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琥珀色の心  作者: 柴垣菫草
第十章 雲外鏡
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雲外鏡<12>

「急に呼び出されたのだが、あれは何だ?琥珀」

「おそでという娘の怨霊(おんりょう)です」

琥珀が天空(てんくう)に答えた。


「怨霊っていうけど、…霊には違いないけど少し変な感じがする」

さすがに天后(てんこう)だ。呪力を持つ霊の異様さを感じたのだ。


「おそでは、陰陽師の端くれだった。だから、呪術も少し使う」

「そうか、霊力に呪力も加わって、強力になっているのね」


騰蛇(とうだ)紅蓮(ぐれん)の炎も、稲妻も光線も効かない。朱雀(すざく)の風で吹き飛ばしても、直ぐに元に戻る」

琥珀が説明をしている所に、怨霊は三人を呑み込もうと襲って来た。


 天空は剣を素早く使い黒雲の鬼を切った。天空剣の勢いは強く、黒雲の鬼は六つの塊に切り刻まれたのだが、しかし直ぐに元に戻る。そして三人を襲う。天空は剣を振る。また鬼は元に戻る。天空は、空を飛びながら縦横に剣を走らせた。鬼はバラバラになったが、暫くすると寄り集まって元に戻る。


「ふんっ、こりゃあ(らち)が開かん!何かないのか、天后!」

天空は、天后に八つ当たりした。


「晴茂様が、水術は効くと仰っていた」

琥珀が天后に言った。


「分かった、やってみる!」


 天后は、右手を天に向かって差し上げ、人差指を伸ばした。そして、その人差指を怨霊の方に向けた。どこから集めたのか大量の水が、怨霊に向かって降り注いだ。黒い雲でできた鬼は、水に流され雲散霧消した。


「やった!天后さん。お見事!」


琥珀は天后に近づきながら大声で叫んだ。天后もにっこりとほほ笑んだ。


しかし、その後ろに立つ天空が、二人に叫んだ。


「天后、琥珀、まだ終わってない。見ろ!」


天后が落した大量の水でできた水溜りから、小さな泡がぽこぽこと浮き上がると、泡が弾けて煙の塊ができる。


そしてその煙が集まって大きくなってゆくではないか。水溜りの上には、たくさんの小さな黒い雲の塊ができ始めた。そして集まる。雲の塊は、徐々に大きくなっては集まり、周りの小さな雲を吸いこみながら、成長してゆく。


「いかんっ!天后、水を凍らせろ!」


天后は、右手を前に突き出すと、呪文を唱えた。今度は天から冷気が落ちてくる。

冷気に触れた草花が凍る。水溜りは周囲から、びしっびしっと音を立てて凍り始めた。


しかし、既に遅かった。黒い雲は集まって鬼の姿に化身した。そして、口から異様な霊気を吐き、天后が凍らせた水を再び溶かしてゆく。溶けた水からは、泡が弾ける。怨霊の姿は、すっかり元通りに戻った。


「ふふふ、式神ども!無駄な抵抗だ。ふふふ、これでも喰らえっ!」


鬼の口から、どす黒い霊気が噴き出し三人を襲う。天空は、かろうじて剣で霊気を遮った。琥珀は護身の五芒星(ごぼうせい)で天后と自分を防いだ。天空は、剣で防ぎ切れなくなって、琥珀の五芒星の中に入った。


「おまえたちは、身動きできまい、ふふふ…」


 怨霊の言う通りだ。このまま五芒星で防いでいても、それだけの事だ。怨霊と化したおそでが、別の攻撃を仕掛けてくれば、防ぎようがない。それを知ってか、怨霊は悠々と五色の布帯を出した。


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