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琥珀色の心  作者: 柴垣菫草
第九章 川童
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川童<4>

「そうだ、わしが見つけた足跡を見てもらおうか。こっちだ、行こう」

川童は木の間を抜けて、林の中へ出た。かなり山の奥へ入った所で立ち止まり、足跡を指差した。木々が入り組んでいるその場所は、見晴らしが良くない。琥珀は、その足跡に気を集中した。


 その場所に微かな妖気を感じた。

「妖気、…妖怪の足跡?」

「やはり妖気を感じるか。わしも異常な気配を感じた」


 足跡は丸い。その先端には地面を深くえぐった跡が見える。足跡は十数個あるのだが、四本足の獣なら大型の犬程度、二本の足なら人間よりやや小柄かと琥珀は考えた。足跡は池の方角にのびている。こんな奇怪な足跡の妖怪とは、何だろう。しかし、いくら考えても琥珀には妖怪の知識がない。琥珀は、川童(かわわらわ)の顔を見た。


「こんな足跡は見たことがない。そこで足跡が途絶えている。周りを探ったが、何もない。まるで、そこから空を飛んだように見える」

川童(かわわらわ)が言った。


「空を飛んだ?…、ちょっと待っててね」

琥珀は、足跡が途絶えた場所から池の方向に向かって、生い茂る木々の幹や枝を探った。妖気を探りながら木々を調べると、「あった」、爪で引っ掻いたような傷が枝に残っていた。この妖怪は木に登れるんだ。


「これを見て!そこから飛んでこの枝を伝って進んだんだわ」

川童親子は、するすると木に登り、枝に残った爪の傷を確認した。

「なるほど…」


 琥珀は、微かな妖気を頼りに、次々と木の枝や幹に残る爪痕を辿った。川童(かわわらわ)親子もついて来た。池に流れ込む小さな川の横にある木を最後に、木に爪痕は見つからなくなった。琥珀と川童(かわわらわ)親子は地上に降りた。

「ここで途絶えているわ」


 琥珀と川童(かわわらわ)親子で、その最後の木の周りを手分けして調べた。

辺りを走り回っていた子供の川童(かわわらわ)が何かを見つけた。

「お姉ちゃん、これ。足跡だ」


行ってみると、池に流れ込む川の岸に足跡が残っていた。しかも、ここで何かをしたのだろうか、沢山の足跡が重なって残っている。その川を見ると、両岸は何かで焦げたような跡がある。ここで火でも燃やしたのだろうか。いや、何かが燃えた跡ではない。


何だろう?琥珀には見覚えがあるような焦げ跡だ。

「そうだ、…これは、…稲妻だ!」


琥珀も使う青龍(せいりゅう)の術、稲妻が大地を焦がした跡だ。

「稲妻?」

「雷さま?」

いったい何が起ったのだろうか。琥珀も、川童(かわわらわ)親子も、顔を見合わせた。


 稲妻らしき焦げ跡があった場所から先は、新たな足跡や爪痕は見つからなかった。川童(かわわらわ)親子はもう少し辺りの調査をすることとした。


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