表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
琥珀色の心  作者: 柴垣菫草
第六章 送り犬
118/231

送り犬<15>

 晴茂は、十二天将を呼んだ。

「誰か、伴経若丸(とものつねわかまる)を知っているか?お(まん)を知っているか」


晴茂の問いに、十二天将達は驚きの顔を隠せなかった。しかし、みんな口をつぐんでいる。そして、彼らの視線は太陰(たいおん)に向けられた。


太陰は、いつも酔っぱらった表情で軽口も叩くが、この時はすっかり酔いも醒めた顔付で、下を向いている。手が震えているではないか。


ようやく決心をしたように真顔で晴茂を見ると、押し殺したような声で太陰は答えた。


「お万も、経若丸も知っています」


「経若丸とは?」

「…」


「お万とは?」

「…」


大裳(たいも)が、律儀な顔で言った。


「晴茂様、晴明様が鬼女紅葉に関わっております。実際に関わったのは、太陰、青龍(せいりゅう)、そして晴明様でございます。我々に聞くよりも、晴明様に直接聞かれた方が良いと思います」


「そうです、晴茂様。晴明様と紅葉、なかなか難しい話でもありますから…」

太陰が、何やら奥歯に物の(はさ)まった言い方をした。


「鬼女紅葉とお万、経若丸の関係は?」

「…」


太陰は、いたたまれず、質問とは関係のない答えを言った。


「それに、そこにいる犬、その犬も…」

太陰に突然話題を振られ、送り犬は太陰をじっと見た。どこかで会ったような気がする、と送り犬は感じた。


「後は、…晴明様に、…」


大裳が続けた。


「琥珀の心がかかっています。晴明様に直接聞いてください、晴茂様。

この話は、他言無用と晴明様から釘を刺されております。我々からは、話せません」


太陰は、心から琥珀を心配し、晴茂に言った。

「晴茂様、晴明様がお話になれば、私も全てを話せます」


「分かった。晴明様に聞いてみる。とりあえず、今夜は帰ってくれ」


晴茂は、十二天将を帰した。


 安倍晴明が関わり、話すなと指示されたのなら、十二天将を問いただしても酷だ。

何やら奥の深い繋がりがあるのだろう。

晴茂は、目を閉じ、しばらく考えた。


そして目を開けると、琥珀石を心配そうに見つめた。琥珀を滅ぼしてはいけない。


必ず助ける。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ