってる! ちょっと待ってろ! こっちも酷いんだ。まずはこっちからだ 」


 俺の名前はスキル・ファルデ。今年で14歳になる、奴隷の掃除夫だ。このローファン家の城内の掃除が主な仕事になる。たまに第二王女のペットであるドラゴンの世話もするが、この城を隅々まで綺麗にする事が日課だ。


 しかし、どんなに毎日の日課であるといっても嫌な仕事はある。


 汚物を処理する排水管の掃除はその筆頭だ。外にも汚物を捨てる場所はあるのだが、まだそちらの方がましだった。出来がとてつもなく悪いため、そこらへんで詰まりを起こし放置されている。

しかも今日の排水管は長年の渡り手入れをしていない。まさに最悪だ。強烈な悪臭と共に絡みついてくる汚物のせいで、一向に終わる気配がない。


 「ああああああああああくせええええええええええええ」


 叫ばないとやってられない。


 「黙れスキル!!!!!」


 いつものように飛んでくる鉄拳。右頬にヒットし、軽く身体が浮く。もはや慣れっこである。

 

 この悪夢のような作業は日が沈むまで続いた。


 ※※※ ※※※ ※※※ ※※※ ※※※ ※※※ ※※※

 

 看守厳しいチェックを受けた後、自分達の部屋に入る事が許される。看守である彼らは元奴隷だ。長年の間、忠義を持ってある勤め上げたため、僅かながらの自由を手に入れた人間だった。

 この部屋では6人が肩を寄せ合い生活している。あまり話す事はない。言葉が分からないからだ。どうも言語が違うものが同じ部屋になる仕組みをとっているらしい。おそらく共闘されるのを防ぐためだろう。


 「スキル、××××××!」


 「おう、お疲れ」


 まあ、流石に二年も一緒であれば、言いたいことはなんとなく分かるが。

 看守に手枷と足枷を付けられると、ようやくゆっくり出来る。いやはや本当に臭かった。疲れた身体を可能な限り投げ出し、ボロボロの布切れの上に横になる。今日は珍しく水で身体を洗うことを許された。あまりにも臭すぎたのだろう。気持ちは分かる。

 明日の仕事が、第二王女のペットであるドラゴンの世話に急遽変わったのも、臭い人間を城内に入れたくないという看守たちの強い思いからなのだろう。しばらく匂いが落ちそうにないからな。


 もう寝ようかと思った時、足元に新しい傷がある事に気付いた。今日切ったのだろうか。衛生環境が最悪の所で仕事をしたため、雑菌が入る可能性がある。きちんと治しておこう。

 周りの奴らの様子を確認した。全員もう寝ているようだ。大丈夫だとは思うが、念には念を入れ、身体で足元を隠すことにした。


 右手の人差し指に魔力を集中させる。呪文はいらない。傷が出来る前の足元を強くイメージする。そうすると、すぐに小さく光る珠が完成した。

 それを傷に塗りつけると、みるみる傷口は塞がっていった。


 これが、この俺が転生してきた際に与えられた能力、回復魔法『ヒール』だ。この能力がなければ、間違いなく今生きてはいない。断言できる。


 転生する前は20歳の無職だった。運悪く交通事故に遭い、この世界に生まれ落ちた。当時の名前は『鈴木すずき とり』といった。まあ、よくある話だ。転生といっても、残念ながら幼少期の記憶はない。この世界に来てからの記憶のスタートが11歳からだった。


 新しい人生をやり直そうと思った矢先、故郷は海賊に襲撃された。そして、このように奴隷の身に落ちてしまったという訳だ。途中、何度も死にかけ、何度も何度もヒールを使った。戦う力はなかったが、なんとか生き伸びる事はできた。

 

 今は生きているだけで十分幸せだった。

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