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琥珀色の心  作者: 柴垣菫草
第一章 予兆
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予兆<22>

 天空は、すでに意識を戻していた。

「何が、起った?」

「何でもない、天空。おまえはもう大丈夫だろう。おまえの強さはしっかり分かった」

「何でもないはないだろう、俺は二回も倒れたんだから、…晴茂様」

「事の仔細は勾陳(こうちん)に聞いてくれ」

晴茂は六合(りくごう)を呼んだ。

「六合、まだよく分からない事もあるが、九尾は敵ではなさそうだ」

晴茂は、三天将を帰した。


そして、天后(てんこう)と琥珀の所に飛んだ。

「天后、終わった。護身の氷を解いてくれ」

天后は氷の塀を解いた。琥珀の生気が弱っている。晴茂は、右手を琥珀の胸に当てた。

「琥珀石は大丈夫だ」


 その時、天后が晴茂に呟いた。

「この式神は、本当に石から生まれたのですか、晴茂様」

「どうしてだ?天后」

「無生物から造った式神には、意志や感情はありません。でも、この小娘は、生き物から生まれた式神のように、自分の意思があり、感情もあります」


そう言われれば、九尾との戦いの前に石に戻れと言ったが、琥珀は晴茂の指示に反抗した。十二天将は、元々人間や獣で生物だ。それを式神にしても、その強弱の差はあるが、みんな自分の意思や感情を持っている。あの天空なんかは、晴茂の指示に逆らうかもしれないほどだ。それとは違って、石や紙などの無生物に生気を吹き込んで造った式神は、自分の意思を持たないし感情もない。どのようにでも思いのままに操る事ができるのだ。


「そんなはずはない。確かに、琥珀石に生気を与えた式神だ」

「そうですか。でも、何か釈然としません。気を付けてください、晴茂様」

「ああ、そうだな」

晴茂は、右手の平に呪文を吐くと、回復の術を琥珀へ飛ばした。そして、天后を帰した。


琥珀は生気を取り戻すと、目を開けた。そして、晴茂ににこっとほほ笑んだ。


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