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琥珀色の心  作者: 柴垣菫草
第十一章 一言主
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一言主<22>

 邪悪な気で吐き気をもよおすほどだった洞窟内に、琥珀は杖に導かれて容易に入れるではないか。しばらく進むと右の岩壁に呑み込まれている晴茂が見えた。琥珀は一瞬気が乱れたが、土蜘蛛(つちぐも)の杖の気力で無を保つ。晴茂の埋もれている場所を過ぎて、ふたりは奥へ進んだ。


左右の岩壁、天井の岩、そして床の岩、全てから妖気が滲み出ている。この妖気が感じられるのは、天空(てんくう)剣と土蜘蛛の杖で感じているからだ。黒水晶の仙力に覆われて、人間の五感では察知できないものだ。


 先を進んでいた天空の動きがぴたっと止まった。


『琥珀、来るぞ!』


天空の言葉と共に邪悪な波動が奥から迫って来た。天空と琥珀は、剣と杖を各々正眼に構え、邪悪な波動を切り裂いている。


何という妖力だ。空気の波動と思っていたが、それは鬼、死霊、その他の魑魅魍魎(ちみもうりょう)が塊りになって波のように押し寄せてくるのだ。これをまともに喰らっては、ひとたまりもない。生気を吸い取られる。


 邪悪な波動が過ぎ去った。ふたりは、剣と杖に導かれながら、洞窟の奥へ進んだ。天空の足が再び止まった。


『いたぞ!餓鬼坊(がきぼう)だ』


天空の念が琥珀に伝わった。餓鬼坊は、妖力で姿を消しているのだが、天空剣と土蜘蛛の杖には通じない。


 餓鬼坊は、このふたりに黒水晶の仙力が効いていないのを悟った。餓鬼坊は、素早く動くと目を光らせた。晴茂の五芒星(ごぼうせい)を破った邪悪な気が吐き出された。天空は、天空剣を餓鬼坊に向かって伸ばす。餓鬼坊は、素早くかわす。餓鬼坊が吐いた邪悪な気は、天空剣に切り裂かれ無毒となる。


餓鬼坊は動きながら目を光らせ、邪悪な気を吐く。天空が、剣で気を切り裂きながら、餓鬼坊を壁に追い詰めた。


『琥珀、見えるか。餓鬼坊の首にかかっている黒水晶。おまえが奪え』


天空の念が届いた。しかし一瞬の油断もできない。その念を送る一瞬をついて、餓鬼坊が波動を発した。剣と杖を正眼に構え、ふたりは邪悪な波動をやり過ごす。


 その間に、餓鬼坊が奥へ逃げる。ふたりが餓鬼坊を追った。洞窟の一番奥、餓鬼坊も逃げ場がない。


「何者だ、おまえ達は?」


ふたりは、答えない。心を無にして黒水晶を感じている。口を開けば、”無”が破れる。餓鬼坊から見ると、天空は剣の陰に、琥珀は杖の陰に隠れている。そして、その剣、その杖の迫力が餓鬼坊を(ひる)ませている。


いたたまれなくなった餓鬼坊が目を光らせ、渾身の妖力を使った。周りの岩が一斉に動き出した。天空と琥珀を呑み込もうとしている。天空剣が一閃された。岩を切ったのだ。琥珀は、土蜘蛛の杖で襲ってくる岩を突いた。火花が飛び散り餓鬼坊の妖術が破れた。餓鬼坊が放心している。


その隙に、琥珀の右手から土蜘蛛の糸がするすると伸びた。そして、餓鬼坊の首から吊り下がっている黒水晶を絡め取った。黒水晶は琥珀の手に落ちた。


「琥珀、黒水晶を封じろ」


天空の言葉を受けて、琥珀は黒水晶を放り投げると五芒星を切った。青白い五芒星に取り込まれ黒水晶が封じられた。


「餓鬼坊、これでおまえはただの妖怪だ。まだ、戦うか?」


餓鬼坊は、まだ放心している。自分の術が破れるとは信じられなかったのだ。


琥珀は、餓鬼坊に白い五芒星を切った。隔離の五芒星だ。


「天空さん、晴茂様を助けねば!」


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