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琥珀色の心  作者: 柴垣菫草
第三章 伸上り
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伸上り<20>

 そして、その墨の塊を包むように五芒星を放った。霊気を墨の塊ごと五芒星で封じたのだ。

「霊気の囲いが破れたぞ、琥珀。五芒星でみんなを守れ!」

琥珀は、護身の五芒星を放ち、咲と三人の中学生を覆った。


「晴茂とやら、なかなか小賢しい事をしおる。じゃがな、怨念からは止めどなく邪気が出るわい」


菊子の悪霊はそう言うと、散らばっている半紙を数枚吸い寄せ三体の人型を作った。それを壁に貼り付けた。晴茂は、そこまでやるのかと驚きの声を出した。


「何?呪い殺すつもりか!」


「ふぁははは、晴茂とやら、おまえの呪術を以ってしても怨念は消せん」


悪霊は、長く伸びた爪先で、人型のひとつを突っついた。

「うぅうー。」 

中学生の一人が、胸を押さえて苦しんだ。


紙の人型と、その人型にかけられた恨みが、本物の人間と縁起で結びつくのだ。怨念は、このように無関係の媒体を通して、その人に伝わることがある。怨霊が放つ恐ろしい邪気だ。


一旦作られたこの縁起は、そう簡単に絶てるものではない。


人型を質に取られると、いくら五芒星で本物の人間を防護しても無駄だ。人型と本物の人間を結ぶ縁起を断ち切ればいいが、繋がっている時にはむやみに人型を破る訳にはゆかない。


晴茂は、怨念に凝り固まった菊子の霊をなだめるしかない。

「止めるんだ、菊子さん!」


「こやつらが咲を苦しめたのじゃ。咲の悲しみや嘆きを思えば、これ位の苦痛は何でもない」


そう言いながら、別の人型の頭を突っついた。

中学生の一人が頭を抱えて苦しみだした。


次の人型には、足に爪を深く突き刺した。

「ぎゃあー」

女の子が叫ぶと、足から血が噴き出した。琥珀は、必死で傷口を押さえた。

出血は止まらない。


「どうじゃ、陰陽師。そこを退(ど)け!その五芒星を消せ!」


「菊子さん、この子らに罪はない」


「私が苦しめられるのは、我慢ができる。じゃが、孫を苦しめるのは我慢ができぬのじゃ。これは因縁じゃ。こやつらの爺や親が作った罪も一緒に背負ってもらう。退け、陰陽師!おまえには止められぬわ」


菊子は、人型の胸に長く伸びた爪を突き刺した。


「うううっー」 

ひとりの女の子が胸を押さえて倒れ込んだ。押さえた手の下の服が、血で真っ赤に染まってくる。人型の爪が心臓に達すれば、この子は死ぬ。


琥珀は、叫んだ。

「晴茂様、何とかして!」


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