予兆<22>
天空は、すでに意識を戻していた。
「何が、起った?」
「何でもない、天空。おまえはもう大丈夫だろう。おまえの強さはしっかり分かった」
「何でもないはないだろう、俺は二回も倒れたんだから、…晴茂様」
「事の仔細は勾陳に聞いてくれ」
晴茂は六合を呼んだ。
「六合、まだよく分からない事もあるが、九尾は敵ではなさそうだ」
晴茂は、三天将を帰した。
そして、天后と琥珀の所に飛んだ。
「天后、終わった。護身の氷を解いてくれ」
天后は氷の塀を解いた。琥珀の生気が弱っている。晴茂は、右手を琥珀の胸に当てた。
「琥珀石は大丈夫だ」
その時、天后が晴茂に呟いた。
「この式神は、本当に石から生まれたのですか、晴茂様」
「どうしてだ?天后」
「無生物から造った式神には、意志や感情はありません。でも、この小娘は、生き物から生まれた式神のように、自分の意思があり、感情もあります」
そう言われれば、九尾との戦いの前に石に戻れと言ったが、琥珀は晴茂の指示に反抗した。十二天将は、元々人間や獣で生物だ。それを式神にしても、その強弱の差はあるが、みんな自分の意思や感情を持っている。あの天空なんかは、晴茂の指示に逆らうかもしれないほどだ。それとは違って、石や紙などの無生物に生気を吹き込んで造った式神は、自分の意思を持たないし感情もない。どのようにでも思いのままに操る事ができるのだ。
「そんなはずはない。確かに、琥珀石に生気を与えた式神だ」
「そうですか。でも、何か釈然としません。気を付けてください、晴茂様」
「ああ、そうだな」
晴茂は、右手の平に呪文を吐くと、回復の術を琥珀へ飛ばした。そして、天后を帰した。
琥珀は生気を取り戻すと、目を開けた。そして、晴茂ににこっとほほ笑んだ。




